第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.3.17 腐食電位測定の系統概要

口の溶存酸素濃度と比較するとわずかに高く、過酸化水素の影響を受けていると考えられ、SCC発生防止臨界電位となる-230mV(SHE)程度であることが確認された。
 「ふげん」における20年近くにわたる水素注入は、国内水素注入BWRプラントに比べて給水水素濃度が高いため、炉心部における水の放射線分解で生成される溶存酸素、過酸化酸素を抑制し、SCC 感受性及びき裂の進展を低減し、SCCの発生を防止していたと考えられる。
(4)水素注入技術の確立
 「ふげん」におけるSCC対策の実施は、ATRプロ


表8.3.5 水素注入時の腐食電位測定結果

ジェクトを推進するための大きな試練の場であった。当時の最新の技術を結集してSCCを克服し、「ふげん」の安定的な運転を継続させることができた。水素注入そのものについても、水素注入ラインに水素・酸素発生装置の電解槽から飛散したアルカリ分が固着するのを防止する措置や原子炉起動時にボンベ注入装置による少量水素注入15)できるような措置によって安定的な水素注入を実現することができた。
 「ふげん」での水素注入法は、我が国で初めての取組であり、国内外のメーカや大学等の協力を得て、極めて安定した連続水素注入を継続することができた。「ふげん」においてこの方法を開始して、約10年後から国内の沸騰水型炉にも導入されたが1),16)、これは、「ふげん」の成果や運転実績が役立ったものと考えられる。

8.3.3 系統化学除染技術
(1)概要
 「ふげん」においては、定期検査時の被ばく低減対策として、化学除染技術の開発、高度化を進め、適用してきた。この技術は、機器・配管内表面に付着している放射性クラッドを化学的に溶解除去するものであり、系統化学除染の開発と適用実績を図



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