第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.3.13 「ふげん」燃料の照射後試験


図8.3.14 燃料被覆管(Zry-2)への
水素吸収量の変化

際に発生する水素を取り込みやすいためであると推定している。
水素注入による長期的な効果の確認
() 原子炉冷却材水質の長期的な変動
 連続水素注入の開始から5年間をみると、イオン状コバルト60(60Co)の濃度は、図8.3.15に示すように、水素注入開始後約3年で水素注入前の濃度の約2倍の濃度まで上昇した。その後、低下傾向を示したが、水素注入量を増加させると、イオン状の60Coも増加する傾向にあった。
 これは、水素注入により原子炉冷却水の水質環境が、還元性に移行することにより、燃料棒表面に付着して大量の60Coを含んでいる鉄酸化物から60Coの溶解が、若干加速され、炉水中の60Co濃度が上昇する

ことにより、原子炉冷却材と直接に接触する酸化物の60Coの濃度が低下するため、一旦、上昇した冷却材の60Co濃度は、再び低下し始めるものと推定されている。原子炉冷却系配管の線量当量率を上昇させる主要な要因は、イオン状の60Coであり、この濃度変動による原子炉冷却系の線量当量率は、水素注入しない場合の予測値に対して、約15%程度高い値を示した。
 後述するように系統化学除染及び亜鉛注入によって、プラントの線量率を効果的に抑制することができた。また、図8.3.15に示すように、亜鉛注入によって原子炉冷却水中の60Co濃度を効果的に抑制することができた。
)主蒸気管線量率の変動
 高速中性子は、原子炉冷却材の水の酸素原子と相互作用して16O(n,p)16N反応により、N-16を生成する。このN-16の化学形態が、水素注入により、水に溶解しやすい亜硝酸や硝酸イオンから、揮発性の高い窒素ガス形態やアンモニア形態に変化しやすくなる。このため、主蒸気側へ移行するN-16の量が多くなり、主蒸気管の線量当量率が、上昇することが確認された13)
 なお、主蒸気管室の線量率の指示値が、季節変動する現象が認められたが3),14)、これは、主蒸気管室の放射線モニタのアンプの出力が、温度特性により、校正誤差範囲内で変動していたことによるものであった。
 その後、主蒸気中の放射性窒素化合物を吸着材を用



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