第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.3.9 水素・酸素発生装置の概念図

表8.3.3 水素酸素発生装置の仕様

速やかに溶解するため、有意な水素ガスの滞留は認められなかった。また、排ガス処理系においては、連続式の水素濃度計を追設して監視を強化したが、異常は認められなかった。
 なお、「ふげん」の場合、注入された水素は、約10分後に排ガス処理系に到達する。したがって、水素注入を停止する際は、水素ガスの注入を停止したあと、15分間、排出された水素を再結合するための酸素ガスを、継続して供給することとした。
 このほか、水素注入に起因するプラント運転への悪影響は認められなかった。
)連続水素注入
 短期水素注入試験の結果、水素注入を行ってもプラント運転上支障となる事象は発生しないことが確認されたため、昭和60(1985)年12月から連続的な水素

注入を開始した。注入する水素及び酸素は、試験期間中は、大型ボンベから供給されるものを用いたが、昭和60年12月以降は、当時の通商産業省のサンシャイン計画で研究段階にあった図8.3.9及び表8.3.3に示す実用化した水電解法による水素・酸素発生装置において発生させた水素及び酸素を用いている。
 連続的な水素注入による原子炉浄化系入口における溶存酸素の濃度の変化を図8.3.10に示す。水素注入開始前の測定値は、測定器の精度が十分でなかったために、100〜200ppb程度の範囲でかなり不安定な値を示しているが、水素注入開始後は、安定した値を示している。
 水素注入前の比較的溶存酸素濃度が高い条件で使用された燃料集合体を、水素注入された還元性の環境に移すと燃料破損を発生させる可能性が高まるとの文献情報11)に基づき、水素注入開始後、約3年間は、溶存水素/溶存酸素の濃度(ppb)比が15以下になるように調整した。燃料取替えが完了し、すべての炉心燃料を、水素注入開始後に装荷したあとは、溶存酸素濃度が、10ppb以下になるよう、水素を注入した。
材料健全性の評価
 材料に及ぼす水素注入の影響を評価するため、次の2つの観点から材料健全性確認試験を実施した。
・鋭敏化SUS304材のSCC感受性に及ぼす水素注入の効果の確認
・プラント構造材料の健全性に及ぼす水素注入による影響の確認
 試験は、原子炉冷却系を構成する9種類の構造材


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