第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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表8.2.3 尿中トリチウム濃度の測定頻度


 尿中のトリチウムを液体シンチレーション計測器で測定することにより、トリチウムによる内部被ばくを評価することができる。
 尿中トリチウム濃度の測定頻度を表8.2.3に示す。
 定期検査期間中は、約3,000件の尿中トリチウム濃度の測定を行う必要があるため、あまり長時間の測定を行うのは適切ではない。「ふげん」においては、20mlのバイアル瓶を用いて14mlの液体シンチレータと尿2mlを混合したものを、液体シンチレーションカウンタで3分間測定する。この条件でのトリチウムの検出限界濃度は、0.1Bq/cm3である。
 摂取されたトリチウムの生物学的半減期は10日程度であり、作業者が、水分を摂取したり、排泄したりすることにより、徐々に低下していく。トリチウムを摂取した時から1日以内に尿検査を受けて

0.1Bq/cm3(検出限界濃度)が検出された場合の線量当量は、0.0001mSv程度であるが、3か月前の定期測定直後に摂取して、同じ検出限界濃度のトリチウムが検出された場合は、90日(9生物学的半減期)を経ているので、線量当量は、0.04mSv程度になる。
被ばく実績
 トリチウムによる内部被ばくの推移を図8.2.10に示す。その値は、「ふげん」における年間の外部被ばくが、2人・Sv程度であるのに対し、1989年度を除き、年間1〜5人・mSv程度と非常に低い値で推移している。
 なお、1989年度の増加は、定期検査期間中において原子炉建屋の換気系が予定より長く停止したため、防護具の着用目安値以下ではあるものの、建屋内の空気中トリチウム濃度が通常より上昇したことによる。
(4)トリチウム測定技術の開発
 トリチウムは、γ線を放出せず、最大エネルギーが18.6keVの弱いβ線のみを放出する核種であるため、電離箱内に測定対象ガスを導入して測定したり、液体シンチレーションカウンタで、凝縮水の状態を測定する必要がある。
 空気中のトリチウム濃度を「ふげん」において、簡易かつ高感度に測定する方法の開発、最適化を実



図8.2.10 トリチウムによる内部被ばくの推移


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