第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

帯

8


8.2.3 トリチウムの管理4)-9)
(1)概要
 重水系の作業は、腐食生成物(例えばCo-60)に対する放射線管理に加え、トリチウムに対する放射線管理を必要とすることに特徴がある。当初は、国内外の重水炉を参考に管理を行っていたが、その後、「ふげん」に適した作業管理方法の開発並びに測定技術、防護具の改良及び開発を行い、より効果的な管理を実施してきた。
(2)トリチウム管理の必要性
 「ふげん」におけるトリチウムの生成反応は、表8.2.1に示すものがあるが、主要な発生源は、原子炉内の重水の放射化(重水系の中性子吸収)によるものである。重水中のトリチウム濃度は、図8.2.8示すとおり運転時間とともに上昇しており、2003年3月の運転終了時に、約260MBq/cm3であった。
 トリチウムは、次の特徴を有している。
最大エネルギー18keVの低エネルギーのβ線のみを放出するため外部被ばくは、問題とならないが、吸入や皮膚からの吸収による内部被ばくに注意する必要がある。また、測定方法もγ線や高エネルギーのβ線と違った工夫が必要である。
系統外に出た場合、主にHTO(水蒸気)として存在するため、粒子状放射性物質に使うフィルターを装着したマスクでは防護できない。
トリチウムの物理学的半減期は12.3年である。
体内へ取り込まれた場合は、尿や汗などの代謝作用により約10日で半分に減少する。

表8.2.1 「ふげん」におけるトリチウムの生成

 これらの特徴を持つ重水の取扱いは、内部被ばくに関する放射線管理に重点を置いて実施する必要がある。
(3)トリチウムに対する内部披ばく管理
設備面及び作業管理面での対策
・設備面:重水は、炉心の核特性上、純度の維持が要求されるとともに、トリチウムが含まれていることにより、重水及びトリチウムの漏洩、拡散防止対策がとられている。これらの対策により、運転中の空気中トリチウム濃度は、管理値以下で推移している。
・作業管理面:原子炉運転中の主な作業は、重水の水質分析のためのサンプリングであり、定期検査中の主な作業は、重水循環ポンプ等の分解点検である。重水のサンプリングと分析は、2週間に1回の頻度で実施しているが、ドラフトチャンバーの中での標準化された作業であり、防護具を着用する必要はない。
 定期検査における機器の分解点検では、機器の開放により一時的に空気中のトリチウム濃度が上昇するため、作業方法の工夫によるトリチウムの


図8.2.8 重水中トリチウム濃度変化


帯
300

前頁

目次

次頁