第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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耐酸化性の強塩基性陰イオン交換樹脂の採用
樹脂中に不純物として含有している塩素を低減した極低塩素化樹脂WA-21Xの採用
ヘリウム精製方法の改善と基準強化によるヘリウム高純度管理
樹脂比変更による浄化塔使用期間の延長
 これらの内を除く全対策を、段階的に「ふげん」に採用することにより、重水水質を確実に改善することができた。
 重水水質改善対策内容と改善効果を図8.2.3示す。図8.2.3に示すとおり、起動試験時に3.0〜4.0μS/cmあった重水電導度は、対策の実施とともに低下し、第9運転サイクル(1985年)以降、平成15(2003)年現在まで0.3〜0.9μS/cmと低い値を維持している。
 また、重水浄化塔の樹脂交換頻度は、当初の年間4塔から年間2塔程度に低減された。
過酸化重水素分解触媒の開発
 重水浄化塔樹脂の性能劣化の主原因は、重水中に過酸化重水素が存在することである。このため、これを除去できれば、樹脂寿命の延長及び水質向上を図ることができる。
 触媒による分解除去として、まず白金メッキスルーザパッキン触媒が検討されたが、重水を用いた試験では、数時間で性能劣化が生じた。このため、耐久性のよい触媒としてケラパック型白金黒触媒が試験された。試験の結果、ケラパック型白金黒触媒の耐久性は1年程度と短いこと及び重水中のCo-60が触媒に吸着し、触媒の放射線量を著しく増加させることが判明した。
 以上のこと及び後述する樹脂通水時の重水温度の低温化対策による樹脂の劣化抑制効果が大きいため、「ふげん」においては、触媒法の実用化を見合わせた。
 なお、その後、実証炉用としてペレット型触媒の開発を継続し、1年以上の耐久性を持つ2%Ptペレット触媒及び0.5%Ruペレット触媒が開発されており、ホットカラム試験装置による耐久性確認試験を経て実用化できる見通しが得られている。
重水浄化塔通水時の重水温度の低温化
 重水浄化塔へ通水する重水を低温化することにより弱塩基性陰イオン交換樹脂の交換性能の向上及び過酸化重水素による樹脂の酸化劣化を抑制できることが予想された。そのため、樹脂長寿命化の効果確




図8.2.3 重水水質改善対策の内容と水質改善効果


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