第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

帯

7


での健全性実証と設計の妥当性が確認された。高性能36本燃料集合体の試験用燃料集合体を設計、製作し、6体の照射試験を「ふげん」において行い、集合体燃焼度が、38GWd/tに達した一体の集合体の照射後試験を行った。その結果、燃料の健全性を確認するとともに、図7.4.2に一例を示すような、MOX燃料の照射挙動に係るデータを取得した。
 さらに、ノルウェーのHBWRにおける出力急昇試験、原研のNSRRにおけるパルス試験を実施して、出力過渡時、反応度投入事故時での実証炉用MOX燃料の燃料ふるまいを確認するとともに、破損限界を把握した。
(3)実証炉54本燃料の設計開発1)
 実証炉用54本燃料集合体は、実証炉運転開始後の取替燃料として段階的に投入することを目指して開発が進められ、軽水炉に比肩する55GWd/tを集合体最高燃焼度とした。
 設計開発は、実証炉用36本燃料の設計開発と同様に試作試験、熱水力特性試験、耐久性試験等が行われ、原型炉での照射試験を実施するための安全審査を受ける段階まで開発を進めたが、実証炉建設計画が中止されたため、照射試験計画は具体化されなかった。

7.4.2 MOX燃料製造技術
 昭和40(1965)年、アメリカのNUMEC社の設計で建設されたプルトニウム燃料第一開発室において核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」という)のMOX燃料製造技術の開発がスタートした。上記のプルトニウムの取扱いに関する経験、燃料製造試験結果等に基づき、「ふげん」用ライン(以下、「ATRライン」という)と、高速実験炉「常陽」用ラインを有するプルトニウム燃料第二開発室を建設した。ATRラインは、昭和47(1972)年、製造能力30kgMOX/日で重水臨界実験装置(DCA)用MOX燃料製造により運転を開始した。ATRラインにおける年間製造能力は、当時約5トンMOXであったが、DCA燃料の製造後、「ふげん」用燃料を製造するため、製造能力を60kgMOX/日に増強し、年間製造能力を約10トンMOXとした。
(1)製造フロー
 燃料製造は、ペレット製造、燃料要素加工及び集合体組立の3つの工程からなる。「ふげん」燃料集合体製造フロー〔第32回取替燃料(その2)製造時〕を図7.4.3に示す。

 ペレット製造工程においては、原料プルトニウム、原料ウラン及び乾式回収粉末の三種類の原料を燃料仕様に基づき秤量する。秤量後、粉末をボールミルにより均一に混合し、潤滑剤を添加したあと、無造粒で直接グリーンペレットに成型する。本焼結の前に、ペレット中の潤滑剤を除去するため、グリーンペレットの予備焼結を行う。その後、本焼結に続いて、直径と表面粗さの仕様を満たすため、湿式研削法による研削を行い、寸法、密度及び外観等の検査を行う。ペレット製造時に発生したスクラップは、焙焼・還元処理を行い、乾式回収粉末としてリサイクルする3)
 燃料要素工程においては、まず、TIG溶接法で定尺切断した被覆管に下部端栓を溶接する。被覆管の開口部に管口マスクを取り付け、官庁検査に合格したペレットをプレナムスプリング、断熱ペレット等の部材とともに充てんする。管口部の除染後、ペレットに吸着した水分を除去するため、真空チャンバ内で脱ガス処理を施し、その後、雰囲気をヘリウムに置換する。ヘリウム雰囲気中で上部端栓をTIG溶接し、連結するオープンポートボックス内で表面の除染を行う。燃料要素加工工程においては、被覆管の外観、寸法検査、溶接部のX線検査、表面汚染検査、ヘリウムリーク検査等の検査を実施する。
 集合体組立工程は、下部タイプレート、スペーサタイロッド及びスペーサで構成されるスケルトンの組立から始まる。組み立てたスケルトンに内層、中間層、外層の各燃料要素を順に挿入し、ロッドスプリング、バネカバー、上部タイプレートを取り付け、ロックナットで締め付ける。全長、曲り、ねじれ等の測定後、集合体の洗浄を行い、燃料集合体が完成する。
 各工程における技術開発成果について以下に示す。
(2)ペレット製造技術
粉末工程
 ATRラインにおける粉末工程の特徴は、ボールミルによる一段混合と無造粒による成型である。
 2段混合法は、「ふげん」の燃料製造開始時に、混合されたMOX粉末を均一にする目的で採用していた。2段混合法の第一段階においては、型混合機を、第二段階においては、ボールミルを用いていた。
 ATRラインにおけるMOX燃料製造の初期、ボールミルポットとボールの材質としてステンレス鋼を使用していたが、ボール表面とポット内面にMOX粉



帯
262

前頁

目次

次頁