第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

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されたプルトニウムにおいては、239Puの割合が減り、240Pu、241Pu及び242Puの割合が多くなる。また、240Puは1eV付近で大きな共鳴吸収を有している。
 ATRは、構造上、中性子減速を燃料から離れた重水中で行い、中性子スペクトルが、軽水炉よりも柔らかいため、非核分裂性プルトニウムの共鳴吸収による影響を受けにくい。このプルトニウム組成変化が、炉心特性(制御棒反応度変化、燃焼度補償等)に与える影響は小さくなる。
 一方、軽水炉において240Puや242Puを多く含むプルトニウムを利用する場合は、非核分裂性プルトニウム割合の増加による影響を受けるため、組成に応じた分裂性プルトニウムの富化度調整により、同一の燃焼度を得られるようにする必要がある。軽水炉での核分裂性プルトニウムの同位体組成とプルトニウム富化度の関係を図7.3.7、ATRでの関係を図7.3.8に示す。
(5)回収ウランの利用
 235Uは、熱中性子を吸収すると約84%が核分裂するが、残り約16%は、236Uになる。このため、軽水炉の使用済燃料の回収ウランに、約0.3〜0.4%の236Uが含まれている。これを再濃縮すると、製品ウランの中に235Uとともに分離濃縮されるため、更に蓄積されることになる。236Uは、約5eV付近の中性子エネルギーに大きな中性子吸収断面積を持っているため、236Uを含んだ濃縮ウラン燃料は、燃焼度が低下する。このため、235Uのみの燃料と燃焼度を等しくするには、236U含有率のα(236U反応度補償係数)倍だけ235Uの濃縮度を高めなければならない。
 ATRにおいては、中性子が主に重水中で減速されるため、236Uの共鳴吸収の影響が軽水炉に比べて小さく、燃焼補償のα値は小さい。このため、ATRにおいては、回収ウランをMOX燃料の母材として利用すること、または再濃縮してウラン燃料として利用することも容易である。

図7.3.7 軽水炉におけるPu-f富化度と同位体組成の関係


図7.3.8 ATRにおけるPu-f富化度と同位体組成の関係


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