第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

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(図7.3.5参照)。しかし、ATRの熱中性子領域における中性子束は、軽水炉よりもエネルギーの低い方に多く分布しており、減速過程において燃料領域を通過する割合が小さいため、軽水炉に比べて、241Amの共鳴吸収の影響を受けにくくなっている2)



図7.3.5 Pu-241崩壊とAm-241蓄積が燃焼度に及ぼす影響

(3)中性子再生率η
 中性子再生率ηは、1個の中性子を吸収した場合に、核分裂を起こして何個の中性子が再び発生するのかを意味するものであり、核分裂を起こす中性子エネルギー及び核種によって異なった値となる。このηを考える場合、主に核分裂を熱中性子により生じさせる熱中性子炉においては、低エネルギー領域に着目する必要がある。図7.3.6に示すように、低エネルギー領域でのηの値は、十分に減速された領域においては、235Uと239Pu及び241Puで同等の値をとるが、それよりもエネルギーが高くなるに従い、239Pu及び241Puのηが235Uと異なってくる。
 1個の中性子吸収で多数の中性子を再生させるという中性子の有効利用の観点からは、239Puのηの落ち込み部分を外して核分裂を起こさせる方がよい。ATRは、軽水炉に比べて、核分裂を起こさせる中性子がエネルギーの低い方に多く分布しており、239Puのηを235Uと同等の領域で燃焼させることができるため、核分裂性プルトニウムを235Uとほぼ等価に扱うことができる。
(4)プルトニウム同位体組成比
 再処理から抽出されるプルトニウムの組成は、炉型及び取出燃焼度により大きく異なり、いろいろな割合(核分裂性プルトニウム割合で60〜80%)で混在している。特に、高燃焼度の使用済燃料から抽出


図7.3.6 中性子エネルギーと中性子再生率との関係


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