第6章 「ふげん」の運転実績

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ブローホールを排除するため、溶接部に対する非破壊検査の判定の考え方をより一層厳しくし、再発防止を図った。
 また、第11回〜第13回定期検査において、重水循環ポンプ3台の摺動部の部材を、従来のコルモノイNo.4から、より耐磨耗性の高いステライトNo.6に変更した。これは、コルモノイNo.4に含まれるボロンが、選択溶出し、部材表面をポーラス(軽石)状にして摺動面の磨耗を早めることが判明したため、火力発電所等で、実績を有するステライトNo.6を採用したものである。
(4)評価
 重水循環ポンプは、「ふげん」プラントの運転上非常に重要な機器であり、高い運転信頼性が要求された。順調な運転実績によって、それを実証するとともに、本ポンプの分解点検を通じて重水機器の保守技術を確立した。

6.2.10 希ガスホールドアップ装置
(1)構造及び機能
 希ガスホールドアップ装置は、放射性排ガス中に含まれる放射性希ガス(Xe-133 半減期5.27d,Kr-85 半減期4.4h)を一定時間活性炭吸着塔で吸着・保持して、放射能の減衰を図ったのち、排気筒から大気への放出を目的とした設備である。
 気体廃棄物処理系において、水素を除去された排ガスは、排ガス貯留タンクに入り、タンク内の案内板の間を蛇行しながら流れる。排ガスは、このタンク内において、定格流量(16Nm3/h)時で約20分の間貯留され、短半減期核種が減衰する。このタンクから出た排ガス中の0.5μm以上の固形分は、前置フィルタにより99.9%が除去される。
 その後、活性炭の吸着性能を良くするため、排ガスを、2段階に分けて除湿する。まず、除湿冷却器で大部分の水分を除去(露点約6℃)し、更に脱湿塔で露点−55℃以下に脱湿したのち、メッシュフィルタで固形分を除去して活性炭吸着塔へ送気する。
 活性炭吸着塔に送られた排ガス中の希ガスは、活性炭の吸着作用により、定格流量時において、Xeで27日間、Krで40時間以上ホールドアップされ、放射能を減衰する。
 活性炭のガスに対する吸着力は、ガスの成分元素に固有な沸点に依存しており、沸点の高い元素ほど強くなる。活性炭吸着塔に排ガスを通気すると、排ガスの主成分である空気を構成する窒素(沸点−195.0℃)と酸素(沸点−183.0℃)は、ほとんどそのまま活性炭吸着塔を素通りする。これに対して、より沸点の高いXe(沸点−107.1℃)及びKr(沸点−153.4℃)は、活性炭表面のミクロポア(微小な気孔)内のファンデルワールス力により吸着され


図6.2.24 希ガスホールドアップ装置系統図


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