第6章 「ふげん」の運転実績

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をポンプ外部に設け、スラストディスク兼用の補助インペラにより重水をモータ内部と熱交換器との間に強制循環させる。
 ポンプの駆動は、かご形三相誘導電動機により行い、固定子及び回転子は、キャンをかぶせ、このキャンは、それぞれの端フランジにTIG溶接で取り付けた。軸受として、モータ下部にスラスト軸受、モータ上・下部にジャーナル軸受を設けた。
 重水循環ポンプ主要仕様を表6.2.13に示す。
(2)開発経緯
 このような大型のキャンドロータポンプは、「ふげん」の開発時点で、国内に製作実績がなかったため、試作機を製作し、約半年にわたって各種試験を実施した。
 試験は、モータ及びポンプの特性試験、テストループを使用した累積1,000時間以上に及ぶ運転試験等を実施した。これらの試験ののち、分解開放検査を実施し、実用機として十分に信頼性を確保できる設計であることを確認した。
(3)運転及び保守点検実績
 「ふげん」の本格運転開始から平成15(2003)年3月末までに、重水循環ポンプ3台のうち常用機2台の運転時間は約15万時間/台に達した。その期間を通じてポンプの不具合による運転停止はなく、高い運転信頼性を実証した。
 また、この間、3台のポンプの定期的な点検を実施し、信頼性の確保に努めた。
分解点検周期
 重水循環ポンプは、発電所の定期検査期間中に、予防保全の観点から分解点検を実施している。分解点検の周期は、スラスト軸受の隙間(摩耗量)により決定され、第7回定期検査までの間は2定検ごととした。これは、試作機による運転試験結果に裕度を含めたものである。この間、超音波を用いた隙間測

表6.2.13 重水循環ポンプ主要仕様

定の実績データを蓄積した結果、分解点検周期を3定検ごとに延長しても、スラスト軸受の隙間が、許容値以下に充分収まる見通しが得られたため、第8回定期検査以降は、周期を3定検ごととした。
分解点検作業
 重水循環ポンプの分解は、図6.2.23に示す手順で行い、作業は、トリチウムの拡散防止のため、重水雰囲気専用の換気系(非常用ガス処理系)で負圧に維持した仮設のクリーンハウス内で行い、必要に応じて、トリチウム防護服を着用して実施した。また、ポンプの引下し・組入れ作業の効率化とトラブル防止のため、専用のポンプ揚重設備を設置し、作業性の向上を図った20)
点検内容
 重水循環ポンプは、ポンプケース(外観点検)、羽根車(外観点検、寸法検査)、軸・固定子・回転子(外観点検、寸法検査、浸透探傷試験、固定子の絶縁抵抗測定)、軸受(外観点検、寸法検査)の各部の分解点検を行い、組立後に試運転を実施し、ポンプの運転特性を測定して、健全性を確認した。
点検結果
 分解点検時に発見された異常は、重水循環ポンプ常用機1台の固定子キャン溶接部の欠陥のみであった。この欠陥は、第2回定期検査時の分解点検の際に発見され、ヘリウム漏えい試験により、貫通欠陥であることを確認した。原因は、溶接時に生じた微小なブローホールであり、これが、運転の経過とともに成長して貫通したものと推定された。当該ポンプの固定子を、新規製作品と取り替えるとともに、



図6.2.23 分解点検実績日数(第9回定期検査)



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