第6章 「ふげん」の運転実績

帯

6


て)に対して十分に低く抑える場合の最大時間として5秒に設定して解析を行い、設計基準値を3〜5秒とした。
主蒸気隔離弁漏えい率基準値
 主蒸気管破断事故時の、安全解析における主蒸気隔離弁の漏えい率は、蒸気相体積の70%/day を使用して周辺公衆への被ばく線量評価を行い、許容値(安全審査指針;原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断の目安について)を十分に下回ることを確認した。これとともに先行プラントの設計例を参考として、主蒸気隔離弁の漏えい率を40%/day /個以下に設定した。
 主蒸気隔離弁の製作上の基本条件は、以下のとおりである。
)通常運転時には、安定性が良く、圧力損失が小さいこと。
)事故時は、所定時間内で弁を急閉鎖し、蒸気の放出量を最小限に抑え、かつ作動時において弁体振動等の異常状態を発生しないこと。
)操作系の事故及び操作動力源の喪失時に、確実に弁が閉鎖できること。
)通常運転時に、作動機能を常に確認できること。
)弁閉鎖後の漏えいは、所定の漏えい率以内であること。
 開発試験での弁閉鎖後漏えい試験において、漏えいが認められた。この原因として、ディスクの着座性が非常に影響することが判明したため、上部ディスクとガイドの間隙を、下部ディスクに比べ若干大きくし、またディスクとガイドとの接触を点接触から面接触に改良して、着座性を良くした。この結果、弁からの漏えいは抑えられ、良好な状態が得られたため、実機の、弁はこの改良に基づき製作した。
(3)運転及び保守点検実績 
 運転中の原子炉スクラム等による主蒸気隔離弁の閉鎖は、正常に機能した。また、運転中の主蒸気隔離弁の閉鎖機能確認試験結果は、以下のとおりであった。
5%閉試験
 原子炉運転中における主蒸気隔離弁の閉鎖機能を確認するため、原子炉運転中に、毎日、5%閉鎖機能を利用した試験を行った。その結果、5%閉試験による閉鎖機能に問題はなかった。
全閉試験
 原子炉運転中に、主蒸気隔離弁急閉基準が維持されていることを確認するため、6か月に1度全閉試験
を行った。
 昭和60年1月に、主蒸気隔離弁の急閉操作(全閉試験)を実施したところ、4台のうち、A主蒸気外隔離弁が急閉しなかった。その原因は、急閉動作操作部の電磁弁内部のグリースが劣化し、摺動抵抗が大きくなり、動作不良に至ったものと判明した。このため、定期検査時に、予備品として保管していた電磁弁について、主蒸気隔離弁の点検と合わせて分解点検を実施し、またグリース等の劣化防止の観点から保管時の環境条件に配慮した結果、その後の全閉試験においては問題のないことを確認した。
漏えい検査
 主蒸気隔離弁の健全性確保のため、定期検査のつど、分解点検及び漏えい検査を実施した。
 その結果、分解点検時に、弁体の着座性を良くするための摺合わせを実施して、漏えい率を基準値以下に維持してきた。点検実績は、次のとおりであった。 
)分解点検内容
 主蒸気隔離弁の分解点検は、電磁弁も含めてすべての分解を行い、各構成部品の目視点検、弁体の摺合わせ等を実施している。
)分解点検結果
 毎回の定期検査で分解点検を行っており、計17回実施した。弁本体には、第2回及び第4回定期検査時の分解点検の結果、主弁ディスクのシート面(ステライト肉盛部)に熱応力等によるものと考えられる微細なヘアークラックが認められた。ヘアークラックは、微細なもので、主蒸気隔離弁の性能に影響を及ぼすものではなかったが、対策として、主弁ディスクシール面のステライト肉盛方法の改善を行った。
 また、運転の初期、操作部及び操作空気の制御に用いる電磁弁において、ゴミや異物が原因と考えられる不具合が発生した。その対策として、分解点検時の清浄度管理を強化したことにより、その後の発生は防止された。
(4)評価
 弁本体は、ディスク等の若干の改良を必要としたが、大きな問題点はなく、開発当初に要求された機能を十分に満足しているものと判断された。
 また、運転の初期段階で、電磁弁の動作不良など細かな不具合が発生したが、その後の清浄度管理等の対策の効果により、大きな不具合の発生を防ぎ、主蒸気隔離弁の健全性が確保された。



帯
217

前頁

目次

次頁