第6章 「ふげん」の運転実績

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いて、試作検出器の照射試験を行い特性の改善等を進めたのち、2体の長寿命型LPMを「ふげん」の運転初期から装荷して、約6年間の照射試験を実施した。その結果、1.3×1022nvtの積算照射量まで十分な中性子感度が保て、通常型LPMに比べて約4倍の寿命を有することを実証した。
(3)運転及び保守点検実績
装荷実績
 「ふげん」運開当初、通常型LPMを主に使用したが、当時から2体の長寿命型LPM(混合比235U:234U=1:3)を試験的に導入し、その後、順次に長寿命型LPMに取り替えた。第4回定期検査以降、反射体領域中のLPMを除いて長寿命型となり、第7回定期検査において反射体領域中のLPMも含めてすべて長寿命型となった。
 さらに、第8回定期検査以降、初期の感度劣化速度が遅く、比較的高い感度で更に長寿命化を図るため、235Uと234Uの混合比を1:4とした検出器を試験的に使用し、その結果を踏まえて、順次、混合比を1:4とした長寿命型に取り替えた。これに加えて、LPMのシャフリングを実施してLPMの取替体数を低減し、交換作業期間の短縮及び廃棄物の低減を図った。       
 「ふげん」のLPMの寿命は、ノイズとなるγ線の信号に対する中性子の信号の比率が5(初期感度の14%に相当)を下回る時期を取替基準とし、最高で有効運転日数が2000日以上、熱中性子照射量が1.3×1022nvtという実績を生んだ。
 LPMの交換は、トリチウム防護の観点から、制御棒駆動装置の交換と同様に専用のチェンバーを用



写真6.2.3 中性子検出器と制御棒案内管

い、グローブボックス内で行った。
LPMの不具合
 LPMは、核分裂電離箱型中性子検出器であり、カソード面に塗布したUO2の核分裂に伴う肌荒れによる一過性の放電パルス現象、封入したArガスのケーブル密封シールを通した移動による一過性の感度変化現象等により、正常な計測ができなくなる事象が発生した。
 これらの事象のうち、運転期間中に最も頻繁に発生したのは、放電パルス現象で、昭和59(1984)年7月から平成2(1990)年12月まで計77回発生し、その約80%は炉内装荷・使用開始から3か月以内に起き、それ以降は急減している。
 昭和56(1981)年、定格出力運転中に放電パルスに起因する「中性子束高々」により、原子炉スクラムが発生した。調査の結果、単一のLPM検出器に、定格運転中の検出器出力電流レベルを大きく超えた瞬間的な過電流が発生し、当該LPMの属するA系、B系2つのRPMの平均中性子束計算値を押し上げ、原子炉スクラムに至ったことが判明した。このため、LPMから2つのRPMへの入力回路のうち、電源を異にするRPM入力回路に信号抑制用の上限制限器を設け、不必要な原子炉スクラムを防止することとした。
LPMのシャフリング
 LPM検出器に感度劣化や故障が発生した場合、検出器集合体を新品と交換して対応したが、LPMの性能劣化は、炉内での中性子照射量の積算値と相関があり、炉中心部のLPMの取替頻度は、周辺部に比べて高かった。
 このため、プラントの運転終了時期が見通せるようになった第16回及び第17回定期検査においては、中性子照射量の多い炉中心部のLPMを周辺部へ、周辺部のLPMを炉中心部へ移動する、いわゆるシャフリングを実施して、照射量の平均化とLPM取替体数の削減を図った。
 この結果、LPMの予備品5体の節減を実現し、シャフリング後の各LPMの感度も正常であった。
(4)評価
 「ふげん」用の核分裂電離箱型中性子検出器は、中性子変換物質235Uの核分裂反応率が大きいという重水炉の特性からの課題である高直線性、長寿命化を目的として開発されたが、「ふげん」における良好な使用実績を得て、その実用性、信頼性が実証できた。


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