第6章 「ふげん」の運転実績

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(ハ)制御棒の位置表示用の差動トランスは、運転当初から10年以上使用した電子部品であり、予防保全のため、第9回定期検査時から調整棒用を優先した取替えを進めた。しかし、その後、前述したとおり、新たなIC回路を備えた差動トランスを採用することとしたため、第16回定期検査において全数の取替えを実施した。
)予備体の管理
 「ふげん」においては、分解点検期間を短縮するため、6基の予備制御棒駆動装置を備えていた。
 制御棒駆動装置の分解点検は、試験設備及び点検スペースの制約から、1日をずらした2基分の並行作業が限界である。定期点検時の平均点検基数である13〜16基の作業を行うのに、50〜58日間を要する。「ふげん」の定期検査期間は、約90日が標準であり、制御棒駆動装置は、燃料体装荷前に機能を復帰しておく必要があるため、炉内作動試験の期間も考慮すると、最大で40日程度しか分解点検期間が取れない。このため、前の定期検査時に交換した点検整備済みの6基を取替用予備体とし交換に使い、分解点検期間を約30日間短縮した。
(4)評価



写真6.2.2 制御棒駆動装置
チェンバーによる交換作業

 「ふげん」の制御棒は、低温(50〜70℃)、低圧(0.65kg/cm2)の重水中で使用されるため、常時、炉内に挿入されている領域出力調整棒も、核的寿命に至るまで、健全性が、確保されることが確認できた。
 制御棒駆動装置の分解点検結果においては、その機能に直接影響を及ぼす異常等は認められず、十分にその健全性を確保しているものと判断した。また、運転中のサーベランスチェック及び定期検査時の炉内作動試験結果から、当初のスクラム性能等を十分に保持しているものと判断され、制御棒駆動装置の開発に係るR&Dの成果が、実証された。

6.2.5 炉内中性子検出器
(1)構造及び機能
 「ふげん」においては、原子炉内の中性子束を監視するため、原子炉内の重水中に、次の中性子検出装置を設置した。
起動用検出装置(SUM:Start Up Monitor)
出力上昇用検出装置(PUM:Power Up Monitor)
局部出力検出装置(LPM:Local Power Monitor)
 定格出力運転時等の高出力領域ではLPM、起動・停止等の低出力領域ではSUM及びPUMをオーバラップして使用し、原子炉の安定運転に必要な情報を得る。SUMとPUMの検出器は可動型で、案内管を通して炉内に挿入し、出力運転中は炉心上方に引き抜かれる。
 特に注目される中性子検出装置は、LPMであり、LPMに使用されている合計64個の中性子検出器信号を1/4炉心領域ごとに平均化する領域出力検出装置(RPM:Region Power Monitor)、RPMの信号を総和する全出力検出装置(TPM:Total Power Monitor)及びL PMの信号の最大値を選択する制御棒引抜停止検出装置(RSM:Rod Stop Monitor)で構成され、原子炉の制御、燃料の健全性監視及び燃焼度管理に重要な役割を果たす。
 中性子検出装置のブロックダイアグラムを図6.2.10、炉内配置図を図6.2.11に示す。
 LPMの構造及び測定原理は、次のとおりである。 
 原子炉の出力領域で用いるLPMは、原子炉内に据え付けられている16体の集合体である。各集合体は、炉心軸方向に等間隔に配置した4個の電離箱型中性子検出器、これらを校正する出力較正用検出装置(PCM:Power Calibration Monitor)の走行する案内管、MIケーブル(Mineral Insulated Cable)、これらを内包する保護管等から構成され、構造材として


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