第6章 「ふげん」の運転実績

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設けた。
カランドリア管
 カランドリア管は、圧力管を同心円筒状に内包するジルカロイ−2製の薄肉管であり、炉心タンク内に224本が垂直に設置され、その格子間隔は240mmである。カランドリア管は、ロールドジョイント法により、上端をカランドリアタンク上部管板に、下端をカランドリアタンクの下部管板に接合している。
 カランドリア管と圧力管との間のアニュラス空間を、炭酸ガスが、微速で流れ、圧力管内で発生する熱が重水に伝達しないよう断熱の役割を果たすと同時に、圧力管及びカランドリア管からの漏えいを検出する役割を果している。
 カランドリア管の肉厚は、中性子経済のため可能な限り薄い設計としつつ、圧力管・カランドリア管破断事故時に受ける外圧荷重にも十分に耐えることができる強度となっている。
(2)開発経緯
 「ふげん」は、圧力管型重水炉であり、原子炉本体の構造が軽水炉とは全く異なる。そこで、その製作技術を確立するため、軽水炉の各種規格、基準の適用の考え方、新しい構造や材料選定に対する考え方等の検討を踏まえ、以下のように、広い範囲の各種研究開発を実施した。
カランドリアの設計基準の確立
 カランドリアは、直接に原子炉冷却系と接しないが、重水を収納し、圧力管集合体により貫通されている容器である。軽水炉の原子炉圧力容器とは機能、形状、材料が大きく異なるが、軽水炉を対象とした「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準」(以下、「告示」という)及びその考え方の元となるASME Boiler and Pressure Vessel Code Section の考え方を参考に設計した。
 カランドリアは、その使用条件を見れば、告示に示される第3種容器(現行の告示では第4種容器)に分類されるが、その構造及び機能を考慮して、運転状態(通常運転状態、重水ダンプ状態、事故状態)の設定及び応力(強度)評価を実施する方法がとられた。
 評価にあたっては、カランドリア及び鉄水遮蔽体が複雑な一体構造であること、カランドリア管は、炉特性向上のために薄肉構造としたことなどを考慮し、カランドリア設計用の応力解析プログラムを開発し、応力評価を行うとともに、カランドリア管外圧座屈試験を実施し、設計の妥当性及び安全性を確認した。
ロールドジョイント技術の開発
 カランドリア管(ジルカロイ−2)は、その上端及び下端部をカランドリアタンク管板(SUS27HP)と、炉内制御棒案内管(ジルカロイ−2)は、その上端をカランドリアタンク上部管板と接合したが、このジルカロイ−2材とSUS27HP(SUS304HP)材は、異種金属であり、溶接が不可能なため、機械的接合法であるロールドジョイント法により接合する方法を採用した。
 耐圧性、耐漏えい性及び所定の機械的強度を有するロールドジョイントを開発するため、まず短尺の接合部試作試験を実施し、その結果から最適な寸法、拡管率等を決定した。次に、この最適条件に基づき、試験体に対する機能上の試験を実施し、ロールドジョイント部の健全性を確認した。
原子炉本体モックアップ試作
 カランドリア及び鉄水遮蔽体のモックアップは、直径を約3mとして実機の約1/3、高さを約7mとして実機と同じくし、また製作加工、溶接作業、組立作業、カランドリア管のロールドジョイント及び各種試験検査は、実機ベースで実施した。
(3)運転及び保守点検実績
 カランドリアタンク及びカランドリア管は、供用期間中に以下の漏えい確認試験を行い、その健全性を確認した。また、交換したヘリウム破壊板の寿命評価の観点から腐食等の調査を行い、カランドリアのバウンダリ健全性を検証した。
カランドリアタンクの漏えい確認試験
 毎定期検査時に、重水系統への遮蔽冷却水の漏れ出しの有無を測定して、カランドリアタンクの健全性を確認した。
 遮蔽冷却水は、カランドリアタンクの外壁を流れ、遮蔽冷却水の圧力は、カランドリアタンクの内圧より高くなっている。遮蔽冷却水の防錆材は、発電所内で唯一クロメート(クロム酸カリウム)を用い、かつ、遮蔽冷却水と重水系統とが接する部位は、カランドリアタンクのみであるため、重水中からクロム酸イオンが検出されれば、カランドリアタンクへの漏えいがあるものと判定できる。
 毎定期検査時の漏えい確認試験において、遮蔽冷却水の漏えいは認められず、カランドリアタンクの健全性が維持されていると判断された。
カランドリア管の漏えい確認試験
 カランドリア管と圧力管との間のアニュラス空間


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