第6章 「ふげん」の運転実績

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6.2 機器の信頼性/保守性の評価
6.2.1 圧力管集合体(圧力管検査装置)1)
(1)構造及び機能
 「ふげん」の原子炉は、燃料体を装荷する圧力管集合体が224本、格子状に並べられている。個々の圧力管集合体は、ジルコニウム・ニオブ(Zr-2.5wt% Nb)合金製の圧力管本体と、ステンレス鋼製の上部延長管・下部延長管で構成され、全長約9mである。また、圧力管本体の形状は、長さ約5m、内径117.8mm、肉厚4.3mmであり、圧力管本体は、同一の品質管理で形状、寸法及び材料も同一に製作されている。原子炉本体の概要図を図6.2.1に示す。
 圧力管集合体は、原子炉冷却材圧力バウンダリの一部であり、供用期間中検査を行い、その健全性を確認する必要がある。さらに、圧力管材料のジルコニウム・ニオブ(Zr-2.5wt% Nb)合金は、原子炉の運転に伴い照射クリープを生じる。このため、運転開始後のクリープ歪みの量を測定し、設計評価式により解析予測値と比較し、圧力管の健全性を確認した。 
 「ふげん」においては、独自に、原子炉を構成している圧力管集合体の検査を遠隔自動で行う検査装置を開発し、定期的に実機に適用して、圧力管集合体の健全性を体系的に確認した。
 圧力管集合体は、細長い管状であるため、検査装



図6.2.1 原子炉本体概念図

装置を、「ふげん」の燃料集合体の大きさに小型化し、燃料交換装置を利用して圧力管集合体への取付け、取外しを遠隔操作で行うことができるようにした。検査装置を装着する圧力管集合体の内部は、高放射線環境(約3×103 Sv/h・γ線)の水中であるため、装置は水中駆動とし、使用部品は電子部品を含めてすべて照射試験により耐放射線性を確認したものを用い、遠隔自動による高精度の検査が可能な装置とした。(圧力管検査装置を用いた検査技術の詳細については、第8章8.1で記載している)。
(2)開発経緯
 「ふげん」建設前の昭和45(1970)年、「大洗工学センター」の設立と同時に設けられた機器システム開発室(当時)で、圧力管検査装置の開発を開始した。初代の圧力管検査装置は、昭和46(1971)年に製作され、昭和52(1977)年、「ふげん」に搬入されたあと、プラント運転開始前の圧力管集合体の検査に使用し、当初の目的を達成した2)。
 この初代の圧力管検査装置は、当時の技術の粋を集めて製作された装置であったが、総重量20トンに及ぶ大型装置であった。プラントの運転開始後の使用を考えると、検査実施ごとに行う装置の組立て等に伴うプラント停止期間の長期化や被ばく線量の増大など、いくつかの課題があった。様々な角度から検討を加えた結果、検査装置を燃料集合体と同じ程度に小型化し、燃料交換装置を利用して圧力管集合体内部に挿入し、検査を行うという方式を実現させるため新たな開発を進めた。
 検査装置を燃料集合体と同じ程度の大きさにすることは、重量・体積共に初代の装置の百分の一に小型化するということを意味し、昭和52年から開始した小型検査装置の基本設計で、検査機能の分割化を図った。そして、昭和54(1979)年、試作した検査装置を用いた性能試験において実用化の見通しが得られ、昭和56(1981)年から実機装置の製作を開始した。昭和58(1983)年に検査装置を完成し、大洗工学センター内に設けられたモックアップ試験設備を用いて、約1年間にわたる検査機能の確認試験や耐久試験を経て、「ふげん」に搬入して検査に使用した。小型圧力管検査装置の開発工程を図6.2.2に示す。
 昭和61(1986)年以降は、当初の開発目標としたすべての装置を「ふげん」に備え、定期的にこれらを用いて、圧力管集合体の健全性の検査、確認を行った。これに伴い、検査の経験及び実績を踏まえ、例えば、検査機構部の電子部品を外部に別置して、



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