第6章 「ふげん」の運転実績

帯

6



図6.1.63 イオン交換樹脂の重水化曲線

比べて100倍近い濃度である。これは、重水中の過酸化重水素によるイオン交換樹脂の酸化劣化を抑制するため、重水浄化塔への通水時間を1日、2〜3時間とし、浄化率が低いことによる。
 なお、重水中Co-60は、ほとんどがイオン状で存在し、また重水温度(70℃)が低いため、配管へのクラッドの付着及び酸化被膜への取込みが少ない。このため、重水系機器配管の線量率は、0.1〜0.2mSv/hと低く、外部被ばくによる被ばく管理上の問題は生じていない。
 重水濃度は、約99.7wt%に維持されている。重水浄化系に用いられているイオン交換樹脂は、軽水環境で製造されているため、樹脂中に軽水を約50%含んでいる。このため、樹脂を重水浄化塔に投入する前、軽水環境で製造された樹脂を重水化塔と呼ばれる容器に入れ、次に図6.1.63に示すように、塔下部より重水を除々に供給して塔頂から置換水を抜出し、樹脂中の軽水を重水に置換する重水化と呼ばれる操作を実施している。これにより、系統内の重水濃度が低下しないように管理している。また、樹脂を廃棄する前に、樹脂中の重水を軽水で置換して重水及び重水中のトリチウムを回収する操作(軽水化)が必要である。これらの重水化及び軽水化によって50wt%程度まで濃度の低下した重水が、年間約7m3発生する。また、重水系機器の保守作業及び化学分析に伴うサンプリングによっても若干の低濃度重水が発生する。これらは、理化学研究所及びサイクル機構(旧動燃)が、昭和62(1987)年に開発した疎水性白金触媒を用いた水/水素同位体交換反応装置及び電解式濃縮装置により、99.8wt%まで再濃縮して再利用されている8)

参考文献
1)北端、中村、他:“新型転換炉ふげん発電所における水素注入方の開発”、日本原子力学会誌、Vol.35 No.1、p.75〜86、(1993)
2)小池、揖場、他:“新型転換炉ふげん発電所における系統化学除染技術の開発と経験()構造材料健全性試験・評価”、日本原子力学会誌、Vol.38 No.5、p.382〜392、(1996)
3)直井、北端、他:“新型転換炉ふげん発電所における系統化学除染技術の開発と経験()系統化学除染の結果”、日本原子力学会誌、Vol.38 No.6、p.511〜520、(1996)
4)森田、青井、他:“酸化還元除染法による「ふげん」原子炉冷却系Bループの系統化学除染結果”、サイクル機構技報、N0.7、(2000)
5)高城、森田、他:“新型転換炉ふげん発電所における亜鉛注入技術の実証”、サイクル機構技報、N0.12、(2001)
6)B.Cox:“EPRI NP-3146”,Final Rep., (1983)
7)北山、森田、他:“新型転換炉「ふげん」重水 ヘリウム系の開発と重水取扱技術の実績”、動燃技報、No.68、(1988)
8)清田、中村、他:“新型転換炉「ふげん」における重水精製”、動燃技報、No.70、(1989)


帯
148

前頁

目次

次頁