第6章 「ふげん」の運転実績

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図6.1.56 原子炉冷却材の水質実績

 図6.1.56に示した原子炉運転期間中の水質実績値は、原子炉冷却材浄化系脱塩器入口から週1回の頻度で採取されたサンプルのデ−タである。電気伝導度及びpHについては、おおむね安定に推移している。
 昭和60(1985)年以降、電気伝導度がわずかに低下、pHが中性域(pH7)に変化している。これは、昭和59(1984)年以降、水素注入の開始により、原子炉冷却系の水質環境が酸化性雰囲気から還元性雰囲気になったことにより、配管等からのクロム酸イオン(CrO4-)の溶出が抑制されたことによる。
 塩素イオン濃度は、1ppb以下を保ち、シリカについては、昭和61(1986)年以降、原子炉冷却材浄化系脱塩器の強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基陰イオン交換樹脂の樹脂量比率を、2:1から1:1に変更し、陰イオン交換能力を増加させ、また原子炉冷却材中のシリカ濃度が50ppbを超えるおそれがある場合を樹脂交換基準としたため、この時期から低下傾向が認められる。
 溶存酸素濃度については、昭和59(1984)年8月から試験水素注入を開始し、昭和60(1985)年12月から連続水素注入を行っているため、この経過にしたがって低下傾向を示している。水素注入を経験していない酸化性雰囲気にある燃料集合体を、溶存酸素濃度/溶存水素濃度比が15以上の環境におくと、燃料被覆管への水素吸収量が増加し、燃料破損する確率が高まるという文献情報6)があった。これに基
づき、平成元(1989)年の第8回定期検査に、水素注入開始前に装荷された燃料集合体が全部取出されるまで、溶存酸素濃度の目標を30ppb以下とし、その後、平成4(1992)年まで、15ppb以下、1992年以降、10ppb以下に保つよう水素注入を行っている。
 Co-60等の放射性核種の配管内面への取り込み(再汚染)を抑制するため、平成11(1999)年から原子炉冷却系への亜鉛注入を行っている。平成10(1998)年8月から平成11(1999)年1月にかけて、短期亜鉛注入試験を実施し、原子炉冷却材中の亜鉛濃度5〜7ppbにおいて放射性核種の付着抑制効果を確認し、これを通常運転中の目標濃度として(亜鉛)注入を行っている。ただし、系統化学除染実施後の原子炉起動初期においては、特に放射性核種の配管内面への再付着がより進む傾向がある。このため、原子炉起動初期については、目標亜鉛濃度を7〜10ppbと高めに設定し、さらに炉起動約1か月後に、再付着の進行が小さくなると考えられたため、目標亜鉛濃度を5ppb程度に注入を制御した。この亜鉛注入により、原子炉冷却系配管の系統化学除染後のCo-60付着量推移は、亜鉛注入のない系統化学除染後と比較して、1年間の再汚染率は60%から12%に低下し、大幅な放射能付着抑制効果が得られた。
よう素-131濃度
 燃料被覆管の健全性を確認するため、週2回、原子炉冷却材中のよう素-131濃度の測定を実施している。
 平成14(2002)年4月の第17回定期検査後の調整


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