第6章 「ふげん」の運転実績

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6.1.7 化学管理
(1) 概要
 「ふげん」の化学管理は、原子炉冷却材と重水減速材の水質管理が、主要なものである。
 原子炉冷却材の化学管理においては、軽水炉発電所と同様に、燃料被覆管材をはじめとする原子炉構成材料の健全性の確認・維持及び被ばく低減を主要な目的とする水質管理を行ってきた。特に、昭和59(1984)年8月から、SUS304鋼製配管の応力腐食割れ(SCC)防止対策の一環として、我が国で初めて、水素注入法を採用し、以来、18年以上にわたり水素注入を継続し、「ふげん」の安定運転に貢献してきた1)
 また、平成元(1989)年8月及び平成3(1991)年1月に、国内初の取組として、原子炉冷却系全体の化学除染を実施し、原子炉再循環ポンプの分解点検やSCC発生防止対策の配管取替工事に伴う被ばく線量を低減した2), 3)
 化学除染により、古い酸化被膜が除去され、新たな被膜が形成される過程において、Co-60等の放射性核種が早く取込まれる。このため、除染後の配管の汚染密度が、1〜2年で除染前のレベルまで回復してしまう再汚染をその後の運転により確認した。また、水素注入を連続的に実施している環境下においては、生成する酸化被膜のクロム含有量(金属組成比)が、14〜30%と増加した。10%以下のクロム含
有量を対象としていたため、平成元(1989)年当時の還元除染法は、上記の含有量は、ほとんど除染できないことも分かった。
 このため、平成11(1999)年及び平成12(2000)年に、定期検査時の原子炉再循環ポンプ分解点検に伴う被ばく低減対策として実施した系統化学除染においては、酸化還元除染法であるHOP法を新たに適用した4)。また、再汚染防止対策としては、平成2(1990)年から、亜鉛注入法について実機適用性の検討を始め、平成11(1999)年の系統化学除染を実施したあと、原子炉起動時から本格的な実機注入を開始した。これらの対策により、図6.1.53に示すように原子炉冷却系の線量率及び通常定期検査作業に伴う作業者の被ばくについても効果的に低減してきた5)
 重水の水質管理については、以下に述べる。起動試験の初期において、重水浄化塔の浄化能力低下により重水の電気伝導度が上昇した。この主原因は、重水が炉心部で放射線分解された時に生成する過酸化重水素であることが明らかとなった。酸化力の強い過酸化重水素は、重水系水温が約70℃と低いために、分解されないまま重水浄化塔に流入し、イオン交換樹脂を酸化、有機物を発生させ、この有機物が、更に炉心内で分解され、硝酸イオン等の不純物イオンを生成したため、重水の電気伝導度が上昇したものである。このため、水質悪化メカニズムの解明調



図6.1.53 「ふげん」の水素注入・系統除染・亜鉛注入実績


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