第6章 「ふげん」の運転実績

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小さく、原子炉出力が約10%程度で切替を行っていた。給水調節弁の切替をこの出力で行うと、蒸気ドラム水位の変動が大きく、制御に困難を要した。このため、低流量調節弁の容量を2倍とし、原子炉出力が約18〜20%で給水調節弁の切替を実施するように改善した。
 その後、給水調節弁の切替をより安定的にかつ容易に行うため、熟練運転員の運転技術を取り入れたファジィ理論を適用した給水制御方法を開発(詳細は第8章8.4.3参照)し、給水制御系の更新(ディジタル化)に合わせ、実機に適用した。
 燃料交換は、燃料交換機、燃料出入機、トランスファーシュート、燃料移送機の4つの機器を使用し、燃料、遮蔽プラグ及びシールプラグを炉心、燃料交換プール、燃料貯蔵プール間において移動する作業であり、大変複雑な作業管理を必要とした。さらに、燃料交換プールの収容ラックに容量制限があり、効率よく運用しなければ、燃料交換工程に影響を及ぼすこととなる。
 このため、燃料交換作業をモデル化し、運転員の経験的知識を計算機システムに適用した燃料交換作業支援システムを開発(詳細は第8章8.4.5参照)した。最終的に実機の改造に合わせ、本システムを制御システムに組み込むことにより、燃料交換作業の自動化を図った。
 「ふげん」の再循環ポンプは、プラント起動時の出力上昇に伴い、出力約40%で低速(450rpm)から高速(900rpm)に切替える方式である。再循環ポンプの速度切替えにより、再循環流量が約2倍になり、炉心のボイド率が変化することにより、蒸気ドラム水位が大きく低下方向に変化(約250mm)する。このため、あらかじめ蒸気ドラム水位を高く設定することにより、安全な再循環ポンプの切替えを実施した。なお、ボイド反応度係数が、ほぼ零であるため、出力変動は、ほとんどなかった。
 重水炉特有の系統は、重水系、ヘリウム系である。これらの系統の運転に関しては、起動試験から約四半世紀の運転経験を経て、運転手法の確立を行うことにより、重水炉特有の系統操作に起因したトラブルを生じることはなく、安定的な運転を行った。その間、重水浄化系イオン交換樹脂の取替え、ヘリウム精製、重水水位上昇等の操作技術を確立した。
その他、昭和60(1985)年12月から実施した水素・酸素発生装置による連続水素注入(詳細は第8章8.3.2参照)、平成11(1999)年からの亜鉛注入の運
転操作技術を確立(詳細は第8章8.3.4参照)している。また、定期検査時に実施した系統化学除染(詳細は「第8章8.3.3参照)の運転操作技術を確立した。
(4)運転手順書の整備
 「ふげん」の運転は、保安規定に基づき整備された次の各種手順書に従い行っている。
プラント起動停止手順書
設備別操作手順書
特殊操作手順書
定期試験手順書
定例試験手順書
巡視点検手順書
警報手順書
異常時操作手順書
緊急時操作手順書
 これらの手順書は、プラント運転実績、「ふげん」及び他プラントのトラブルを反映し、逐次改善や充実を図った。特に、トラブル反映に関しては、手順書の面からの徹底した原因分析を行い、その再発防止の観点から水平展開を図り、類似した手順書全般にわたり改善している。さらに、ヒューマンエラーに起因するトラブルを踏まえ、手順書の改善を計画的かつ継続的に実施するため、発電課内に運転技術検討会を設置するとともに、「運転資料改訂依頼書」の運用により、手順書の整備に努めた。
(5)計画停止・定期検査時の作業管理
 計画停止及び定期検査等でプラントが停止している期間に、各種作業が行われるため、作業管理の面では細心の注意が必要である。通常の運転監視、巡視点検の他に発電課が実施する主な作業は、次のものがある。
作業の管理、調整業務
作業に伴う系統、設備のアイソレーション及び試運転
燃料交換作業
樹脂交換作業
ヘリウム精製作業
 運転開始当初、当直において上記の作業管理をすべて実施していたが、第2回定期検査より、作業担当課との調整等を円滑に実施するため、発電課内に「定検支援Gr」を設置した。その中に定検リーダーを4〜5名置き、作業担当課との調整業務や当直が実施するアイソレーションの実施・解除、試運転等を支援する業務を実施することとした。


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