第4章 「ふげん」機器の試作開発

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(b)の○印が計算値、実線が測定値であり、計算値は、実測値をほぼ再現している。

4.3.3 実機への採用
 以上の研究成果に基づき、希ガスホールドアップ装置の国産技術が確立した。昭和46(1971)年当時、「ふげん」は、建設中の段階であったため、この技術を用いた最初の実機希ガスホールドアップ装置は、「ふげん」への採用に先駆けて、既に運転中の日本原子力発電(株) 敦賀発電所に昭和46(1971)年12月に設置された。「ふげん」は、建設工事の進歩に合わせ、昭和52(1977)年6月に希ガスホールドアップ装置を設置して、順調に運転されてきた7)
 当時の敦賀発電所(BWR)の気体廃棄物の大部分は、減衰タンクによる加圧貯留方式で処理されていたが、as low as practicableの精神を尊重し、放射性物質の環境放出量を可能な限り低く抑えるという考えから、従来の排ガス貯蔵タンク方式から希ガスホールドアップ装置に切り替え、安全性の向上が図られた8), 9)
 さらに、昭和47(1972)年7月には、この装置は東京電力(株)福島原子力発電所1号炉に納入され、その後は、国内のBWRの排ガス処理装置として希ガスホールドアップ装置が標準的に採用されるようになった。この装置は環境への放出放射能量の低減に大きく貢献しており、現在に至るまで目的は、達成されている10)-12)。本希ガスホールドアップ装置の技術は、ATR開発に伴い得られた技術開発成果が、商業用原子炉に採用された一例である。

参考文献
1)S.Kadoya, S.Sugimoto, et al.:“Protecting the Ocean and Atmosphere from Contamination By Radioactive Waste Disposal Activities”, Proc. Fourth Int. Conf. Peaceful Uses of Atomic Energy, 11, p.305−323,(1971)
2)村田、遊佐、他:昭和46年日本原子力学会、化学工学分科会予稿集、p.18−25、(1971)
3)竹越尹:“希ガスホールドアップの実用化試験”、動燃事業団第4回報告と講演の会予稿集、p.60−74、(1971)
4)村田寿典:“希ガスホールドアップシステム”、空気清浄、10(2)、p.55−62、(1972)
5)中井重次:“希ガスホールドアップの実用化試験”、動力炉技報、3、p.25−34、(1972)
6)遊佐、安藤、他:“活性炭遅延ベッドの過渡応答解析”、日本原子力学会誌、15 (9)、 p.623、(1973)
7)井上良正:“敦賀発電所の運転経験”、原子力工業、19(1)、p.14−19、(1973)
8)谷村喜作:“敦賀発電所における希ガスホールドアップ装置”、火力原子力発電、24(4)、p.368−374、(1973)
9)川人武樹:“福島原子力発電所1号機の運転経験”、火力原子力発電、24(7)、p.730−744、(1973)
10)下里、竹島、他:“BWR希ガスホールドアップ装置の運転特性”、日立評論、55(5)、 p.441−446、(1973)
11)照沼誠一:“新型転換炉原型炉「ふげん」の総合機能試験”、動力炉技報、No.36、p.80−93、(1980)
12)村田寿典、竹越尹:機械振興、6(12)、p.73−79、(1973)



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