第4章 「ふげん」機器の試作開発

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図4.1.4 圧力管不安定破壊評価線図

壊には至らない。さらに、leak before breakに関する試験を行い、圧力管の小欠陥からき裂が進展しても、限界き裂長さに至る前に肉厚を貫通してリークが起るので、小さいき裂のうちに検出することができることを確認した。

4.1.5 ロールドジョイントの開発
 圧力管とその延長部の接合、すなわちジルコニウム合金とステンレス鋼の接合は、原子炉の構造上から避けられないものであり、この接合技術の成否が「ふげん」開発の決め手であることは、当初から明らかにされていた。このような重要コンポーネントは、実績が重要であると考えられたので、すでにカナダや英国で採用しているロールドジョイント法を開発することにした。
 このロールドジョイント法自体は、我が国でも拡管法と呼ばれて、熱交換器の伝熱管と管板の接合に普通に用いられている施工法である。しかし、これを圧力管と延長部の接合に適用する場合、材質の組合せ、寸法、構造などが熱交換器の場合と大きく異なるので、従来の経験からだけでは圧力管ロールドジョイントの具体的な実施方案を決めるのは困難であった。
 カナダから入手した情報及びその購入契約に基づいて行われた現地調査により、Gentilly−1のロールドジョイントにおけるジョイント部の構造及びジョイントを構成するステンレス鋼の材質、ジョイント部の溝の形状・寸法、拡管率やトルクなどの作業データ、拡管設備仕様、ロールドジョイント部の機械強度及び漏洩量仕様などの詳細情報を得た。しかしながら、Gentilly−1と「ふげん」の圧力管を比べると、直径/肉厚がGentilly−1の103.6mm/2.29mmに

対して「ふげん」は117.8mm/4.3mmであり、Gentilly−1の条件をそのまま「ふげん」に適用するわけにはいかないと判断された。特にカナダから入手した情報によれば、ロールドジョイントの型式には、普通型とサンドイッチ型があり(図4.1.5)、圧力管の内径と肉厚の比が約30以上はサンドイッチ型を、それ以下ならば(肉厚が厚ければ)普通型が良いという選択基準が与えられていた。Gentilly−1の圧力管は、この値が45.2になり、明らかにサンドイッチ型を採用すべき範囲にあるが、「ふげん」では27.4になり、どちらの型を採用すべきか判断に迷う値であった。両方の型式について研究開発して優劣を決めるという時間的、予算的余裕がなかったので、Gentilly−1の実績を採ってサンドイッチ型を採用することにした。なお、CANDU炉とSGHWRでは、圧力管の直径/肉厚比が小さいので、普通型のロールドジョイントを採用している。
 「ふげん」のロールドジョイントの開発は、比較的順調に進められた。圧力管上部ロールドジョイントは、寸法上の制約から外側リングの肉厚を下部のように大きくとることができないため、降伏点の高い材料(インコネル718)を使用したが、研究開発



図4.1.5 ロールドジョイントの型式


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