第2章 「ふげん」プロジェクトの誕生

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証・開発に必要な施設
安全性の実証に必要な施設
燃料集合体・圧力管集合体などの性能と耐久性の実証に必要な施設
の視点などから評価・検討し、必要な開発試験施設を下記のように決定した。そして、大型開発試験施設が開発の強力な武器であることを考え、できるだけ、世界レベルの試験能力にプラス・アルファを付加することも考えることにした。
)炉心核性能の開発:臨界実験装置
)炉心熱除去性能の開発:大型熱ループ
)安全性の実証:実規模安全性試験施設
)燃料集合体・圧力管集合体の性能・耐久性の実証:コンポーネントテストループ
(5)新型転換炉の開発における国際協力のあり方と予備折衝
 新型転換炉と同炉型の重水減速沸騰軽水冷却炉を開発しているカナダ、イギリス及びイタリアとは、相互に寄与する対等の国際協力を行うことを基本にした。開発初期段階は、我が国の新型転換炉の特徴(プルトニウムの本格利用)と大洗工学センターの開発施設を活用した開発と解析を前面に出し、次の段階は、全分野にわたり、“Give & Take”で相互に各々の開発成果と経験を反映・活用しあうこととした。
 新型転換炉の開発当初、原型炉の炉心と原子炉の設計に直ちに着手でき、この炉型の技術知見をレベルアップし、併せて開発期間の短縮を図るため、カナダのCANDU−BLW(カナダ型重水減速沸騰軽水冷却炉)とイギリスのSGHWR(蒸気発生重水炉)の設計情報を調査し、それぞれの長所を勘案して、購入する技術情報を下記のように選定した。
イギリス
・核設計解析コードを主体にした炉心関係の技術情報
・臨界実験データ
・大型熱ループ試験データと試験装置の図面
カナダ
・圧力管集合体設計と同設計根拠に関する技術情報
・Gentilly−1の安全評価書
・ブローダウン試験結果

2.1.5 動力炉・核燃料開発事業団の設立
 新型動力炉と核燃料サイクルの開発主体の役割を担った動力炉・核燃料開発事業団(以下、「動燃」
という)が、昭和42(1967)年10月2日に発足した。新型転換炉の開発は、上記の動力炉開発臨時推進本部から動燃に引き継がれ、新型転換炉開発本部が中心となり新型転換炉の開発を推進した。

2.2 新型転換炉開発の意義
 新型転換炉開発の意義は、「エネルギーの安定供給とエネルギーセキュリティの向上に資すること」を基本にしている。
 新型転換炉は、核燃料の効率利用と多様化が図れ、天然ウラン所要量とウラン濃縮分離作業量を低減できると期待され、この具体的展開は、「新型転換炉開発利用の初期段階は、プルトニウムセルフサステインサイクルを採用して実質天然ウラン供給で稼働させ、高速増殖炉が実用化されると、天然ウラン専焼で稼働させ、プルトニウムを高速増殖炉に供給すること」と示された。
 新型転換炉の開発・建設には、軽水炉の技術経験が活用された。一方、新型転換炉の開発において原子炉冷却系再循環ポンプ、主蒸気隔離弁等の主要機器の国産化、希ガスホールドアップ装置の開発などは、軽水炉に先駆けて行われた。
 1970年代の前半、当初見込まれた再処理費が、10倍以上になることが予測され、また遠心分離ウラン濃縮の実用化が見込まれるようになった。このような情勢にかんがみ、新型転換炉はプルトニウムを使用すると、安全性と経済性が高まること、プルトニウムをウランと同等に利用でき、燃焼度はプルトニウムの同位体組成にあまり影響されない特長があることに着目して、「新型転換炉は、燃料の多様化に優れ、核燃料事情に対応した燃料利用ができる。軽水炉の使用済燃料から抽出されるプルトニウムを使用するプルトニウムバーナーとして使用し、プルトニウム利用技術開発を牽引するとともに、軽水炉の稼動に伴い蓄積されるプルトニウム問題を緩和する」ことを開発の旗印に掲げた。新型転換炉の役割の変遷を図2.2.1に示す。
 特に、この後段は、“新型動力炉開発検討専門部会報告書(昭和51年8月11日)に明記され、また“IAEA International Conference on Nuclear Power Experience (昭和57年9月13〜17日)”において、日本の高速増殖炉と新型転換炉の開発に関する発表論文に対し、IAEA のPress Release8)に、「日本の新型転換炉はプルトニウムを利用し、高速増殖炉導入の先達を勤めている。」と評価された。


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