国立研究開発法人日本原子力研究開発機構/株式会社千代田テクノル

平成27年6月26日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
株式会社千代田テクノル

加速器中性子で製造した医学診断用テクネチウム99mの実用化へ大きく前進(お知らせ)

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)原子力エネルギー基盤連携センターの加速器中性子利用RI生成技術開発特別グループ(リーダー永井泰樹)は、核医学診断1)に多用されている放射性同位元素テクネチウム99m(99mTc)2)を、加速器中性子3)で生成したモリブデン99(99Mo)4)から熱分離し、その純度が放射性医薬品基準をクリアしていることを確認するとともに、骨診断用医薬品を用いたマウス生体内分布画像を初めて取得し、既存の99mTc製品と同等であることを明らかにしました。

99mTcの親核種5)である99Moは、海外の研究用原子炉で高濃縮ウランを用いて製造されており、我が国は、その全てを輸入に依存しています。近年、これら原子炉が高経年化のために稼働終了が近づいていること、高濃縮ウランの使用は核不拡散の観点から長年世界の懸念事項であること等から、99Moの代替生成法の確立が世界的に喫緊の課題となっています。

原子力機構、株式会社千代田テクノル(代表取締役社長:山口和彦)等により構成された原子力エネルギー基盤連携センターの研究チームは、平成23年8月に加速器中性子を用いて生成した99Moから、熱分離精製した99mTcを、医薬品に標識化6)することに成功しました(平成23年8月18日発表 http://www.jaea.go.jp/02/press2011/p11081801/index.html)。

今回さらに、その純度が放射性医薬品基準7)をクリアしていることを確認するとともに、富士フイルムRIファーマ株式会社の協力を得て、下図に示す骨診断用医薬品を用いたマウス体内分布画像(SPECT)8) が、既存の99mTc製品と同等であることを明らかにしました。これは、加速器中性子を用いた新方式により、既存の製品と同等の品質を有する99mTcを供給できることを意味しています。

図1

マウス生体内分布画像

今後は、99Moからの99mTc分離抽出・精製条件の最適化を図るとともに、実用化へ向けて分離精製装置の開発を進めていく計画です。将来的には、現在、原子力機構の材料試験炉JMTR 9)で検討されているウランを用いない放射化法による99Mo製造を補完し、我が国の99Moのより安定的な供給に資することが期待されます。

参考部門・拠点: 原子力エネルギー基盤連携センター

戻る