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第12回 原子力機構報告会
「原子力の未来 ―原子力機構の挑戦―」

座談会 原子力の未来は何色か―原子力機構の挑戦― (テキスト版)

座談会
原子力の未来は何色か―原子力機構の挑戦―

○総合司会(雲野) さて、後半は「原子力の未来は何色か―原子力機構の挑戦―」をテーマに、座談会を行います。モデレーター、パネリストの皆様は、どうぞ御登壇をお願いいたします。(拍手)

それでは、本日大変にお忙しい中、本座談会のモデレーター及びパネリストをお引き受けくださいましたゲストのお二方を御紹介させていただきたいと存じます。

モデレーターは、ノンフィクション作家で獨協大学経済学部特任教授でいらっしゃいます山根一眞様でございます。(拍手)

そしてパネリストは、読売新聞東京本社論説委員でいらっしゃいます、井川陽次郎様でございます。(拍手)

また、日本原子力研究開発機構からのパネリストは、原子力科学研究部門副部門長の岡嶋成晃。(拍手)

同じく原子力科学研究部門J-PARCセンター長、齊藤直人の2名でございます。(拍手)

それでは、山根様、どうぞよろしくお願いいたします。

○山根教授 皆さんこんにちは。すごい会だなと思って参加させていただきましたけれども、私がこういう原子力関係のこういう会で何かお話をするとか、やってくるというのは初めてのことだと思います。

皆さんは原子力関係の方は御承知と思いますけれども、井川さんにはこの辺を伺ってみたいところなのですけれども、ジャーナリストとして原子力を取り組むと、何となく世間から白い目で見られる―見られないですか、というようなこともずっと長いことありましたけれども、もう3.11以降は逆にかえって非常に堂々とこういうことを語ることができる時代が来ていると思いますし、しかもこれから先、非常に私たちにとっては1Fの最終的な処理まで、これは人類が取り組んだことのない大きなプロジェクトだと私は思っていますし、人類の課題だと思っております。そういう意味では、きちんとした知識や、あるいは意識を持たなければいけないという思いで、そういうことでこの数年比較的原子力関係の取材も活発に私は続けているわけなのですけれども、きょうのこのお話がありましたので、先週ですけれども、J-PARCをお尋ねしまして、いろいろと施設を見せていただいたり、研究者のお話も伺ってまいりました。

齊藤センター長、たしか当日は、今ドイツから帰ってきましたという形で、本当に御迷惑をかけましたけれども、どうも時間がお話を伺って全部で見せていただいたのが19時間。お目にかかった方の数が20人以上の方に伺いまして、ふらふらになりましたけれども、逆にかえって非常に元気が出ました。

きょうはいわば原子力機構の成果発表と言っていいのでしょうか、現状報告会ということでしたので、私も聞かせていただきましたけれども、きょうは原子力関係の方が比較的多いとは伺っていますけれども、こういう広く開かれた銀座のこういうところでやるわけですから、そういう意味ではわかりやすく広く伝える課題があると思いますが、正直言って難しくてよくわからなかったですね。ともかくぎっちり詰まっていて、きょうの成果発表だけで、多分1週間ぐらいかけてゆっくりとかみ砕いてお話ししていただければよかったなと思っているのですけれども、きょうのテーマ、このセッションのテーマは、「原子力の未来は何色か」ということなのです。

最後に何色かを皆さんにお伺いしようと思っておりますけれども、その前にきょう発表された、全部とはいかない、個別報告が4つありました。それぞれについて質問された方もいますし、質問が出なかった場合もあります。どうして質問が出なかったのかなと思うと、発表者の方の余りにも聞いたことないぐらいの早口で物すごい情報量をだーっとお話しされるので、ちょっとついていけなかった、私はそうなのですけれども、かなと思うので、少し丹念に質問などもありますので、皆さんにお伺いできれば。あるいは井川さんのジャーナリストとしての御意見も伺いたいというところから始めさせていただくことにします。これは実は当初はそう思っていなかったのですけれども、そういうふうにしようということにしました。

こういうプレゼンテーション、いずれもそうなのですけれども、皆さんこのパワーポイントも非常に詳しく書いてありまして、追いつくのが大変ですけれども、基礎研究のほうでいくと12ページからですかね、「ふくしまの復興に向けた取組」、田中さんのお話がありました。いろいろと、多分一般には余り知られていない、これほどの取り組みがされているのかということ、しかもそれは非常に研究ベースのものも含めて進んでいることがよく理解できたと思いますし、とにかく頑張ってもらいたいということしかないのですけれども、例えば齊藤さんに伺いたいのですが、廃炉に向けた研究開発例、18ページに、放射線イメージング画像の中で、これは実は皆さんの資料、私もそうですけれどもモノクロなので、これはカラーでないと意味がないところがありますけれども、こういうガンマ線センサーを使ってそういう放射線の分布が見えるような、こういうカメラというか何というか、こういうものがかなりたくさんいろいろなものが開発されて実用化されているだろうと思うのですけれども、同時にそれが被ばくすることによって性能が落ちるということもあると思うのですが、その辺は機構としてはどうなのでしょうか。取り組みが。全体でもいいです。

○齊藤センター長 この技術自身は、最近大分実用化されているというところなのですけれども、いろんなテクニックがありますが、ガンマ線の方向がわかるというテクニックというのは、過去10年ぐらい大分待ちわびているところだと思うのです。その技術を、本来は例えば宇宙物理というようなところに展開するというところが、開発の最初のモチベーションだったグループも、福島以降、3.11以降こういう領域に参入して大いに研究を盛り上げているというところで、恐らくその中心になっているのが、機構がそういう力を集めてやっているというところになっているのだと思います。

僕は必ずしも100%機構の人間ではないので間違ったことを言っているかもしれませんから、岡嶋さん、間違っていたら補足していただければ助かりますので。

○山根教授 どうぞ、岡嶋さん。

○岡嶋副部門長 では若干だけですけれども、今これはそういう意味でコンプトンカメラと呼ばれているものを搭載しようとしているのですけれども、何せ局所的、非常に条件がひどいところと言っていいと思うのです。悪条件のところ。人が入れない。だから今だって一番の可能性は、多分ドローンとかロボットで、特にドローンとかに期待しているところだと思うので、そうすると乗せないといけないということになるのと、小型化というのがどうしても出てきます。小型化と、その精度との兼ね合いが出てくると思いますので、その辺が開発の一番大きなポイントになって、これが入ることによるとかなり大きく中の様子がわかってくるという大きなメリットがあると思っていますので、その辺のところではこれ。

それからあと、被ばく低減という点ですね。結局被ばく量がそこでどれだけいればわかるということになりますから、そういう点で大きなポイントになるかと思います。

○山根教授 こういう例えば放射線あるいは太陽のフレアにさらされても壊れないようなカメラとかというのは、宇宙開発でも非常に求められている技術で、非常に大変なところなのですけれども、井川さん、1Fのためにこういうものはすごく開発が進んでいると思うのですけれども、こういうことが進むことによって日本の宇宙開発、宇宙の分野の基礎力も上がっていくということにつながりますよね、これは。

○井川論説委員 宇宙だとこんなにミクロなところを精密に見るというよりも、遠くを広く見るというほうが多いので、恐らく共通する部分もあるのだと思いますが、信号処理であるとかこういった見たものを画像処理するだとかいうところは役に立つのだろうけれども。

ただしこれ、今福島第一の中でこのカメラが大分よくなってきて、それでも大体これまでも、ことしいろんな機材を壊れた原子炉の中に入れて観測、中を見るというのが随分進みまして、これを見るといろんなことが、やはり中が見られるということはすごく今後の作業というか、それから事故で一体何が起きたのだというのを解明するのに非常に役立っていて、その意味ではことし例えば2号機でカメラが入って、例えば炉心の、原子炉の一番下のもっと放射線が強いんだろうなというところに行くと、そこが実は余り周囲よりも弱くて、しかもかなりの部品が残っているのが直に見られたりとか、いろんなそこの事故の経過がわかるようになってきていますので、これがますます発展していくと今後の事故の廃炉作業というものが安全かつ正確に効率よく進められるようになるのだなということで、研究開発を進めてもらいたいなとは思います。

○山根教授 これは例えば作業をされる方たちにとっても、周りを見回してどこに線量が高いかということは非常に重要だと思うのですよ。例えば人が近づけるようなところでも、やはり線量は見ることができると大事だと思うのですけれども、不思議なのですけれども、齊藤さんにお伺いするのは、線量眼鏡ってどうしてないのですか。眼鏡かけるとちゃんと線量高いところがわかると。

○齊藤センター長 確かにそういうことがリアルタイムでわかるようになるというのはとても便利だと思います。確かにそれは非常にニーズとしてはあると考えられますけれども、小型化が端的に難しいということだと思うのです。

○山根教授 努力すれば2年ぐらいでできるでしょう。

○齊藤センター長 そうですね。

○山根教授 1年。

○井川論説委員 それはある。たしか同じ文部科学省の下にJAXAという組織がありまして、そこが直後から開発されて、つくられていると思います。ただ、それが実際目に見える、放射線が強いところまでそれをかぶっていくと被ばくするので、なかなかそこまでいかない。むしろ安全を確かめてそこに作業に行く人を計画してやるので、眼鏡かけてもう放射線がビービー来てますねというところに行っちゃうと被ばくしちゃっているので、もう。

○山根教授 それは相当高い線量のところの話で、例えばここからあそこの壁を見るぐらいなところで、例えば今どの辺の壁が汚染されているかとこう見て、こうだなとなれば、その壁の除染というのは水ではなくてサンドブラストをぶつけるようなことをやりますけれども、そういうときの作業にもすごく効率的だと思うのですよね。

○井川論説委員 もっと精度が上がっていけばもっとおもしろい。

○岡嶋副部門長 多分直接カメラがその方向を見なくて、そういうものセンサーがあって、今だと簡単にバーチャルで眼鏡を見ればそれで見えるという技術はあるわけですから、問題はその組み合わせ方だけではないかと思いますよね。そういう形で、もし必要であればそういうことも開発をしていけばいいのではないかなということだと思うのですが、とりあえず今まだそこまでの段階には行ってないのではないですかね。とにかくまずは入れるのか、近寄れるのか、それすらもやはりはっきりどこまでわかるのかということがまず大事だと。

○山根教授 それは作業の工程としてはそちらでやっていっていただいて、別なチームがこれからの30年か40年かわからない、そういう廃炉に向けていいツールをつくることは、別にほかの組織とも協力しながら機構が。

私ちょっと数年間クモに興味を持って、今も20匹か30匹クモを飼っているのですけれども、皆さん知らないのですけれども、5mmぐらいのこの辺にいるクモでもみんな目を8つ持っているのですよ。こんなでかい目と8セットであらゆる方向を見て、全部機能が違う目を持っているのですよ。なので、クモ眼鏡帽子というのをつくって、作業員の方ヘルメットにぴゅっとやれば、あらゆる方向のあらゆるデータが、しかも眼鏡のディスプレイで見ながら作業できるとかいうのが、できれば7万8,900円ぐらいで売り出してもらえればいいんじゃないかなと思うのですけれども。

○齊藤センター長 先ほどのJAXAの例は僕も不勉強で存じ上げませんでしたけれども、やはりこれは2つの問題があると思うのですね。要するにこれから作業をする場所について、あらかじめ情報を得るということ。あとは、作業中の予測しなかったような出来事に対してどう対処するかという問題。この2つの問題に対処するために、恐らくもっと高感度の眼鏡が必要になるのだろうと思われる。それに向けては、恐らく岡嶋さんがおっしゃったようにまだまだ開発の要素があるかと思いますけれども、1年で7万9,800円……なかなか。でもそういう目標を持って取り組むことは悪くないことだとは思いますけれども。

○山根教授 何でこんな話をしたかというと、これだけたくさんの発表の中で、たった1行書いてあるこれだけのことだけでも、これだけの議論をするテーマがあるということをちょっと考えたのですけれども、例えばその中の同じ20ページの上に、第1回廃炉創造ロボコンというのが入っていまして、これはとてもいい取り組みだなと思ったのですけれども、きょうこれについては詳しいお話がありませんでしたけれども、これはどういうものですか。

○岡嶋副部門長 私、詳しくは存じかねるのですけれども、よくNHKの番組なんかでロボコンというのをやっていますよね。それを今回は廃炉という中で、要するにそういう狭隘なところとかいろいろなところで、ある課題を与えて、そういう条件の、その中でいろんなアイデアを出した、これはたしか大学生がやったのでしたっけね。高専でしたっけね。

○山根教授 御存じの方。これ、いいお話なので御説明していただけますか。よかったらどうぞ。早口じゃなくて、ゆっくりとお話をいただければ。

○野田理事 御質問いただきありがとうございます。福島の担当をやっています野田と言います。

この廃炉ロボコンでございますけれども、楢葉の遠隔技術センターの階段を使いまして、全国の高専13校、15チームが参加をして、いわゆる実際の廃炉の現場作業、したがって環境でのロボット技術を競うというものです。通常のロボコンですと普通に見える状態の中でロボットを使っていろいろな競技をやるのですけれども、この場合は実際の廃炉ですので、生徒が煙幕の中に入ってロボットについているカメラを見た形でロボットを操作して階段を上っていくという実際の現場を模擬した形での技術を競うという、そういった取り組みをしてございます。この写真にございます階段を上まで上れるかということで競ったのですけれども、昨年は残念ながら1校も、1チームも上までは行かなかったという結果でございました。

○山根教授 それは大手メーカーさんのやつも途中でひっかかったなんかしたり動かなくなったりしているという過酷なところですから。でもなかなかなアイデアだなというのはありましたか。

○野田理事 実際に遠隔技術を使おうとする現場の中で、どんなに厳しい状況かというのを高専生が学ぶという意味では非常にいいと思います。実際皆さんは学校の階段で当然実験してやってきて、その場合はうまくいくのですが、現場ですと鉄の階段だったりとか、グレーチングがあったりとかという実際の状況をここで学ぶことができるというメリットがあるかと思います。

○山根教授 これで鍛えてロボット開発力がつくと、そういう人たちはすばらしい力を身につけることにつながっていくでしょうね。

○野田理事 はい、そうだと思います。

○山根教授 井川さん、いいですね、これ。どうですか。廃炉創造ロボコン。

○井川論説委員 ロボットは今メーカーさんもいろいろ開発されていて、ただ、高専というのは、若手のエンジニアを育てるという意味で非常におもしろいと思って、山根先生、さすがここに目をつけられたのだと思うのですけれども、一番心配しているのは、先ほど聞いたらびっくりしたのですけれども、若手の、今原子力研究機構は人事採用の時期らしいのですけれども、福島でこういう技術研究開発をやってもらう方15人応募しているのだけれども5人ぐらいしか来ないということで、こういう研究の魅力というか、おもしろさ、意義とかが伝わってないという意味では、そこはもう少し皆さん汗をかいたほうがいいのではないかという感じはしなくはないです。

○山根教授 技術開発とか挑戦というのは、課題が難しかったり、困難であればあるほど、達成すれば、実はエンジニアにとってはつらいけれども楽しいしやりがいがあるのですよね。だからここに廃炉ロボコンではなくて「廃炉創造ロボコン」という名前がついている。この創造、齊藤さんは、これはすごいいい名前ですね。齊藤さんがつけたのではないのですか。

○齊藤センター長 違います。

○山根教授 違うのですか。

○齊藤センター長 何ページのどの創造かなと思って今ちょっと探したところで、申しわけないですけれども。

○山根教授 20ページです。上のほうです。ほんの小さくしか書いてないのです。

○齊藤センター長 いい創造だと思います。今、井川さんのほうからもお話がありましたけれども、確かにその中から新しい技術が出てくるということを期待するという側面もあるかもしれませんけれども、むしろ若い世代も含めてこの問題にチャレンジしていくということの中で、自分たちのエキスパティーズを磨いていくということが、若い世代からできるということは非常に重要だと思います。

そういった意味で、3.11以降、これは機構の人間に限らず、人類共通の課題に対して、自分たちが持っているエキスパティーズの周辺で貢献できることということを考えていく必要が大いにあるのだと思っていまして、J-PARCは直接に原子力という問題に正面からアタックしている施設ではないですけれども、そもそもJ-PARCがつくられた最初の動機というのは、核変換技術を育てていこうというところだったわけですけれども、それは残念ながら第2期計画というふうに先送りされていますけれども、大強度の加速器の周りでこの人類共通の問題に貢献できるという文脈を、その核変換の周りだけではなくて、あらゆる角度からサーチしていきたいというのが、今の我々のJ-PARCのあり方だと思っています。

○山根教授 福島第一の正面から少し行ったところにエイブルという会社がありまして、福島をずっと支えてきた会社なのですが、かつてはどんな取り組みをしているかというニュースが出ることはほとんどなかったのですけれども、そこが廃炉ロボット、廃炉というよりも福島の第一の内部の放射線量の高いところを片づけたりつくり直したりする、そういう作業をされてきて、去年すばらしいロボットで作業に成功して、来年はあの高い煙突を全部壊すということも入札されたそうなのですけれども、そこの社長さんのお話で、僕は感銘したのですけれども、きょう大手メーカーの方いらっしゃるとまずいかもしれないけれども、会社が大きいところでロボットをつくろうとすると、かなり慎重にきちんとしたものをつくって、認可問題とか何かよくわかりませんけれども、時間がかかる。彼らは、ともかく作業をするのだから、それに特化して、それを考えて、これだといったら3カ月でつくってしまうという。私たちはそういうふうにしてやっていますとおっしゃっていたのですよね。

そういうところで僕も現場を去年見せていただいて、本当にすごい、物すごいたくさんのロボットがもうできているのですよ。大手メーカーのも見せていただきましたし、大学で開発しているのも随分見せていただいたのですけれども、現場に近いふつふつとしたロボットというのがこういうところにあったのだと思ったのですね。そうすると、そういうところの中小のメーカーと子供たちというか学生さんたちが一緒になってやったらば、すばらしいものがどんどんできてくるのではないかと思うのですよね。

井川さんはずっと3.11以降取材されてきたと思いますけれども、そういう中で廃炉に向けて、あるいはあそこの後始末に向けて、何が足りないなと思うことはありましたか。

○井川論説委員 技術的には全てが足りない。本来時間をかけてやれば、もう少し合理的にできる部分もあるのですけれども、福島の方はとっとと片づけろ、早く片づけてほしいという強い要望がございますので、なるべく早く片づけたい。そのためには、いろんな技術が足りないということがありますので、一方で、あそこの現場で大分よくなって、9割以上のところは普通に歩けるのですけれども、原子炉の周りとかは放射線も強いし、それから環境も余りよくない。夏なんかは防護服なんかを着ると熱中症でよく倒れる方が出る。

そういう意味で、先生が今何度もおっしゃっているロボットとか自動遠隔の技術は多分日本が本来なら一番得意な分野なので、先生はもう何度もいろんなところで御取材されていると思いますけれども、それが福島で余り目立ってなくて、特に事故直後、海外の怪しげな技術もいっぱい来たりして、日本どうしたのだという感じで、オールジャパンでやらなければいけない。そのためには、こちらにおられる原子力研究機構の方もそうだし、政府のほうもそうだし、メーカーの方もそうだし、本当にまだまだ協力してやるべきことはいっぱいあるなと思います。

○山根教授 岡嶋さん、今、井川さんから「海外の怪しい技術」という言葉が出ましてですね。これは重要なキーワードで、変な話ですけれども、私あの災害の直後に現場にずっと取材に行っていたので線量計を手に入れたいと思ったのですが、全く手に入らなくて、インターネットで、eBayで売りに出ていたので、やっと手に入ったと申し込んだら、物すごいまがい品がわざわざアメリカから届いたのです。日本人をばかにするなという感じだったのですけれども、岡嶋さんのところにも、海外からも、いろいろな、こういう技術があります、あるいはこういう研究がありますということが物すごくふえて、その中に怪しいものも多分あるのではないかなという気がしますが。

○岡嶋副部門長 正直なところ、事故直後はいっぱい、海外どころか国内からも怪しげな技術の売り込みがあったのは事実です。私記憶しています。

その中で、例えば我々も含めて特に基礎基盤研究をやっている連中は、技術とは一体何かとか、そういうものをはっきり見極めて、これは怪しげかなとか、どうだろうというその判断能力も大事だと思うのです。そのためにも、そういう基盤的なところをきっちり支えるだけの能力がなかったら判断もできないわけですから、そういう点では知識の広がりとか深さというのがないと、いかに怪しげか、使いものになるかということだと思います。その辺が、これからも下支えしていく部分の1つの重要なポイントだと私は思っています。

○山根教授 今後も。日本原子力機構、怪しい技術フィルタリング委員会というのを設置しなくてはいけない。物すごいお金が動いているということももちろんあるだろうと思うのですけれども。そういう中でさっきのロボコンみたいな、ああいうものは大変すばらしいと思います。何かそこだけで終わってしまいそうな感じがしてしまうのですけれども、少し先のほうに。

藤田奈津子さんいらっしゃいますか。先ほど地層の年代測定の話をしていただいた。ちょっとこちらに来ていただけますか。

さっき男性の発表者の方よりももっと大きな声で、しかも高速で発表されて、私ほとんど理解ができなかったのです。そもそも年代測定にいろんな種類があって、どこからどこまでが何年ぐらいが測定できるかというので、今例えば気候変動なんかでも、地球の過去の気候がどうなっているかというようなときに、年代測定は非常に大事になっています。年縞って御存じですか。年の縞って書くのですけれども、まだほとんど知られてないのですが、福井県の水月湖、これは原発がいっぱいあるところで、あそこに実は5万年以上の土が連続してあるという世界で唯一の場所で、そこの炭素寿命をはかることによって、この縞々が世界の炭素寿命の年代測定の標準になったのです。すごいことで。今それの博物館もつくっているのですよ。私もそれの実はお手伝いをしているものですから、そういう意味で年代測定というのは非常に。それで何がわかるかというと、過去の気候変動がこうだったということから、今の温暖化問題を理解できるとなりますよね。

そういうところにもつながる年代測定というのは今最も求められている大事な技術ですけれども、そこで新しいお仕事をされたのですよね。

○藤田研究員 はい、そうです。

○山根教授 なぜ例えば廃棄物の地中処分のときに、地層のあるいは地殻の、地球の下の年代測定が必要なのでしょうか。簡単でいいです、お話ししていただくだけでいいので。その部分がちょっと。

○藤田研究員 時間が短くてはしょりましたので。

○山根教授 多分飛ばしちゃったのだと思うのです。新幹線でしたので。どうぞ。

○藤田研究員 P) 実際に例えば地層処分をする場所がここだとしますと、この処分施設が例えば地震活動が頻繁に起こっているところに埋めたくないとか、あとは、火山の近くに埋めたくないとか、いろいろ希望があると思うのですけれども、その場所を決める際に、例えば過去の断層活動とかは定期的に行われていますので、例えば過去から1万年ごとに毎回地震活動があるとか断層活動があるということがわかっていれば、例えば1万年から100万年ごとに1回ずつ起こっているというような年代幅が広がってしまうと精度が悪くなってしまって、どこが一体処分施設に適した土地なのかというのがわからなくなってしまうのですけれども、我々のように年代測定を精度よく行うようにできる技術をつくりますと、例えば50年ごとに起こっているとか、その何十年みたいな単位から、あとは何百年、何百万年という幅広い年代測定にあると。

P) こちらが技術開発の対象年代にしている幅なのですけれども、それぞれの核種によって年代幅が異なりますので、それらを整合させることによって、その場所場所の年代を知りたいという。

○山根教授 これ、全部やるのですか。

○藤田研究員 全部行っています。実際にこちらに実用化済みと書いているものは、実際測定ができまして。

○山根教授 それを全部すり合わせて固めてというか、統合して最も適切なデータを得ようと。

○藤田研究員 はい、そうです。というのを、うちの土岐地球年代学研究所だけで行っています。

○山根教授 私これは今までやってきたもので、これがだめだから新しいものをつくりましたとおっしゃりたかったのかなと思ったのですけれども。

○藤田研究員 違います。これをさらに進化させるために、例えば私が使っているこの加速器ですと、炭素、ベリリウム、アルミニウムとかいろいろな核種が測定できるのですけれども、小型化のものでもいろいろなところでそういう技術が普及できないかというので、技術開発を行っています。

○山根教授 原発の再稼働のときに活断層論議が物すごく行われて、ここは何万年前に動いた、何百万年に1回動いた、動かないという、つまり動いたか動かないかということをすごく論議されたけれども、そのときにはきちんとしたこういう本当の指標となるデータなしに議論せざるを得なかったわけですよね。それができるようになる。大変なことですよ、これ。

○藤田研究員 そうですね。

○山根教授 私、全国いろいろ行きますと、このあたりって絶対地震ないんだよとか、そういうことをおっしゃる地域ってあるのですよね。日本列島全部いつも動いているかと思うと。そういう意味でいくと、一番ある意味では安全な、原子力の施設にとっても安全な場所が見つけられることになりますけれども、それを超えて、つまり日本がどういう地震、過去に災害を受けてきたとか、これから可能性があるだろうかという地質学とか地震学とか、そういう地球科学にも、これは貢献しますよね。

○藤田研究員 はい。

○山根教授 「はい」とおっしゃいましたよ。すごい。ということは、齊藤さん、原子力機構から、ほかから引っこ抜かれる可能性がありますので、気をつけてください。とてもいい仕事です。世界でこういうことをされているところはありますか。

○藤田研究員 このAMSの測定ができる加速器があるところというのは、日本にも十数個ありますので、そういうところがコミュニティをつくってみんなで協力をしてやっているような研究会もありますので、そういったところでみんなで協力してやっています。

○山根教授 日本は最も進んでいますか。

○藤田研究員 そういうわけではないと思います。

○山根教授 かなりいいレベルにある。

○藤田研究員 そうですね。

○山根教授 ありがとうございました。御活躍を御期待しております。やっとわかりました。ありがとうございました。

井川さん、原子力と言うと何となく原子力発電所と一般の人たちはそればかりをイメージしますけれども、極めて大きな科学の世界、しかもそれがフロンティアだということを今彼女の研究なんかも、原子力のためにああいう研究をしたけれども、それは実はほかの地球科学と物すごい表裏一体のものですよね。そういう理解はなかなか伝えられないのですよね。

○井川論説委員 どうしても原子力というと、原子力発電と、それに反対か賛成かという議論だけで終始してしまうし、これは私どもも反省しなきゃいけないのだけれども、メディアもそっちばかり取り上げるということがありまして。

○山根教授 避けてきたでしょう、そういうことを報道するのを、新聞も。

○井川論説委員 いや、先生がおっしゃるような幅広い分野のほうが、私個人も大事だと思っているのですけれども、生活に直接影響するにはまだ遠いというところもこれありまして、研究者の方もなかなか、先生も超特急で難しかったとおっしゃったように、発信がなかなかまだなれてないという側面もあるのかもしれないし、私のほうもそれを翻訳してお伝えする技術がまだまだ足りないのか、努力が足りないということもあるのかもしれません。おっしゃるように、ただ幅広くて原子力というか、核エネルギーというのですかね、小さな世界のそのエネルギーを使うあるいはその原理を解明してそれをうまく活用するという分野は、かなりまだ幅広い可能性があると思うので、皆さんにぜひ頑張っていただいて、原子力発電だけではなくていろいろな広がりがあるのだということを、そういうことを広めることによって、原子力研究全体の活性化もするでしょうから、ぜひ頑張っていただきたいなと思う次第です。

○山根教授 岡嶋さん、ぜひ頑張っていただきたいと井川さんはおっしゃっているのですけれども、先日私お伺いして、2日間にわたって拝見しましたけれども、それはごく一部なのだろうなということがわかりました。そこにこんなたくさんのテーマの広い、幅の広い研究をされていると、一体お金は足りるのだろうかとか、人は足りるのだろうかとか、設備のちょっと古くなったのは大丈夫なのだろうかと、そういうことをすごく感じたのです。

そういう中で、先ほど何か研究テーマを絞って落としていくのだという、そういうお話もありましたけれども、全体をマネジメントしている立場としては、非常に悩むところですよね。何を残して何を……これはセンター長のほうにも伺いたいところですけれども、どんなふうに今頭の中でイメージしていらっしゃるのでしょうか。では岡嶋さんから。

○岡嶋副部門長 一番頭の痛い問題なのですよね、正直なところ。やりたいものはたくさんあって、でもなかなか先立つものがないというところで。ただ、最近それでいてなおかつ、特にきょう初めのほうで紹介があったと思いますが、基礎基盤研究というのはプロジェクト的なものからすると一番下のところにあって、結局基礎基盤研究というのは何かというと、大きな底を支える部分で、何とか節約した結果のところで残ってくるものの場合もあるし、ベースとして残さないといけないものもあると思っているのですけれども、そういう点の力の配分というのは結局やはりこれから先を考えて、何が必要かということで選ぶしかないというのが現実だと思います。

ただ、人というのだけは、これは財産として一番大きいもので、装置は使うのにしてもですけれども、結局いつも新しいものにかえていくのか、あるいはそれでなかったら老朽化でどこまで使えるのかということも限度があるかと思うのですが、人だけは発想だけうまくやっていただければどんどんどんどん新しいもので新しい可能性を創出できる可能性がありますので、そこが一番大事だと思います。

○山根教授 人は足りないですか、足りていますか。

○岡嶋副部門長 人は足りないですよ。足りない中で何とか集める工夫はやっていますけれども。

○山根教授 お金は。

○岡嶋副部門長 お金も足りないですね。ただ、足りない、足りないと言っていても仕方がないので。

○山根教授 外から見ると、原子力機構というのは原子力だから相当お金が入っているだろうとみんな思っていると思うのですけれども、齊藤センター長、私お伺いしてもっとビッカビカにお金が入っているかと思ったのですけれども、何か随分……。

○齊藤センター長 僕は実は原子力機構全体の予算を知らなくて、J-PARCセンターの使っている予算というのは把握しているわけですけれども、それにしましてもこれは相当な金額であると感じています。やりたいことが今の金額や今の持っている人材、そういうリソースを超えているのは当然のことだと思っておりまして、その中からやはり現実的な重要性とか、どこまでその技術がマチュアになっているか、プロジェクトがマチュアになっているか、そういうことを見定めて、本当にこれはやり切れるものなのかというところを判断しつつ、実現性をきちんと判断してやっていく。

これは例えば、技術設計報告書というのを一応J-PARCセンターの中で新しいプロジェクトをやるときにはきちんと書くようにということで進めています。これはほかのところも皆さん同じだと思うのですけれども、やはりそのレベルまできちんと書けること、そこにどれだけ人を手当てできるかというちゃんとしたシナリオが持てること。あとはファンディングシナリオがどういうふうにつくれるかというところ、そこまで含めてやはり実現性をきちんと高めるというところをやっていくと、実は最初リソースの3倍ぐらいあったやりたいことというのはだんだんだんだんちゃんと精査していくことができます。その精査していく中で、自分たちの力だけで判断するのではなくて、現場の力もちゃんと、現場からも意見を聞き、かつ世界的にもどういう位置づけなのかということです。海外の研究者も呼んで議論するということを常にやる中で、常にいいプロジェクトをきちんと残しておいて、お金がつけばいつでもこれはできるというところまでやっていくということ。

○山根教授 岡嶋さん、何か時々お話、食事なんかしながらでも、こういう分野をもうちょっと力を入れたいねと、そうするとどんな人がいるかな、こういう人をちょっと来てもらえないかなとか、そんな話はよくされるのですか。

○岡嶋副部門長 できるだけそういう形のアンテナは張って、やはりそういう優秀な人材はとにかく引っ張ってきたいということはやっていますね。

私最後にちょっと一言だけ、最後というか今のことで言いたかったのですけれども、原子力機構って、結局我が国唯一の原子力総合研究開発機関。じゃあ原子力って何というと、結局核燃料物質を扱えるとか放射性物質を扱えるとか。これを扱わないと絶対研究は成り立たないものだと思っているので、そういうやはり扱える施設が一番の売りだと思うのです。もちろん原子炉もありますし、いろんなものがあると思う。J-PARCとかという加速器もですが。

きょうのお話でもありましたが、その老朽化という話があって、スクラップ。もちろんそういう点で、いわば家計簿の中で今まず切り詰めることをやって、切り詰めた分何に充てようかという話のところに、ちょうど相当しているかと思うのですが、ただ節約ばかりやっていると、だんだんだんだんやはり、さっきの話で人材のモチベーションも下がってしまう部分もあります。だから、その辺のところをどうあんばいするかということがあって、私はスクラップは片づけるのは片づけるでいいのだけれども、片づけた後には一体何がありますかというのをそろそろ見せないと、これから先の人材がやはり希望を持ってやっていけないんじゃないかなという気がしています。だから、何かそういうテーマみたいなものもあってやっていくことも、1つのさっき言いました人材を確保するためにも必要ではないかなという。

○山根教授 そうする、99番のアインスタイニウムをアメリカからやっと手に入れて、それの原子核の挙動というのを世界でもほとんど調べられたことのないことを解明しようと。これは物すごいわくわくする話で、私これを始めるのですよというので、ちょっとつい茨城方面に引っ張られていったということがあるのですが、オルランディ・リカルドさん、イタリアの研究者がいらっしゃる。ちょっとこちらへどうぞ。

オルランディさんのスピーチは、日本人の方と比べてとてもわかりやすかったのです。それ、ちょっと逆なのですよね。やはり、多分インターナショナルな立場でお仕事をされていると、上手なプレゼンテーションをしなければ仕事がなかなかうまくいかないとか、伝えられないという、そういうこともあるのですかね。わかりやすい説明をされたのは。

○オルランディ研究副主幹 とても大事ですね。同僚と物理の話をするときも。

○山根教授 きょうのほかの日本人の皆さんの研究の発表をごらんになって、お聞きになって、どう思いましたかというのはちょっと伺わないことにしますけれども、例えばすごく大事だと思うのです。先ほど岡嶋さんがおっしゃった、どんなプロジェクトを選んでいくかとか、どういうものを、例えば国の、きょうは国会議員の先生方もいらっしゃいますけれども、原子力機構にとって、あるいはもっと物質や原子力の大きな時代をつくるために必要だというときに、プレゼンテーション上手じゃなきゃいけないと思うのですよ。なので、彼をプレゼンテーション技術部門の顧問か何かに迎えて、わかりやすい伝え方という努力を僕はしていただきたいなと。きょうの発表全て、頭から終わりまでぎちぎちに詰め込み過ぎて、もう消化不良でしたけれども。すいません、それは私の意見なのですが。

99番、アインスタイニウム、この前見せていただいてびっくりしました。といっても見えませんよ。見えないものに1,000万ぐらいお金かけたのですね。買ったのですよね。とても1,000万で買えるものじゃないそうですけれども、金庫みたいなところをカチャッとあけて、鉛の板の中、これですと言うと、おっと思って。缶の中に入っているのですけれども、中は見せませんと言われました。

その中でも、見ても何も見えないですね。

○オルランディ研究副主幹 そうですね。見えない。やはりなくなる。1年後、もうなくなってしまいます。

○山根教授 あれは放射性物質ですから、金庫に入れておくといつの間にかなくなっちゃうのですね。

○オルランディ研究副主幹 物を目で見えない。しかしガンマ線とアルファパーティクルを観測したら、どこか、あとどのぐらいまだ残っているか、安全に私たちはできます。

○山根教授 もし何か準備がうまくいかなくて、実験がおくれて来年の秋になりましたとかといったら、それはまずいですよね。

○オルランディ研究副主幹 そうですね。東海タンデムの……。

○山根教授 どんどん減っていくわけでしょう。

○オルランディ研究副主幹 でも予想は、12月から始まる可能性が高いと思います。だんだん電圧が来年の初めまでふえていったら。

○山根教授 大丈夫。

○オルランディ研究副主幹 でも12月からいろいろな実験。やはり私の発表は、1つの実験しか説明しませんでしたけれども、いろいろな実験が予定されていますので、12月からもう始まる希望を持っています。

○山根教授 中性子を当てるのですよね。

○オルランディ研究副主幹 ビームは酸素か……。

○山根教授 ここからぶつけて出てくる中性子を当てて。

○オルランディ研究副主幹 中性子と陽子を移行して、新しい原子核をつくりたいと思います。

○山根教授 いつですか、実験開始は、予定は。いつ照射しますか。

○オルランディ研究副主幹 初めは12月でも、実験の長さはもう2カ月ぐらい、多分3カ月、4カ月になりそうと思います。標的試料がとても小さくて、普通は1週間の運転、タンデム加速器の運転で足りるのですけれども、今回は0.1µgしか使えないので、やはり1カ月間ぐらい必要だと思います。

○山根教授 今刻々と、少しずつその日が近づいているわけじゃないですか。実験の始まる日が近づいているわけですよね。

○オルランディ研究副主幹 はい。

○山根教授 毎日どきどきして寝られないとかいう感じじゃないですか。

○オルランディ研究副主幹 そうでもないですけれども。

○山根教授 よく寝てますか、すいませんでした。

○オルランディ研究副主幹 この実験の、今までやはり開発が同僚の皆さんがグループで開発できましたので、その装置も私たちはよく知っています。使えるので、ビームが出たら実験が……。

○山根教授 間違いなく世界が注目していますよね、これは。非常に関心高く。日本がこういうことをすると。

○オルランディ研究副主幹 そうですね。アインスタイニウムのニュースはとても人気がありそうです。米国のオークリッジ研究所の話は最近の話かもしれませんが、2年、3年後もう一度アインスタイニウムを頑張って分離しましょうかという話があって、やはりアメリカも大学、別のグループで……。

○山根教授 またやりましょうと。

○オルランディ研究副主幹 の可能性がありそうですけれども。

○山根教授 ちょっとお金を早く確保しておかないとまずいかもしれませんね。わかりました。こういうわくわくすることがあるというのは、若い科学者たちにとっては非常にいいですよね。こういうことがあると、わくわくする、どきどきするような。こういうことがないと、研究も楽しみがないし、前向きになると思うのですけれども。御成功をお祈りしていますので。皆さんチームでなさいますけれども、こういうすばらしい方で、よろしく頑張ってください。どうもありがとうございました。

○オルランディ研究副主幹 わかりました。ありがとうございます。

○山根教授 センター長、アインスタイニウムのような、はっきり言うとすぐ何かに役に立つわけではない。こういうことがあるからいいのですよね、サイエンスというのは。と思うのですけれども。

○齊藤センター長 それだけを目的に実験をすると言うといつも怒られるのですけれども、特に素粒子とか原子核という研究をしていると、すぐに役に立たないせいで、うちもよく母親から、おまえもそろそろ世の中に役に立つことをやったらどうだとよく言われるわけですけれども、ようやく少しはJ-PARCをもっと役に立つ形でやっていければと思っているところであります。

それはちょっと余談としまして、わからないことをわかる形にしていくというのは、やはり人類共通の好奇心に基づく、これも創造性の一部だと思うのですけれども、そういうものとしてこの原子核の構造というのは、実は非常にシンプルな基本的なブロックからできているにもかかわらず、非常に多様な側面を持っているというところが、これは恐らく研究者の心をつかんで離さない。それがまた新しい驚きを生む。

端的なのは、先日理研のほうでも見つかったというか、理研が命名権を日本に持ち込むことができたニホニウム。森田先生のお仕事ですけれども、ああいうものに代表されるような新しい元素ができるというようなところにつながっていく。そういう技術を磨く中で、必ずしも日常の役にすぐに立つわけではないけれども、学術的なフロントを前に進め、その中で技術も獲得し、それによってひょっとしたら将来役に立つような技術ができ上ってくるかもしれないという種類のものではないかなと思っています。

○山根教授 もう時間が足りなくてそろそろ終わりに近づいてしまっているのですけれども、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減の実現。これは核種変換とかあるいは消滅処理なんてかつて言われたものの技術の1つだと思うのですけれども、竹内さんにお伺いしたいのですが、ちょっと時間がないので、私その核種変換というのは、昔オメガ計画というのがあって非常に期待をしたのですけれども、国の予算がとまったと聞いて非常にがっかりしていました。ところが実は地道なきちんとした研究が行われていて、その現場を見ることができて、実験装置を見せていただいたら、その実験装置に助川電気工業というこんな大きなプレートがぼんと張ってあったので、一体この会社はどういう会社だろうと思って、実は帰りに強引に寄らせていただいたのです。きょう社長が見えているのですよ。いらっしゃいますか、社長。どうぞ。ちょっと、時間がないのですけれども、こちらへ来ていただけますか。

こういう原子力のさまざまな設備や実験装置を支えている、こういう企業がほとんど私たち知る機会がないのですね。なぜ知る機会がないかと思って初めてわかったのですけれども、熱電対ですね、温度をはかる。福島第一がやっと非常電源がつながって、原子炉の状態がわかったのは、温度だけだった。それは私たちの熱電対ですとおっしゃったので、こんなすごいことはないと思ったのですよね。どうして社会に伝わらないかというと、工場を見せてください、写真を撮らせてくださいと言ったら、全てだめなのです。お客さんの申し出ですのでと言って、社員の方も見てはいけないと、黒のパーティションで囲まれた四角い黒いコーナーがあって、そこで、あれは何をつくっているのですか。言えないのですね。

○小瀧社長 ええ、ちょっとあれは。申しわけございません。

○山根教授 ちょっとすき間から見ていいですか、それもだめで、私今回のこちらの取材にお訪ねして、全部外のドアだけ撮ってきたという感じなのですが、どこにも負けない技術ですよね。だからなのですよね。

○小瀧社長 そうですね。我々ニッチな市場でオンリーワンといいますか、ナンバーワンを目指しておりますので。ちょっとオンリーワンではないかもしれませんけれども、他に負けないものをつくっていると自負しておりますので。JAEAさんと一緒に、あるいは各企業さんと一緒に今言いました最先端のものに少しでも寄与できますように頑張っていますので。

○山根教授 それがこちらのJ-PARCだけじゃなくて、私の秘書が高浜の原発でも助川電気工業って名前がありましたよと覚えていたのですよね。ということは、相当日本中にシェアを持っているにもかかわらず、一切取材に応じないという珍しい会社ですよね。

○小瀧社長 そういう意味では、基本的な技術は我々のものなのですが、それを活用されているのが皆様、開発機構さん初め皆様ですので、そちらのほうの意匠ですから、ちょっとお見せできないということで。

○山根教授 言えないけれどもおもしろいことをやっている。全て一品料理ですとおっしゃいましたけれども、こういう会社があって、本当に人類がつくったことがないような実験装置を受注してつくられちゃうのですよね。

○小瀧社長 そうですね。私が入社したときには、よく原研さんと動燃さん等と会社に来ていただいて、みんなで額を突き合わせといいますか、これからどのような実験ができるかという可能性を求めていたという、原子力の黎明期の懐かしい思い出もありますので、これから多少いろいろ困難があるでしょうけれども、廃炉に向けて、あるいは新しい原子力の活躍に向けて、少しでも寄与できればと思っていますので、また頑張っていきたいと思っております。

○山根教授 原子力秘密工場という感じなのですけれども、その割には高速道路おりると上にどーんと助川電気工業って大きな看板があるのはびっくりしましたけれども。

○小瀧社長 鉛ビスマスとかいろいろ溶融金属でも頑張っていますので。

○山根教授 多分助川さんのような力のある、表に出ない企業がたくさんいて、そこにもすばらしいエンジニアの皆さんがいらっしゃるのだということが、僕は今回原子力機構さんの茨城取材で実は非常に実感として得ることができたもう一つの出来事だったのです。どうぞ見限らないで今後ともよろしくお願いいたします。

○小瀧社長 こちらこそ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○山根教授 ものづくりは大事ですので、いい実験装置もつくってください。ありがとうございました。

○小瀧社長 お世話になりました。(拍手)

○山根教授 ありがとうございました。私いつもこういうふうに思いつきで、そのプレート見て何だと思ってすぐ飛んでいっちゃうようなことばかりやっているものですから。でも、きょう来ていらっしゃって、さっき声をかけていただいたものですから、ぜひ皆さんに御紹介したいと思いました。

時間が来てしまいましたけれども、このセッションのテーマは、「原子力の未来は何色か」という、―原子力機構の挑戦―となっているのですね。さっきなかなかうまいタイトルつけたねとかって私のうちのスタッフと話したら、それは山根さんが言ったんですよとか言われちゃって、私自身が何色か余り考えてなかったのですけれども、井川さん、何かいいホームページをおつくりになって、きょうのために、何日かかったんでしたっけ。

○井川論説委員 ただきょう話していると、山根先生がかなりバラ色の面に光を当てられたのですが、どうもメディアにいるとなかなかそうバラ色ばかりじゃなくて、原子力機構さんはさまざまなこれから廃止しなければいけない、つまりぶっ壊さなければいけないかなり難しい、しかも分野の違う、非常に難しい、お金もかかる事業を抱えていますので、できれば山根先生が今おっしゃったように、その面でもチャレンジして、そこをバラ色にできるような、新しいチャレンジができるようにやってもらいたいので、ですから何色かというと「バラ色」にしていただきたいと、こういうことです。

○山根教授 ちょっと見せていただきたいのです。

○井川論説委員 またの機会に。

○山根教授 とてもすてきにホームページで、ちょっと紹介しちゃってもいいですか。例えば宇宙探査機が……それだけ、プルトニウム電池の話。宇宙の探査機の。

○井川論説委員 幅広い技術という意味では、これは日本は余りやってないことですけれども、宇宙探査とかやるのであれば、放射性物質を使った電池、電源というものが必ずや必要になるだろうし、それから海外では量子技術というのをかなり高度化したいろんな実験もやられていて、原研さんがどこまでおやりになっているか必ずしも伝わってないので。しかもどれだけ新しい、アインスタイニウムというのもおやりになっているのだろうけれども、それに加えて幅広くぜひやっていただいて、全体としてバラ色の研究組織というのを目指していただければなと思います。

○山根教授 小惑星探査機はやぶさが、かなりの時間をかけてイトカワという小惑星に行って、今またはやぶさ2が行っていますけれども、これは日本はイオンエンジンというものを使った。なぜイオンエンジンを使ったかというと、太陽の光で電気を起こして、その電気でイオンエンジン、電子レンジみたいなものですけれども、それで非常に省エネで、そのかわりすごく遅いのですよね。例えばそれをこういう探査機を太陽系のもっともっと外まで行かせようとすると、太陽の光がもう届かなくなるので発電できないということで、やはり原子力電池を使いたいなという希望がすごく強いようなのです。ですから、実はイオンエンジンの開発者のテーブルの上に、びっくりしましたけれども、アメリカの原子力電池の模型が置いてありました。どうしてですかと言ったら、本当はこれを使いたいのだけれども、日本は規制があって使えないので、そういう意味での惑星探査力がなかなかアメリカに勝てない部分もこういうところにあるということの話をされていました。こういうものはもう少し皆さんの理解ということも必要ですよね。それからもちろん安全性も必要ですし。そういう意味では、この分野の課題、そういうことをクリアしたときに、井川さんは。原子力の未来は何色ですか。

○井川論説委員 バラ色にしていただきたい。

○山根教授 それは私よりすごいな。

ではセンター長は最後に、何色ですか。

○齊藤センター長 このテーマを伺ったときに、何色と答えるかというのはもうその時点で決めていたのですけれども、答えは井川さんがお答えいただいたように、バラ色にしなければいけないということだと思っているのです。バラ色にするということは誰かよその人がやってくれるわけではなくて、原子力機構が取り組む、原子力及び日本の全ての関係者が、科学技術もしくは社会科学でもいいですけれども、そういう人たちの総力をもってバラ色にしなければいけない問題だと感じておりますけれども。

○山根教授 では、岡嶋さんは何色ですか。

○岡嶋副部門長 私も実はこれを考えて、ここに登壇することが決まって名前が出たときに、ほかの友人から、「まさかバラ色と言うんじゃないよね」と言われたのですよ。それでうーんと思いながら実は考えてきたのですけれども、実は私は、先ほども言いましたけれども、本当は基盤研究をやっている部分のところなのです。さっきも言いましたけれども、幅も広く深くということからすると、色で言うと実は青色もあれば赤色もあるし、黄色もあるし緑も、いろんな色があるものだと思っているのです。その色を全部それぞれなりに濃く深くやっていけば、足した色は何色かというと、実は白色になるだろうと思っているのです。そういう意味でも、将来はやはりそういう形でバランスのとれた白色を目指すべきだろうと、私は思います。それが逆に白というのは、ある意味、いい意味で何色にも染まりますという意味ですから、やっている人がこれから先、あるいはこれから先の人がバラ色に染めてくれるかもしれないと期待して、私は白色を目指す。そのためにはいろんな色を一生懸命に深くしていくことが大事かなと思っています。

○山根教授 うまいですね。

では最後になりますけれども、私は今の時代は、2011年の3月11日で真っ黒になった後に、今もずっと灰色のどんよりとした色が続いていて、カラー、色情報を失っているような感じがしていたのですけれども、今これからずっと未来は、夜明け前の深い青ってありますよね、素敵な。そこに何か明けの明星と金星がきらきらと輝いているような、何かそのような。そこにだんだん太陽も上がって明るくなってくるのですけれども、そうすると岡嶋さんと同じ白かもしれませんけれども、そこにいろいろな、明けてくる前の星があちこちに輝いているような、そういうものになっていただきたいな。これからの20年間ぐらい。その後は白あるいはバラ色。そこで皆さんで染められるようになってほしいなと。この問題は現在、非常に社会的な使命や責任感もありますし、でもそれを乗り越えるとてつもない科学研究とイノベーションを続けていただきたいと僕は思っております。

ということでよろしいですかね。難しいですよ。「原子力の未来は何色か―原子力機構の挑戦―」といっても、簡単に言えるものではありませんけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。