━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011.2.11 ━━━━━━━━

■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.164 目次 ----++

現場から ____ 一丸となって進める臨界安全・事故研究(安全研究センター)

海外事務所便り _ 米国、2035年までに電力の80%をクリーンエネルギーに

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一丸となって進める臨界安全・事故研究

安全研究センターサイクル施設安全研究グループは、名前のとおり、核燃料サイクル施設の安全性に関わる研究を行っています。興味深いところは、前身となる複数のグループが合体してできており、物理の専門家と化学の専門家が一緒になって、幅広く研究を行っているところです。

前身の一つである臨界安全研究室に私が配属されたのが、今から16年前です。ちょうど、東海研究開発センター原子力科学研究所燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)にある定常臨界実験装置(STACY)と過渡臨界実験装置(TRACY)が初臨界を達成した頃です。配属後しばらくは、STACYを用いて臨界実験を行っていました。STACYとTRACYは、六ヶ所再処理施設で使用される低濃縮ウランの硝酸水溶液について、臨界量を測定したり、臨界事故を模擬した実験を行うための臨界集合体です。これらの施設の運転、維持管理は、同じ原子力科学研究所にある安全試験施設管理部のSTACY/TRACY(S/T)運転チームが行っています。

STACYでは、臨界量の測定や新しい臨界測定手法の開発だけでなく、反応度温度係数の測定も行いました。簡単に言うと、燃料溶液の温度が1℃上昇したときに、どれくらい臨界に近づく(もしくは離れる)効果があるかを測定します。燃料溶液の中の温度分布を測定するために溶液内で温度計を上下させると、明らかに測定値に異常な値が現れたことがありました。どうやら温度計からの信号にノイズが乗っているようです。試行錯誤の結果、温度計を所定の距離よりも余分に動かしてから、目的とする位置まで戻すことで、ノイズの影響を受けない測定が可能であることがわかりました。そこで、STACY運転チームの方に、非常に面倒な操作をお願いすることになりました。実は、このことだけではなく、臨界量測定のために「ちょっとだけ燃料を抜いて(入れて)」を繰り返したり、非常に厳しいスケジュールの中で、燃料濃度の調整をお願いしたりしました。STACY運転チームのみなさんが必死になって、我々の要望に応えてくれたおかげで、さまざまな実験を実施することができました。

1999年にJCOの臨界事故が起こったときは、徹夜で対応しました。私は先輩とともに研究室で待機し、情報収集や海外からの問い合わせ対応などを行いました。

この臨界事故以降、TRACYを用いた過渡臨界実験に従事して来ました。さまざまな条件(反応度添加量、反応度添加率、反応度添加方法、初期中性子源有無など)で臨界事故を模擬した実験を行い、出力(単位時間当たりに放出される核分裂エネルギー)、燃料溶液の温度、圧力などの測定を行いました。「反応度を添加する」とは、「臨界に近づく(もしくは臨界を越える)」ことに相当します。臨界事故という現象は、その基礎的なメカニズムがよくわかっていなかったため、いろいろな条件で実験データを取得して、検討する必要がありました。

最近では、溶液燃料をあらかじめ高い温度にしておいて、その状態で反応度を添加する実験をやりたかったのですが、TRACY運転チームの方のOKが出ないことがありました。TRACYは、運転開始から実際に過渡臨界実験を行うまでに、安全のための手順を実施すると数時間かかるので、その間に燃料の温度が下がってしまい、想定している反応度よりも大きい反応度が添加される恐れがあるということです。

検討した結果、運転を2回(2日かけて)実施することで、解決しました。1回目は過渡臨界にはせず、安全のための手順だけを実施し、その間に温度がどのくらい低下するかを測定します。2回目に行う安全のための手順は、1回目に実施しているため、より短時間で済ませることができ、温度の低下も抑えることができます。この方法で、温度の低下量は安全上問題ないことを確認し、実験を行うことができました。ここでも、TRACY運転チームのみなさんが一生懸命に我々の要求を実現しようと努力してくださいました。

STACYで取得された臨界データは、ICSBEPの臨界ベンチマークデータとして採用されていますし、TRACYで取得された過渡臨界実験のデータはOECD/NEAで臨界事故評価コードの国際比較のためのベンチマークデータとして活用されています。また、我々が臨界事故評価のために開発しているAGNESコード等の検証に役立っています。

装置の限界や想定していなかった運転に挑む我々と、安全を確保しつつ無理難題を解決していくS/T運転チームのみなさんとの共同作業により、このような成果を生み出すことができました。この場を借りてS/T運転チームの皆様に感謝の意を表したいと思います。

まもなく、現在のS/Tは役目を終え、数年間の改修ののち、新しいSTACYを用いた実験が開始される予定です。その時にも、研究グループと運転チームが一丸となって、貴重な臨界実験データを取得できるように努めていきたいと思います。

(安全研究センターサイクル施設安全研究グループ 山根祐一)

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ ワシントン事務所
<米国、2035年までに電力の80%をクリーンエネルギーに>
 オバマ大統領は1月25日に一般教書演説を行い、2035年までに電力供給の80%を、原子力を含むクリーンエネルギーで賄うとする目標を掲げました。
 http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/01/25/remarks-president-barack-obama-state-union-address

<先進型Candu炉の事前設計審査が完了>
 カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、カナダ原子力公社(AECL)の先進型Candu炉(ACR-1000)の事前設計審査を終え、同国における原子炉許可取得に基本的障害はないという結論を出しました。

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細は http://www.jaea.go.jp/saiyou/index.html をご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今週日曜日、家の庭で白梅がほころんでいるのを“発見”しました。

梅の名所は全国各地にありますが、私が住んでいるつくば市には「筑波山梅林」があります。筑波山の中腹(標高約250m)に位置し、眼下に山麓の田園風景や筑波研究学園都市の街並み、遠くには富士山や都心の高層ビル群まで見渡すことができる4.5haの園内には白梅、紅梅、緑がく梅などが咲き誇ります。来週2月19日から3月21日まで梅まつりが開催されるので私も観梅に出かけようと思います。

梅は和名で『春告げ草』とも言われますが、読者の皆様も梅の花を愛でながら、近付く春を感じてはいかがでしょうか。(広報部 棒田 明)

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【配信希望、アドレス変更、配信停止】http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html

【ご感想やご要望】http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行  ○

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