令和2年度 安全研究センター報告会 参加者用ページ

時間の都合により回答しきれなかったご質問への回答

令和3年1月
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
安全研究・防災支援部門 安全研究センター

過日は、令和2年度安全研究センター報告会にご参加をいただきありがとうございました。
当日にチャットでいただきましたご質問のうち、時間の都合により回答しきれなかったご質問について、以下の通り回答を掲載いたします。
皆様から賜りました貴重なご意見・ご質問につきましては、今後の活動に活かしてまいります。

安全研究センターの概要(報告者:丸山結)

Q1: SMRなどの新技術に対してはどのような研究を予定しているか?
A1: SMR等の次世代炉に関して、現時点では研究を具体化していません。社会情勢の調査・分析を進め、適時・的確に研究を行えるよう努めていきます。新技術の一つである事故耐性燃料(ATF)については、事故時挙動に係わる基礎的な研究に着手したところです。
Q2: 規制基準の見直しを視野に入れているが、具体的にはどのように見直しするのか?炉安審の場を活用するのか?
A2: 様々な機会を利用して、安全研究の成果を発信・公開し、安全 規制の継続的な改善に貢献することは、安全研究センターの重要な使命と考えて います。このような貢献の一つが、規制基準見直しの必要性を判断するための情 報として、安全研究から得られた最新の技術的知見を原子力規制委員会/原子力 規制庁に提供することであると認識しています。安全研究センターの成果を原子 炉安全専門審査会において報告することはないと考えています。
Q3: P1で核不拡散関係が目的とのことだが、核不拡散・核セキュリ ティ総合支援センターとはどのような関係にあるのか?
A3: 安全研究センターでは、IAEA保障措置環境試料分析に特化して、査察官が採取した環境試料(原子力関連施設から拭き取り採取した塵が付着した布試料)に含まれる極微量核物質の同位体組成や量を分析してIAEAに報告するとともに、極微量分析技術に関する研究・開発を行っています。一方、核不拡散・核セキュリティ総合支援センターは、核不拡散技術開発、政府の政策立案支援、非核化支援、人材育成等を主たる業務としています。両者が担っている領域が異なっており、相補的な関係にあると言えます。
Q4: P9で1F事故分析が規制・国際情報分析室の役割とのことだが、CLADSとはどのような関係にあるのか?
A4: CLADSは福島第一原子力発電所の廃止措置に係わる研究・開発を主要な課題としていますが、規制・国際情報分析室では、主に、福島第一原子力発電所の事故進展に係わる分析・評価を担っています。福島第一原子力発電所の事故に係わる機構横断の検討会や同事故に係わるOECD/NEAのプロジェクト等を通じて、燃料デブリの特性や放射性物質の移行挙動についてCLADSとの技術的な情報交換を行っています。
Q5: P9のグレーデッドアプローチは、リスクや重要度に基づくとのことだが、予算も関係するのではないか?(予算が多ければ、より確実・大規模な対応ができる。)
A5: 予算も関係すると考えています。必要な予算と得られる便益(リスクの低減効果等)の分析を参考にしつつ、限られた資源を用いてより効果的に安全性の向上を目指すこともグレーデッドアプローチに含まれると考えます。

燃料デブリ臨界管理のための臨界リスク基礎データの整備・拡充(報告者:荒木祥平)

Q1: デブリの多孔性のモデル化はどのように扱うのか?また、溶融プールの対流によって、二層や三層になり、軽金属層や重金属層、酸化物層などに分離していくと考えられているが、この取り扱いはどう考えているか?
A1: 現在開発しているSolomonコードで実装されているモデルを利用することで体系の非均質性を模擬できると考えております。一方で分離している状況、状態について知る必要があり、デブリの調査が必要であると考えております。

緊急事態区分に対する炉心損傷以外の評価視点の検討(報告者:小城烈様)

Q1: P5(背景(3/3))の図では原子力発電所ごとに評価されているようですが、日本でも同様の評価はなされているのでしょうか?
A1: 現在、日本では同様の評価は実施されておりません。なお、NUREG/CR 7154(U.S.NRC, 2013)では、代表3プラントを選定し、結果を整理しています。

放射線防護対策を施した屋内退避施設における被ばく線量評価及び技術的知見の整備(報告者:石崎梓)

Q1: P3で、健康影響は避難等によるストレスに起因する健康影響も含まれているか?また、経済影響は風評被害も含まれているか?
A1: 現在のところ、健康影響は早期影響(急性死亡と罹患)と晩発性影響(がん死亡とがん罹患)のみで、ストレスに起因する健康影響は含まれていません。また、経済影響は、人の移動(輸送コスト、居住コスト等)、農畜産物の損失廃棄コスト、健康コスト(治療費等)のみで、風評被害は含まれていません。今後、避難による心的、精神的リスク及び風評被害についても評価モデルに組み込む研究を進めていきたいと考えています。
Q2: P4で、屋内退避施設への移動による健康リスク増大の可能性もあるのではないか?
A2: 屋内退避施設のうち、老人福祉施設(老人ホーム等)、病院、介護施設については、普段から入居又は入院されている方々が屋内退避するため、特別な移動は必要ありません。一方、普段は自宅で生活している人々のうち、屋内退避施設(集会所など)へ屋内退避の可能性がある人々については、事前に自治体が確認し、健康リスクの増大が生じない範囲で避難できるように計画しています。
Q3: 施設にはヨウ素剤は準備しておくのがよいのか。何人分か。
A3: 国や自治体がその施設の特性(小児などが収容されている病院等)を踏まえて計画することになるかと思います。準備数については、施設の収容予定人数を考慮して計画されるものと考えます。