平成20年11月18日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
独立行政法人理化学研究所
国立大学法人東京大学

インバー効果の100年にわたる謎に迫る
−世界最大の負の熱膨張を示す物質で格子歪みを発見−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」)量子ビーム応用研究部門 中性子物質科学研究ユニット ナノ材料創製研究グループ*a、独立行政法人理化学研究所(理事長 野依良治、以下「理研」)基幹研究所*b及び国立大学法人東京大学(総長 小宮山宏、以下「東大」)物性研究所*cの研究グループは、パルス中性子回折1)実験と核磁気共鳴2)実験により、室温加熱で世界最大の負の熱膨張を示すマンガン化合物(Mn3Cu1-xGexN)において、窒化マンガン(Mn6N)八面体の局所的な回転に伴う格子歪みを発見しました。

通常、物質は加熱により膨張しますが、中には膨張しないものも僅かに存在します。その代表例として、シャルル・エドワール・ギヨームが1897年に発見し、1920年にノーベル物理学賞を受賞したことで知られる「インバー合金(ニッケル36%、鉄64%)」などが挙げられます。

この物質の謎とされるインバー効果3)の発現機構は、発見以来現在まで100年以上にわたり未解明です。これを解明するため研究グループは、世界最大の負の熱膨張を示すマンガン化合物(Mn3Cu1-xGexN)を用いた実験を米国の装置4)で行い、得られた高精度のデータを国内で解析した結果、窒化マンガン(Mn6N)八面体の局所的な回転に伴う格子歪みを発見し、このことがインバー効果の謎に深く関わる現象であることを今回世界で初めて示しました。

なお、本成果は、独立行政法人物質・材料研究開発機構、理研及び原子力機構が平成18年12月18日に締結した「量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力協定」(http://www.jaea.go.jp/02/press2006/p06122001/index.html参照)の一つとして、また一部は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて実施したもので、米国物理学会誌「Physical Review Letters Vol. 101:(平成20年11月14日オンライン版発行)」に掲載されました。

*a 飯久保智博士研究員(現:東北大学原子分子材料科学高等研究機構助手)、樹神克明研究副主幹及び社本真一研究主席
*b 竹中康司客員研究員(国立大学法人名古屋大学大学院工学研究科准教授)及び高木英典主任研究員
*c 瀧川仁教授

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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