平成18年12月20日
独立行政法人 物質・材料研究機構
独立行政法人 理化学研究所
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
 

三機関が「量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力協定」を締結
−量子ビーム施設の相互利用と人材交流によりイノベーション創出を図る−

 

 物質・材料研究機構(理事長 岸 輝雄、以下「物材機構」)、理化学研究所(理事長 野依 良治、以下「理研」)及び日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一、以下「原子力機構」)(以下、「三機関」という。)は、量子ビームで世界最高レベルを誇る機器や研究力を結束させ、新たに国際競争力のあるイノベーション創出に貢献するため、量子ビームを利用した先導的研究を連携協力して進めることで合意し、「量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力協定」を平成18年12月20日に締結しました。
 本研究協力協定のもと具体的な研究協力を推進・展開するため、研究協力協議会を設置し、我が国の産業の振興や国民生活の向上に大きく貢献する研究への取り組み、成果の普及などにかかる具体策の検討を始めます。
 量子ビームでは、中性子発生装置、大型放射光施設、イオン照射施設など世界に冠たる施設を三機関が保有しており、物材機構は「物質・材料創製研究」、理研は「先端生命科学・物質科学研究」、原子力機構は「量子ビーム応用研究」で、それぞれ世界をリードする成果を生み出しています。本連携により、これらの強みを有機的に結集し、より効果的な研究の展開と効率的な推進が可能になります。

協定の名称
 「量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力協定」

協力内容
 量子ビームを利用した先導的研究開発を促進し、研究成果の社会への還元を加速することを目的として、三機関が有する施設の相互利用や人材の交流を進めます。本協定における具体的な研究課題として、「燃料電池システム用キーマテリアルの開発」及び「次世代機能材料開発に向けた量子複雑現象の解明」の2テーマを検討しています。

協定期間
 平成18年12月20日〜平成21年3月31日


1.背景
 放射光、電子ビーム、イオンビーム、中性子ビーム等の量子ビームは、原子力政策大綱や第3期科学技術基本計画の分野別推進戦略において、ナノテクノロジーやライフサイエンスなどの重点分野に貢献するものとして期待されています。一方、分野別推進戦略の効果的な実施にあたっては、研究機関のネットワーク・連携の重要性がうたわれています。このような背景のもと、量子ビーム施設等を駆使し、重点分野において先進的な成果を挙げ、我が国の科学技術の発展や産業の振興に貢献してきた三機関が連携し、国力アップにつながるイノベーション研究を推進していくことが必要である、との認識に至りました。


2.協定の範囲
 (1) 連携協力の内容
@共同研究、受委託研究、研究情報交換等による研究協力
A研究者及び技術者の人材交流
Bその他、研究協力を円滑かつ効率的に推進するために必要な事項
 (2) 研究協力協議会の設置
 研究協力の推進に係る重要事項について協議するとともに具体的なテーマについて検討及び情報交換を行うこととしています。


3.今後の期待
 三機関は、これまでも独自の立場から量子ビーム利用を進めてきました。また、いくつかのテーマについては二機関間の共同研究も行ってきました。今後は、これらをさらに発展させ、三機関がそれぞれの研究開発ポテンシャルと量子ビーム施設等の特長を活かし有機的に連携することにより、効果的に研究開発を促進して、重要な科学技術分野におけるインパクトのある研究成果をあげていくことが期待できます。
 また、三機関が我が国初の量子ビーム研究のコアとなることによって、これまでの産学との連携をより発展させることが期待されます。


4.各機関概要
物質・材料研究機構
 金属材料技術研究所と無機材質研究所を統合し、日本で唯一、物質・材料科学に特化した研究機構として、2001年設立しました。本年度より、「ナノテクノロジーを活用した新物質・新材料の創成」および「社会ニーズに対応した材料の高度化」を重点研究開発領域とし、20センターを設置、物質・材料科学技術に関する基礎研究および基盤的研究開発等を総合的に行っています。センターのひとつ「量子ビームセンター」では、高輝度放射光、中性子ビーム、イオンビーム、原子線等の先端的な量子ビームを総合的に開発・利用し、独自の物質・材料創成、計測等のポテンシャルを活用し、量子ビーム基盤技術の確立を目指しています。

理化学研究所
 科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。また、研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的に進めています。量子ビーム関係では、仁科加速器研究センターがRIビームファクトリー計画で増強中の加速器施設(埼玉県和光市)や兵庫県にある大型放射光施設SPring-8を保有し、またRAL支所としてイギリスのラザフォードアップルトン研究所内でミュオン施設を利用するなど、世界最高レベルの施設を活用しています。

日本原子力研究開発機構
 日本で唯一の原子力に関する総合的な研究開発機関として、高速増殖炉、核融合、原子力水素等の「エネルギーの安定供給と地球環境問題の同時解決を目指した原子力システムの研究開発」や「安全研究」等とともに、「量子ビームの利用のための研究開発」を推進しています。後者においては、量子ビーム応用研究部門を設置し、研究用原子炉JRR-3の中性子ビーム、イオン照射研究施設TIARAのイオンビームや電子線・ガンマ線、大型放射光施設SPring-8の放射光、また高強度極短パルスレーザーを有機的に使って、ナノテクノロジー・材料、生命科学・バイオ技術、環境・エネルギー、先進医療の各分野への貢献を目指した研究開発を進めています。また、高エネルギー加速器研究機構と共同で、大強度陽子加速器施設(J-PARC)を建設しています。


5.具体的な研究課題
 最初にとりかかる具体的な研究課題としては、次のふたつを検討しています。

燃料電池システム用キーマテリアルの開発
 地球温暖化、エネルギー問題の克服に向け期待されている、出力電力が高く、100℃〜500℃で動作し、白金消費量を大幅に低減した電解質膜・電極/触媒アセンブリー材料の開発等を目標とします。

次世代機能材料開発に向けた量子複雑現象の解明
 高度情報化、環境調和型社会に向けて期待されている、超高速・超省エネルギーの次世代機能材料の開発を可能にするため、物質中の電子等が互いに強く影響を及ぼしあって超伝導や磁性等の有用な性質を生み出している複雑な量子現象の解明を目指します。


 ・三機関連携:量子ビームテクノロジーの先導的研究開発
 ・三機関連携 −量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力について−
以 上

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