(別紙)
 
高速実験炉「常陽」計測線付実験装置との干渉による回転プラグ燃料交換機能の一部阻害について
 
1.経 緯
 第15回施設定期検査(H19/5/15〜H20/12/ 9予定)中の高速実験炉「常陽」で発生した燃料交換機ホールドダウン軸(以下、新ホールドダウン軸1))荷重異常(6/ 11発生、6/ 15週報にて既報)に係る対応として、新ホールドダウン軸を取外して点検を行ったところ、軸の先端に2箇所の圧痕があることを確認しました。(6/ 22週報にて既報)
 この原因調査の一環で、炉心の崩壊熱2)の低下を待ち、ナトリウム液位を炉心頂部以下まで低下させ、回転プラグ3)上に設置したカメラ及びファイバースコープを用いた炉内観察装置で、旧ホールドダウン軸下端、炉心頂部及び炉心上部機構下端周辺の観察を8月下旬より行いました。
 9月中旬までの炉内観察では、過去に実施した炉内観察で放射線の影響を受けたファイバースコープを使用したため、明瞭な画像を得られませんでしたが、旧ホールドダウン軸の下部に、新ホールドダウン軸先端部との接触を推定される物が確認できました。(9/ 14週報にて既報)
 このため、ファイバースコープを更新して炉内観察(10/ 10再開)を継続した結果、明瞭な画像が得られました。

2.観察結果
 炉内観察の結果、炉内燃料貯蔵ラック(以下、炉内ラック4))R16上部において、計測線付実験装置(以下、MARICO-25))の試料部が突き出ていること及びMARICO-2試料部の円環状のハンドリングヘッド6)が六角形ラッパ管7)の継ぎ手部分から外れていることを確認しました。現在まで観察した範囲内では、ハンドリングヘッドは確認されておりません。
 また、炉心上部機構の下端に三角形状の影を確認しましたが、寸法等を評価した結果、回転プラグの運転に影響を与えるものではないと判断しました。
 その後、回転プラグを運転し、炉内観察装置を炉内ラックR16まで移動させて、MARICO-2試料部の寸法等を詳細に観察した結果、炉心上部機構と旧ホールドダウン軸が炉内ラックR16に接近した際に、MARICO-2試料部と干渉し、回転プラグの運転範囲が制限されることが分かりました。なお、これまでの観察では、炉内にルースパーツ8)は確認されていません。
 上記について、本日、文部科学省、茨城県及び関係市町村へ報告しました。

3.原子炉施設への影響
 本件は原子炉停止中に発生したものであり、回転プラグの燃料交換機能が一部阻害されているものの、遮へい機能やカバーガス9)の閉じ込め機能及び炉心の冷却機能に異常はなく、原子炉の安全性は確保されています。

4.環境への影響
 MARICO-2は燃料の長寿命化を目的とした被覆管材料等の照射試験を実施するための実験設備であり、核燃料物質は装填されていません。また、炉容器内のカバーガスの測定で核分裂生成物が検出されていないことから炉心燃料集合体等の破損はなく、本件による環境への影響はありません。

5.原 因
 原子炉停止中に、炉内においてMARICO-2試料部と保持部の切り離し作業10)を実施した際(5/ 30)、何らかの要因により試料部を正常に切り離すことができなかったことが原因と考えられます。なお、原因については、現在調査中です。

6.今後の予定
 ルースパーツの有無等の確認のため、引き続き炉心頂部の観察を行います。
 これまでに確認した状況及び寸法を考慮すると、MARICO-2の試料部は、燃料交換機孔からの回収が可能と見込まれるため、今後、回収装置の設計等について検討していきます。
 また、炉心上部機構下面を観察するとともに、ハンドリングヘッドについては、その所在を確認した上で、回収方法を検討します。


用語解説

 別添図1 MARICO-2概要図(PDF、991kバイト)
 別添図2 原子炉容器内の観察概要図(PDF、270kバイト)
 別添図3 炉内ラックR16上部のMARICO-2試料部観察写真(PDF、380kバイト)
 別添図4 炉心構成と燃料交換機が達成できない範囲(PDF、107kバイト)

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