独立行政法人日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センター
製錬転換施設における放射性物質漏えいについて
(原因と対策)の概要


独立行政法人日本原子力研究開発機構


1.漏えい痕跡の発見
  ・ 平成19年2月15日(木)10時30分頃 人形峠環境技術センター 製錬転換施設内の資材一時置場(管理区域)において、分析廃水配管継手部及び床面に漏えい痕跡を発見した。
  ・ 翌16日、当該分析廃水配管延長部を調査したところ、ふっ素電解室(非管理区域)内の同配管継手部に漏えい痕跡を発見した。また、前日発見した痕跡部の放射線測定の結果、法令に定める管理区域の表面密度限度を超えていることが判明した。
  ・ その後の調査により上記を含め、管理区域で95箇所、非管理区域で1箇所の漏えい痕跡を発見した。この内、3箇所が管理区域の表面密度限度を超えていた。なお、非管理区域では、上記1箇所以外に新たな漏えい痕跡はなかった。(図-1.1〜1.3、図-2)


2.環境への影響
  ・ 環境への影響、作業員の放射線被ばく、作業員の人的障害は無かった。また、当該事象以外の物的損傷はなかった。


3.原因究明と再発防止対策
(1)原因究明
     @ 配管等からの漏えいの直接原因
 96箇所の漏えい箇所の内、最も多かったのは、発生部位では配管継手部で53箇所、設備別では廃液処理設備の48箇所であった。これらについて、漏えい継手部の分解、熱応力解析等を実施し、漏えいの原因を特定した。(表-1)
配管継手部(差込継手構造)
接着接合不良や温水の排水の繰り返しによる熱伸縮等による応力集中(図-3、写真-1)
配管継手部(フランジ構造及びねじ込み構造)
長年の使用によるパッキン及びシールテープのひび割れ、変形、弾性劣化等によるシール機能の劣化
排気設備ダクト継手部
長年のふっ素分を含むミストによるフランジ部の腐食やパッキンの劣化
その他
ドレン・サンプル口の端末処理不備、床及び架台の作業後の処置不備等
     A 不適切な管理及び対策に至った原因と背景要因
 多数の漏えい痕跡が長期間確認されず、非管理区域にも漏えい痕跡があったことから、施設の設計・建設情報、従来までの配管等の管理の方法、安全意識、過去の水平展開等を調査し、直接原因とその背景要因を特定した。
設備機器から離れた配管・ダクト等は、点検項目に明記がなく、点検していなかった。また、設備機器の高経年化対策や配管等の漏えい防止対策を実施していなかった。
転換試験終了後、設計や運転を担当した技術者がほとんど転出し、運転管理情報等の技術伝承が十分行われなかったこと、天然ウランを扱う施設であり、一部はウランを開放系で取り扱う設備設計と運転管理となっていたため、汚染があった場合は除染すれば良いという風土であったが、その後の社会環境変化に応じた意識改革が十分行われなかったこと、及び設備に錆等が増え、漏えい痕跡と錆等の見分けがつきにくい状態となり異常を早期に発見しにくくなった。また、非管理区域を経由する放射性物質を取り扱う配管に対する外部のトラブル事例等を見直しの機会として活かせなかった。
廃止措置を進める中で将来に対する不安感からくる士気の低下と職場内の情報共有不足があった。
     B 通報・連絡の不備及び遅れに至った原因
 通報・連絡の不備及び遅れに関し、関係者からの聴き取り調査を行い、原因を特定した。
安全管理課への放射線測定依頼手順が明文化されていないこと、漏えい痕跡が局所的で漏えいの継続・拡大の可能性が無いと判断したこと、自然放射性物質(ラドン・トロン)の影響で測定に時間を要したこと、等により迅速な対応が図れなかった。
原子力保安検査官への通報の具体的要領が明確でなかった。
報告を受けた日時を発見時間と思い込む等により情報の混乱があり、また相互確認が未実施となった。

(2)再発防止対策
 製錬転換施設は、今後、廃止措置にむけて順次設備の解体を進めていく中で、上記の原因を踏まえ、以下の再発防止対策を取ることとした。
     @ 配管等からの漏えい
全ての漏えい痕跡箇所について平成19年度上半期内を目途に除染等作業を実施
非管理区域で使用を継続する配管・ダクトは、必要な漏えい防止対策を実施。その他は使用を停止し、水抜き・配管切り離しをした後に計画的に撤去
管理区域で使用継続するものは、高経年化対策も考慮しつつ補修・交換を実施。使用予定のないものは水抜き・塔槽類から配管を切り離した後に計画的に撤去
配管、ダクト類に対する確実な巡視点検の実施
     A 不適切な管理及び対策
施設の安全管理レベルの向上及び技術伝承を図るため、施設の運転履歴データベースの構築及び設備毎のリスクアセスメントを実施
配管等の点検を確実に行うため、設備巡視点検マニュアルを改訂
安全確保を全てに優先する「安全意識」の醸成及び活気ある職場風土の醸成のため、他拠点の安全管理者や外部講師との情報交流、自らの施設の設計や運転管理を踏まえた水平展開事項への取り組み、センター所長等幹部との定期的な意見交換の場の設定、また、これらにより廃止措置フロントランナーとして自覚を持てるように動機付けを行う。
「5Sの日(毎月1回)」に合わせた現場の整理・整頓等を実施
     B 通報・連絡の不備及び遅れ
放射性物質漏えい時等の正確・迅速な状況把握に向けた放射線測定の手順の明確化及びマニュアルの整備
原子力保安検査官、関係機関等への通報ルートの明確化及びマニュアルの整備
危機管理関連の各種要領・マニュアル類の見直し及び訓練を通じた実効性の検証
通報・連絡に係る危機管理意識の維持・向上のための実践的な教育


4.水平展開
(1)センター内他施設
     ・ センター他施設で放射性物質を含む液体・気体が流通する配管・排気ダクトについて管理の状況、漏えい痕跡の有無及び塩化ビニル配管の応力集中構造の有無を確認するため点検を実施した。その結果、各施設とも管理区域及び非管理区域の配管・ダクトのいずれにも漏えい痕跡はなく、塩化ビニル配管について同様の応力集中構造はないことを確認した。
     ・ 開発試験棟の非管理区域を通る塩化ビニル配管については、管理区域内へルートを変更し、屋外地中敷設配管は、漏えい防止対策を講じる。

(2)原子力機構内施設に係る水平展開
     ・ 非管理区域の塩化ビニル配管は原則として使用を停止し、やむを得ず使用する場合は、当該事象のような熱応力が生じにくい仕様であることを確認するとともに漏えい対策を講じる。
     ・ 安全意識・技術の伝承は、安全意識の醸成に重要との認識から、平成19年度も安全管理基本方針のなかに掲げ、全社的な活動を展開してゆく。
     ・ 廃止措置に向かう施設を抱える拠点が増えることから、目的意識の共有化、活気ある職場風土の醸成に努めてゆく。

以 上


図表一覧表
  表-1 設備別の漏えい痕跡箇所(PDF、118kバイト)
  図-1.1〜図-1.3 部屋別の漏えい痕跡箇所(PDF、222kバイト)
  図-2 漏えい痕跡の表面密度分布(PDF、79kバイト)
  図-3 資材一時置場分析廃水配管継手の亀裂調査結果(PDF、197kバイト)
  写真-1 配管の切断結果(漏えい痕跡箇所の内面の目視確認)(PDF、122kバイト)


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