STAGE5 放射線の利用

放射線利用は医療分野をはじめ幅広い。レントゲンやCT スキャン、PET 検査やがんの重粒子線治療など、医療分野での活用、コンピューターのLSI をより小型化・高性能化するために利用される放射光、放射線で有害物質を分解する研究、下水処理場で発生する汚泥を殺菌し、農地で肥料として使う研究など暮らしを豊かにする放射線利用のほか、炭素の年代測定など考古学分野での利用、世界最大の大型放射光施設SPring-8 で行われている最先端技術を使った研究等、未来の放射線利用技術に迫る。

放射線の「見る」性質を利用 した測定・検査

X線が物質を透過する性質はレントゲンがX線を発見した当初から知られていました。この性質は医学用途だけでなくいろいろなものの測定にも使われています。
たとえば放射線は、工業製品の非破壊検査にも利用されています。
非破壊検査とは、検査する対象物を壊さずに、その健全性を検査するものです。この非破壊検査の利用法の1つとして、飛行機の動翼部分の検査にはエックス線が使われています。
この他、2007年にルーヴル美術館では「モナリザ」にX線を当てて、絵画中に使われている技法の調査も行われました。

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放射性物質のもつ半減期の特徴を利用して、考古学の分野では放射性同位体-炭素14を用いての年代測定法があります。
試料となる生物が生きている間は試料中に含まれている炭素の同位体比は一定の割合に保たれていますが、試料が死んでしまうと炭素14が壊変して減っていくので、炭素14と炭素12(普通の炭素)の比率を測定することで年代を特定することができます。土器の付着物や、ミイラの棺の炭素14を測定することによって、土器の使われていた年代やミイラが埋葬された年代が明らかにされています。
また、樹木の年輪に含まれる炭素14を調べることで、その年の宇宙線の強度を調べることができます。例えば、屋久杉の年輪中に含まれる炭素14を測定したところ774-775年にかけて宇宙線の急激な増加があったことが確認されています。

参考資料

栗原正義『考古学及び美術品研究におけるイオンビーム分析の利用』
原子力百科事典ATOMICA