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原子力基礎工学研究センター 遠藤 章 センター長が紫綬褒章を受章

令和元年春の褒章において、原子力基礎工学研究センター 遠藤 章(えんどう あきら)センター長が紫綬褒章を受章しました。紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に授与されるものです。

遠藤センター長は、放射線に由来する被ばく線量を評価するために世界で広く利用される線量評価用データベースを開発し、先進的な核医学診断・治療法の研究、最先端の研究を牽引する加速器の開発などへの道を拓きました。これにより、放射線利用を通じた医療や学術研究の発展に貢献した功績が評価され、紫綬褒章を受章しました。

5月30日(木)に褒章伝達式、天皇陛下拝謁が行われました。

受章コメント:

核医学や放射線利用において、世界の研究者が期待するデータベースを開発して広く社会に貢献することを目標に、この研究に取り組みました。開発したデータベースは、さまざまな研究で活用され成果を生み出しています。データベースの利用は、これから20年あるいは30年にわたって続き、さらに多くの波及効果が期待されます。私の研究は、例えるなら、研究成果というたくさんの花を咲かせるための“豊かな土壌”のようなものです。そのような地道な研究に光をあて高く評価して頂き、紫綬褒章を賜ったことを大変光栄に思います。この研究で得た経験を、次世代を担う若手に伝えて世界で活躍する人材を育てることが、これからの私の役目であり楽しみでもあります。

業績の概要:

放射線は、最先端の学術研究から生活に身近な医療利用まで幅広く活用され、現代社会を支えています。放射線を有効かつ安全に利用するために、放射線に由来する被ばく線量を評価し安全が確保されています。被ばく線量評価には、放射性核種の性質や、さまざまな種類の放射線について人体との相互作用に関する基礎データが必要です。これらのデータとして、核医学の世界最高権威である米国核医学会、放射線防護の国際的な指針を勧告する国際放射線防護委員会(ICRP)が開発するデータベースが、世界の標準データとして利用されてきました。

しかし、1980年代に開発されたこれらのデータベースは、放射性医薬品を用いた新しい診断や治療法の研究、最先端の研究開発に不可欠な大型の加速器施設の開発など、医療や科学技術の発展に求められる高度な線量評価には対応できない問題が顕在化していました。これを受けて、放射線の新たな利用を切り拓くために、より進化したデータベースが世界中で求められていました。

遠藤センター長は、これらの問題を克服するため、放射性医薬品から放出されるオージェ電子についてエネルギーを詳細に計算し、人体に与える影響をDNAレベルまで評価できる手法を開発しました。また、人体内で複雑な原子核反応を引き起こすために困難であったさまざまな高エネルギー放射線に対する線量評価手法を確立しました。そしてこれらの手法を用いて、米国核医学会、ICRPの被ばく線量評価用のデータベースを新たに開発しました。

開発したデータベースは、現代医学に不可欠な核医学検査・治療、近年進展が著しい分子イメージング研究、新薬開発のマイクロドーズ臨床試験、最先端の加速器の開発などに利用され、放射線利用の安全を支える研究基盤として、国際機関や世界各国で広く活用されています。これらの業績は核医学及び放射線防護分野における日本の貢献として高く評価され、遠藤センター長は日本原子力学会賞(技術賞)、科学技術分野の文部科学大臣表彰(開発部門)などを受賞されています。

これら一連の功績によって、遠藤センター長は紫綬褒章を受章されることになりました。

略歴:


遠藤 章
昭和36年2月 茨城県日立市生まれ
昭和63年4月 日本原子力研究所
保健物理部 研究員
平成10年4月 日本原子力研究所
保健物理部 副主任研究員
平成14年4月 日本原子力研究所
保健物理部 主任研究員
平成17年10月 (独)日本原子力研究開発機構
原子力基礎工学研究部門
環境・放射線科学ユニット
放射線防護研究グループ リーダー
平成24年4月 (独)日本原子力研究開発機構
原子力基礎工学研究部門
環境・放射線科学ユニット ユニット長
平成27年4月 (国研)日本原子力研究開発機構
原子力科学研究部門
原子力基礎工学研究センター 副センター長
平成31年4月~ (国研)日本原子力研究開発機構
原子力科学研究部門
原子力基礎工学研究センター長
現在に至る

プレスリリース:令和元年春の紫綬褒章の受章について