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第11回 原子力機構報告会
「我が国の将来を担う原子力技術と人材」

パネルディスカッション 我が国の将来を担う原子力技術と人材 (テキスト版)

パネルディスカッション
我が国の将来を担う原子力技術と人材

○司会(大場) それでは、時間になりましたので、再開させていただきます。

後半は、パネルディスカッション形式にて、「我が国の将来を担う原子力技術と人材」をテーマに御議論いただきたいと思います。

それでは、大変お忙しい中、本報告会のモデレーター及びパネルをお引き受けいただきました皆様を御紹介いたします。

モデレーターは、東京大学大学院工学系研究科教授の山口彰様です。(拍手)

続けてパネリストを御紹介いたします。

文部科学省サイバーセキュリティ・政策評価審議官の中川健朗様。(拍手)

東京電力ホールディングス株式会社執行役員の松本純様。(拍手)

東北大学大学院工学研究科教授の長谷川晃様。(拍手)

一般社団法人日本原子力産業協会人材育成部総括課長の木藤啓子様。(拍手)

そして、日本原子力研究開発機構より理事の三浦幸俊。(拍手)

以上の5名です。

それでは、山口様、よろしくお願いいたします。

○山口教授 どうも御紹介ありがとうございました。

それでは、これからパネルセッションを始めたいと思います。御紹介いただきました山口でございます。

最初に、パネリストの方に簡単に一言ずつ御挨拶といいますか自己紹介をいただきたいと思いますので、順番によろしいでしょうか。お願いいたします。

○中川審議官 よろしくお願いします。文部科学省大臣官房で政策評価等を担当しております審議官の中川と申します。

自己紹介ですが、私は31年前に工学部原子力工学科を卒業いたしまして、当時、卒論は放射性廃棄物処理処分の安全評価みたいなことをやりまして、山口先生の後輩なのですけれども、その後、大学院では放射線防護みたいなことをやりまして、修士修了後、当時の科学技術庁に入庁いたしました。行政官になって最初の5年間は、当時は六ヶ所村のプロジェクトがスタートのときだったので、その推進とか安全規制を担当しまして、何度も青森県に足を運びました。その後、科学技術行政等に取り組んで、原子力行政に携わったのは約20年前なのですけれども、原子力の国際協力を担当し、その後、1995年から3年間、在ワシントンDC、アメリカの日本大使館で核不拡散とかMOX燃料輸送とか非核化支援ということをやりました。先ほどお話があった持地さんと一緒に仕事をしておりました。省庁再編で文部科学省という役所になって、人事を担当したり、宇宙開発をやったり、知財戦略をやったり、その後原子力を大分離れていて、5年前から内閣府のCSTI、総合科学技術・イノベーション会議というところの事務局をやりまして、第5期の科学技術基本計画、イノベーションで未来を明るくしようという計画を立てて、今も含めて直接原子力行政を担当していないというか、随分御無沙汰しておりますが、きょうはそういう立場から、先ほどの話も含めて、未来に向けて人材育成ということに参画できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○松本執行役員 東京電力の福島第一廃炉推進カンパニーにおります松本と申します。

私は35年ほど前に東京電力に入社いたしまして、福島第二の建設、それから高速増殖実証炉の概念設計研究、それから福島第一の保守、あるいは大型改良工事といったものをやってまいりまして、3.11の地震が起きたときには米国の新規のプラント建設に携わっていたわけですけれども、事故が起きまして、当時、汚染水の処理装置を米国でつくりまして、それから帰国いたしました。それ以降2年間、現場で原子炉の冷却を担当いたしまして、数年前に東京のほうに異動しまして、現在は、規制当局を含めた関係省庁あるいは関係機関との調整の仕事をさせていただいております。よろしくお願いいたします。

○長谷川教授 東北大学の長谷川と申します。

私は、東北大学の量子エネルギー工学専攻に所属しております。もっと簡単に言えば原子力工学専攻と言ってもいいのですけれども、名前が変わって量子エネルギー工学専攻になっております。

私は大学時代は東北大学の原子核工学科で原子核工学をやりまして、それから材料を専門にしていたのですけれども、一時期つくばの金属材料技術研究所に行って、それから大学に戻りまして今日に至っております。現在、私は原子力の材料という観点から研究と教育を進めております。そして、ここ数年は大学の専攻の就職担当として、私どもで教育した学生をいかに企業の皆さん、あるいは研究所の皆さんに紹介していくかというような橋渡しの役もやってまいりました。私どもの専攻では、実は青森県の六ヶ所村で社会人教育ということで、日本原燃さんほかの社会人の方にここ10年ぐらいずっと社会人教育、社会人修士あるいは博士というようなプログラムをつくって学生さんを育ててまいりまして、その経験をこういうところで皆さんに御紹介してきょうの主題に何か貢献できればと思っております。よろしくお願いいたします。

○木藤課長 日本原子力産業協会の木藤でございます。よろしくお願いいたします。

私は学校を出てから原産協会で働いておりまして、今日までということになります。ただ、その間、退職して子育てという期間も数年ありましたので、たまたまこちらに再就職できたという状況で、ラッキーな中で働いてきております。原子力の業界を30数年、小さな穴から見ているというところで、主婦の時代にあったことも含めていろいろ感じるところがございます。きょうはそのようなところについても触れることになるのではないかと思います。そして、産官学連携で原子力人材育成ネットワークというのがつくられております。原子力機構さんと共同事務局を私どもが担当させていただいております。それは福島の事故の前の年にできたのですけれども、本日はそのような立場の意見も申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

○三浦理事 原子力機構理事の三浦です。

私は、大学は原子核工学科で、専門は核融合で、原子力機構の核融合、量子ビーム応用研究の一部は移管されたということで、研究仲間は移管したグループですが、私は東京の経営企画部というところの経験が長くて、その後もんじゅの改革にも携わって現在に至っています。現状は、原子力科学研究、安全研究、防災支援、人事・人材育成、試験研究炉の再稼働を担当しています。人事・人材育成というところが担当で、幅広い人材をどのように確保していくかというようなことに関して、きょう皆さんの御意見を伺いながら、私の考えも述べさせていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

○山口教授 どうもありがとうございました。

今御紹介いただきましたように各界からパネリストの方にお集まりいただきましたので、本日のテーマであります「我が国の将来を担う原子力技術と人材」ということで、非常に意義ある議論ができるのではないかと思います。

早速進めたいと思いますが、後ろに映っておりますスライドをごらんいただきたいと思います。現在、原子力の技術あるいは人材育成を語る上でどのようなことが公式に政策として、あるいは目標として据えられているのかということを整理してみました。

まず1つ目ですけれども、原子力軽水炉の安全技術・人材のワーキンググループというのが報告書を出しておりまして、その中で、原子力軽水炉をベースロード電源として使っていくということがうたわれてございます。そのために安全技術・人材をしっかり確立していかなければいけないということが書いてあるのですが、その中に、2020年までに技術及び人材を継続的に維持発展できるための枠組みを構築すると書かれております。それから、2030年には軽水炉あるいは原子力が重要なベースロード電源として社会にしっかり利用されているというような目標を書いてございます。そういう意味で、2020年に向けて軽水炉を利用する当面の技術・人材といったことが1つの目標になる。それが1つ目のポイントです。

2つ目ですけれども、福島第一の廃止措置中長期ロードマップ、これは社会からも非常に注目されている重要なロードマップであるわけですが、その中に廃止措置終了が30~40年後と書かれてございます。2011年から30年後といいますと、おおよそ2040年ぐらいということで、ここも1つの技術・人材育成のターゲットになるかと思います。

最後に、エネルギー基本計画で核燃料政策は日本の基本的な政策であると書いてあるわけですけれども、次世代炉、次世代のシステムの実現に向けて技術と人材を長い目で維持発展させていかなければいけない。これはまさに2050年を見据えたものになるわけです。

今の3つのビジョンをここに書かせていただきましたが、それを軸としてパネルの意見交換をさせていただきたいと思います。

最初に1つ目、一番近い目標としては、軽水炉を中心とした原子力がちゃんと社会に定着していくのかという問題です。軽水炉については、原子力人材育成ネットワークというものが、産官学を中心に、原子力産業協会が中核となられて構築されております。それから、原子力産業セミナーという形で、若い大学生とかの世代に原子力技術について広くお伝えするという企画もやっていらっしゃいます。そのあたりで中心的に動いていらっしゃる原子力産業協会の木藤さんにまず口火を切っていただいて、当面、2020年に原子力がベースロード電源として使われているという方向に向かっての人材育成なりの課題について、あるいは実績について御紹介いただきたいと思います。

では、お願いします。

○木藤課長 ありがとうございます。

それでは、口火を切るということですけれども、お手元の資料で、先ほどのテキストの中に参考資料というのが挟まっていたかと思いますので、これを見ながら、かいつまんでお話をさせていただきたいと思います。

順不同で、まず一番後ろをごらんいただければと思います。4ページの下の絵ですが、これが原子力人材育成ネットワークという今も御紹介いただきましたものの絵でございます。このように、産官学の関係機関が緩やかに手を取り合って、人材育成を効率的・効果的・戦略的に進めるために協力関係を結んでいるというものであります。この取り組みを始めたところで福島の事故が起きてしまったわけですけれども、その中でもこのネットワークは継続されて、今日まで、6年になりますが、続いてきております。これからもこういう形を維持するかとか、この連携の形が重要だということのあらわれではないかと思います。

このネットワークの中では、まずはいろいろと人材育成に関する情報を共有して、課題を出して、それに対応できる取り組みをやっていくということをしております。

課題を幾つか御紹介するということになりますが、上の絵をごらんください。大学の原子力関係の教員の数をあらわした文科省さんの資料になりますが、平成16年度、枠で囲った若手の30代のここをごらんください。平成16年度はこのぐらいの規模の先生方がおりました。それがだんだんと時間がたって、平成25年度、10年ぐらいたってみたら30代の先生はこんなにも少なくなってしまっているという現実をあらわしているものであります。この先をどのようにイメージして取り組んでいくかというのが課題かと思います。

次は、1つ前のページに移っていただきまして、早足で申しわけないのですけれども、機構さんの資料は私のほうではないので飛ばします。上の絵にメーカー6社の原子力部門の採用数というのがあります。それから、もう一つ前の2ページの下の絵が電力さんの原子力の採用数の状況です。両方とも見ていただいて、採用というのは2年前から始まりますから、企業は社会環境の変化に応じて必要な人材を確保していくということで、このようなグラフができているわけです。メーカーも見ていただくと、2013年が落ち込みました。その後戻ってきて、いろいろ調整があったりしての採用状況だと思います。このうち原子力の人々はどのぐらいの比率でとられているかというのは、そこの数字で0.25~0.3%ということになります。電力さんについても同じように2013年の採用は減りましたが、少しずつふえてきて、原子力の専攻比率も0.2%前後という感じになっています。どうなのでしょうか。福島の事故があって採用数がすごく減ったのではないかと皆さんも思われたり、報道されていますけれども、事故の前のほうがずっと少なかった時代が続いてきていたのです。そういうこともあらわしていると思います。このように、産業界は自社の必要に応じて取り組んで人材確保に努めているということになります。

さて、その上のグラフをごらんください。今、山口先生がおっしゃった原子力の合同就職説明会に来てくれた学生さんたちの数です。見にくくて済みません。左の絵で棒グラフが学生の数です。一番多かったのが2,000人、そこから500人ぐらいに減ってしまいました。これが福島の前と後の状況の違いです。その後もこのイベントに来てくれる学生さんがなかなかふえてこないというのが現状でございます。

右に専攻別の人数のグラフがございます。こちらも一番ピークの高かったときから下がったときを見ていただくと、原子力系の学生さんは余り変わらないでこの業界を向いてくれています。しかし、そのほかの工学系の電気、機械、化学、こういう分野の学生さんたちの関心が一向に戻ってきていない。そういう状況があるということを私たちは感じながら、いろいろと対策が必要ではないかと思うところです。

一番前の絵をごらんください。これが大学の原子力関連学科における入学者数ということで、こちらについても事故の後すごく減っているのではないかとか、いろいろな見方もあったようですけれども、原子力と書かれたここに挙げられたような学科の学生さんについては戻ってきていると考えられるのではないかと思います。

ここから原子力業界に入ってくれた皆さん、若い方々にはぜひ活躍してほしいし、これからも活躍の場がたくさんあるということなので、応援していきたいというのが私たちの気持ちです。

今のところは以上です。

○山口教授 大変おもしろいデータをありがとうございました。

これを見ると、学生の認識はそれほど悲観するほどでもないというようなデータもあり、一方、原子力以外の分野は戻ってきていないとか、大学の教員が随分減っているとか、問題が指摘されていると思うのですが、ここで大学で教鞭をとっていらっしゃいます長谷川先生と、きょうはJAEAの報告会でもあるのですけれども、JAEAが日本で研究を引っ張っていく意味では、そういうことに気概を持った若い人たちがJAEAに魅力を感じて取り組んでいくことが重要ではないかと思うのですが、そのあたり、若い人たちがこういう軽水炉利用についてどう思っているのかとか、意気込みとか、そのあたりをお聞きしたいと思います。長谷川先生、少しコメントはございますか。

○長谷川教授 きょうもこの会場の最前列に非常に若い、来年機構に入る予定の方がいらっしゃいますけれども、私どものところは学部は機械知能系です。原子力工学科とは銘打っておりません。それはなぜかといいますと、大学院重点化ということもありますけれども、高校生の皆さんに原子力ということのメッセージが届いていないのではないかという気がいたします。ただ、東北地方の特徴としてといいますか、隣が福島県でありますし、私どもの宮城県も若干の放射能汚染がありましたので、自分が何とかしなければいけないとか、社会貢献として自分たちのふるさとを何とか取り戻したいというような形で非常に意識の高い生徒さんもいらっしゃいます。今、世の中はロボットとか宇宙とか飛行機とか、ほかにもいっぱい魅力的なものがあるわけですから、そこに対して原子力がどれだけ光っているかというと、ちょっと難しいな、高校生あるいは中学生にメッセージは届かないなとは思っています。ただ、一旦大学に入ってしまえば、いろいろな技術とか分野の重要性は、それなりの教育を受けた若い人たちですので、十分わかるはずです。ですから、入ってからでも教育して、こちらの分野に貢献したい、またそういう企業にぜひ就職したいという意識の高い学生はある程度います。そこは伝え方の問題だろうと思います。世の中これだけいろいろなものがあるとそちらに目が行ってしまいますから、そこをうまく取り込んで、我々のところで、あるいはこういう業界で何が必要なのかということをきちんと伝えることが大事ではないかと思っています。

○山口教授 ありがとうございます。

三浦理事はいかがでしょうか。先ほどの点。

○三浦理事 原子力機構では、若い人の人材確保ということに関していろいろ活動をやっています。その中で夏季実習生というインターンシップの活動がございます。そこではこれまで興味を持ったところで夏休み1カ月ぐらいの仕事をしてもらっていたのですが、そのことに関して、原子力機構でどのような研究開発をやっているかということを懇親会も含めて積極的に説明するような活動をして、皆さんから非常に評判がよくて、原子力機構の研究者がどのように研究をやっているかということもわかっていただくという活動をして、原子力の魅力を皆さんに伝えていこうとしています。そんな活動を一生懸命やっています。

○山口教授 ありがとうございます。

今のお話を伺うと、今の長谷川先生のお話では、中に入っていろいろ勉強し始めるとだんだん興味が湧いていくけれども、最初に魅力が伝わっていないというお話、三浦理事からは、夏季実習生とかそういうものには伝えているけれども、言い方を変えますと、それ以外の方には伝わっていないようにも見えます。先ほど木藤さんから人材育成ネットワークというのがあって、これはいろいろなところが協力して外に向かって発信していくということだと思うのですが、そのような問題点が指摘されるということは、本当にこういうものが機能しているのかと思うのですが、木藤さん、そのあたりはいかがでしょうか。問題点とかを出していただいたらと思うのですけれども。

○木藤課長 ありがとうございます。

問題点というか、これも緩やかに自主的に参加して、自分たちのできる活動を提供し合うというような形だと思っておりますので、問題点があるから、困るから何とかせよと言えないところが困るのかもしれないです。全体でまずは戦略をつくる。戦略がないというと何ですけれども、ネットワークでは、原子力人材育成のロードマップというのを2014年にようやくつくることができました。それまではそういうものもなく、本当に各機関の自主性に任された活動だったのですけれども、対象をある程度定めて、教育機関、若手技術者、中堅技術者、海外人材育成、この分野が重点だということにして、そこへの課題、これから取り組むべきことをロードマップということでまとめて、このロードマップに沿って活動していくということを決めているわけですけれども、今のところ参加している機関は73です。これはどちらかというとリーダー的な立場、というのは変ですが、ここでモデルをつくって、これが産業界の中により広がるということを狙っているのだと思っておりますけれども、参加機関がなかなか全部ではないし、そもそも原子力関係者だけなのです。原子力関係者だけがここにいて、原子力でない子たちに振り向いてほしいということを言い続けなければいけないところがなかなか難しいというか、無理があるのではないかと思うところもありますので、こういうものはコアとして必要なのですけれども、もっとオープンにして、みんなで困っているから助けてくれとか、一緒にやっていこうということを言っていかなければいけないのではないかというのが、これは全く私個人の気持ちです。

○山口教授 ありがとうございます。

大分問題点が浮き彫りになってきたような気もいたします。いずれにしても、内弁慶過ぎるというような形なのでしょうか。

○木藤課長 どうなんでしょう。内弁慶というか、まずは自分で何とか考えないとどうもならないですし。でも、原子力の人たちは、困っているから助けろと全然言っていないのではないかと思うのです。原子力に人材が必要だから来いと、やはり少し上から目線かなと思っているわけですけれども、これも個人の見解でございます。

○山口教授 どうもありがとうございます。

ここに書きましたように、2020年というのはあと4年しかないわけですし、2030年に原子力が継続的に利用されているというところまで15年ぐらいしかないわけですので、今御指摘いただいたような、もう少し原子力以外の分野も含めて、いろいろな魅力とかメッセージを出していくとか、木藤さんがおっしゃっていたように、73機関というのはほとんどの機関が入っているのだけれども、ボランティアベースでうまく効果が上がっていないようにも見受けられますので、これは喫緊の課題として、メッセージ性のあるもの、それから分野をもう少し広げていくような活動、そういったものが課題として摘出されたのかなと思います。

時間の関係もありますので、もう少し御意見をおっしゃりたい方がいらっしゃるかもしれませんが、また最後のまとめのときに御発言いただくとして、次に2つ目のテーマに移りたいと思います。

廃炉が30~40年ということで言うと、2040年、2050年、あるいは2060年にかけてという非常に長い時間スケールの問題になってくるわけですけれども、これについて、東京電力の松本執行役員は先ほどお話がありましたように実際に福島第一のさまざまな問題に直面されて、人材育成や技術開発の面で悩まれる点も非常に多かっただろうと思いますので、そのあたりから人材育成あるいは技術ということについて問題提起していただいて、これから福島第一の廃炉、あるいは原子力を安定的に使っていくためには、リプレースして、廃炉してというサイクルも定着的に整っていって、その中でいろいろな原子力の技術がサイエンスとかに発展していくという構図がないといけないと思うのですが、まず松本執行役員に口火を切っていただきたいと思いますので、お願いいたします。

○松本執行役員 本当に事故を起こしまして御迷惑をずっとおかけしているわけですけれども、通常炉の廃炉は海外でもある程度、国内でも一部始まっておりまして、それなりに落ち着いた、秩序ある形で技術が成熟してくるという段階にあったかと思います。ただ、突然に事故が起きまして、事故炉の廃炉という全く未踏の分野に我々は突然足を踏み入れることになりました。

事故炉の廃炉の通常炉との大きな違いということで言いますと、1つは放射性物質がむき出してそこに存在している環境であるということ、それから、敷地を含めて全体に放射線量が極めて高い状況、それから、結果的に、通常炉でクリアランスレベルをクリアできるようなレベルのものではないレベルになってしまった膨大な廃棄物がある、こういったところが特徴的に厳しい要素になっているかと思います。

こういう要素を乗り越えていくためには、遠隔の技術であったり、新たな計測の技術であったりということで、先端技術や革新的な技術をたくさん適用していかなければいけないという状況にあるかと思います。そういう意味では、技術的に見れば非常におもしろい。なかなか緊張して厳しい環境もありますけれども、技術的にはチャレンジのしがいがあるところではないかと思います。

ただ、私どもはこれまで目先の毎日の発電所の状況と格闘しているようなところがあって、どこにどういう技術が必要で、どういう魅力があったり可能性があったりというようなことについて皆さんにきちんとお伝えしたり、あるいはニーズがどこにあるのかというようなこともお伝えしてこれなかったというところが反省点でございます。大分発電所の状況も落ち着いてきている中で、これからそういうところをしっかりお伝えしていくということがまずは大事なポイントかなと考えてございます。

○山口教授 廃炉というのは新しくつくる話ではなくてクローズしていく話なので誤解されやすいのですけれども、大きなビジネスですし、技術的なチャレンジも多くある。今、松本執行役員から、ちゃんと魅力を伝えていなかったということもあったのですが、いかがでしょうか、人材の確保という面では、そういう仕事に継続的に若い人が入ってくるような構造といいますか現状になっているのでしょうか。それとも、このままいくと人材もシュリンクしていって将来不安要素があるという懸念があるのでしょうか。そのあたり、松本さん、いかがですか。

○松本執行役員 実際に大学なりを卒業して入社を希望される方がいらっしゃって、その中には強い使命感を持って廃炉に取り組みたいという気持ちを持って参加していただける方もいらっしゃる状況であります。

それから、国からも御支援をいただいて、英知の結集という視点から各大学で廃炉関連の講座をつくっていただいて、そういうところに若い学生さんが来て、そういう方々にも現場をごらんいただいたりしながら人材を確保していくということをしているところでございます。

廃炉技術とは一体何だというところはまだ我々も確たるものができているわけではないのですけれども、今までやってきたことを取りまとめながら、廃炉におけるコア技術とは何だろうというようなことは社内的には検討を始めているところでございます。

○山口教授 ありがとうございます。

そういう意味では、本日もJAEAから廃炉に係るいろいろな研究開発の御紹介があったところですし、今、松本さんから国がいろいろ支援をしているというお話もありましたので、廃炉の技術・人材がこれから継続的にきちんとうまくいくのかという観点で三浦理事と中川さんに御意見なりサジェスチョンをいただきたいと思いますが、三浦理事からお願いできますか。

○三浦理事 福島関係では、10月に内定式があったのですけれども、原子力機構の福島に配属される方々のテーブルに伺うと、皆さん使命感が非常に強くて、福島の廃炉に関して仕事をやっていきたいという方が多かったので、仕事として使命感を持ってやっていただける方は多いということで、先ほど山口先生から後ろ向きの話もありましたけれども、その部分では、皆さん使命感を持って、非常に強い意志で仕事をやっていただける。その意味で、そういう方たち、あと大学におられる学生の方々にそういうことがどこまで伝わるかは重要なことではあろうかと思いますけれども、継続的にやっていっていただけるのではないかと思いました。

あと、廃炉とは違うのですけれども、きょうの福島の話の中で、除染に関することで、セシウムが風化黒雲母の中にどう入っていくかという部分で、我々がアクチノイドの研究をやっていたところから共有結合が起こってということのシミュレーションも含めて、研究をサイエンスまで深めていくということも魅力を示す大きなファクターであると思っています。そういう活動をしていくことで福島の仕事を継続的にやっていただける人たちが維持できるのではないかと考えています。

○山口教授 今のお話で、廃炉あるいは除染とかクリーンアップという中でサイエンスが育つ芽は非常に多いと思います。特に福島の廃炉は初めてのことですし、国としてどうかかわっていくか、どう支援していくか、あるいは人材についてもどう確保していくか、お考えを頂戴したいと思いますが、中川さん、いかがでしょう。

○中川審議官 私は今の先生の問題提起に直接答えられるかどうかわからないのですが、先ほど自己紹介でも言ったように、私自身はきょうのパネラーの中では原子力行政からも長く離れておりまして、とりわけ、ついこの間まで科学技術イノベーション、イノベーションで国を明るく未来に向けてチャレンジしようという計画を練って、その中で人材育成とか技術開発を議論していました。そういう立場からきょうの御議論とか今の議論を聞いて、多分通じるものがあるので、もしうまく言えなかったら補足していただきたい。

そのときに第5期の科学技術基本計画というのを書いたのですけれども、安倍総理が、皆さん御存じかわからないのですが、世界で最もイノベーションに適した国にしようという話をしたのです。それを3年ぐらい一生懸命やりまして、イノベーションに適した国といいながら、みんなしかめ面していろいろ考えていたのですが、そうしたら、ある人が、イノベーションをやるのに、おまえが笑っていなくてイノベーションできるかと言われたのです。そういう中で人材育成の議論をやっているときに、原子力の人材育成を議論しているときに、ここが魅力ある職場だ、胸を張ってこんなすばらしいことをやっているのだというものがあるかないかというのが一番のポイントではないかと思っていて、そのときに、そこまでだったら評論家になってしまうのですが、私自身、きょうの前のセッションの議論を聞いたのと、先月末に25年ぶりぐらいに東海事業所に行ってまいりました。きょう話された、新しく入られた方からすると諸先輩はすごく胸を張って、立派なことをわくわくしておっしゃっておられた。東海の事業所にみんな大変なときだなと思って行ったら、そこには施設があり、核物質があり、廃炉するいろいろなものがあったのですが、そこの現場の技術者、研究者、事務の方全てが生き生きとやっておられて、この職場は本当に魅力ある職場だと私は思いました。私自身が原子力行政を30年前にやって、これはとてもチャレンジしがいのあるところだなと。

逆に、なぜ特にそれを感じたかというと、イノベーションの国をつくろうといったときに、第5期の基本計画の1つのポイントは、産業界も学も官も連携するとよく言うのですけれども、単にそれぞれの注文を言い合うとか単につなぐということではなくて、今は世界が大変革時代でどんどん変わっていくときに、産業界も人材育成を一生懸命考える、大学の先生も一生懸命考える、基礎研究も一生懸命考える、先ほど三浦理事がおっしゃった、本当の基礎研究のデータのデータでないと世界の産業競争に勝てないという時代になると、みんなで一緒にそれを考えよう、産業界と学も役人も一緒になって頭をやわらかくして考えようといってつくりました。

ところが、そこまではいい計画ができたなと思ったら、実際にやってみると、産と学との連携とか研究開発機関の連携とか、言うは易しだけれどもやはりそれぞれの言葉がうまく通じないと言われているときに、何が一番問題だったかというと、チャレンジする課題、産業界はもうけたいと思う、研究者は一生懸命いい研究を出したいと思う、地域の方、研究開発機関もいいデータを出したいのですけれども、これがばらばらでなかなか通じない。そういう中にあって、今、松本さんがおっしゃられた廃炉の技術開発、今まさに福島のあの課題にチャレンジして、そのときに先ほど御紹介のあった原研機構のデブリのデータが生きている、その技術が生きている。要するに、課題を共有できて、一緒に汗を流してチャレンジできる。何もないところではそれはできないのですけれども、原研機構にはその芽と人材が既にある。だから先ほどのようなプレゼンがあって、現に動いている。これはなかなかできることではない。かつ、三浦理事がおっしゃったように、福島の方々と一緒にセシウムの話を本当に解決しなければいけないということがあると、先ほどのマッピングで出てきた異分野融合とか異分野連携ができてきている。全く疑いなく先生方はそうおっしゃっている。実は、我々科学技術政策をやっていて、大学の先生方は頭がかたくて異分野融合というのはうまくいかないんだよなとか、産学連携というのはうまくいかないんだよなみたいなことばかりやっているところから見ると、それから人文科学、社会科学との連携も一緒にできるところ、先ほどの図をごらんになっても、いろいろな学問が一緒に連携して同じ課題を解決する、セシウムの課題をどうやったらいいかということを一緒にチャレンジしている、そういうものがある職場、そういうものがあるところに人が寄せられていく。魅力的な職場がある。それが結果的に人材育成になるのかなと。

ちょっとずれてしまったら済みません。

○山口教授 ありがとうございます。

理念としてはまさにそのとおりだと思うのですけれども、松本さん、今御指摘いただいたように、連携するといってもなかなかうまくいかない。中川さんにおっしゃっていただいたのは、目的・目標をきちんと共有して、それで産学連携の仕組みがうまくって、そうすると初めてプロジェクトがうまく進展するというお話ですが、そういう意味で、JAEAとか研究機関も大学も今は競争的資金で動いていますし、果たしてうまくいっているのかという、その辺の現状を御紹介いただけないでしょうか。

○松本執行役員 福島の廃炉は待ったなしの課題が多くて、最近、自分たちで息もできないぐらいの感じでやっていたところから少し声が出せるようになってきて、我々から強くニーズを発信していこうということでニーズを出すのですけれども、例えば大学の基礎研究みたいなところで出てくるシーズとの間のマッチングというのは大分距離があって、なかなかすぐにはヒットしない。それから、もともと話している言語も大分違うような感じで、間に通訳のような人がいてくれないとシーズとニーズがうまくマッチングしてこない。これは大きな課題として認識されて、例えば経済産業省とか、あるいはその下に廃炉の関係でNDFと呼ばれる原子力損害賠償・廃炉等支援機構という機構がございまして、その中でもそういう課題を解決していこうということで、高木経済産業副大臣に音頭をとっていただいて廃炉研究開発連携会議という会議体ができまして、そこでうまく翻訳ができて、本当の基礎研究から本当の現場の適用までの間をうまくつないでいこうというような試みが始まっているという状況でございます。この中で通訳として最も期待されているのが原子力開発機構の中の廃炉国際共同研究センターということで、CLADSという組織がございますけれども、この方々はアカデミズムも理解する、現場の適用もある程度わかる、だから通訳になっていただけるのではないかということで、そういった仕組みが動き出しておりまして、私どもも大変期待しているところでございます。

○山口教授 どうもありがとうございます。

いろいろと意見がありましたが、今、CLADSというお話があって、そういう意味で廃炉の場合は目標が非常に明確だと思うのです。それに向かって連携が進みつつあるという話で、もう一つ、JAEAがそこのニーズとシーズのマッチングの翻訳といいますかリエゾンの役割を果たしている。もう一つ、先ほど出たのは、そういう研究の中からいろいろサイエンスの芽が出ている。廃炉が魅力を発信できていなかったというお話が最初に松本さんからあったのですけれども、こういう研究や技術を体系化していくことがこれから長期にわたって重要で、そういうことができればそういう技術開発の魅力がぐっと高まっていくと思いますので、非常にいい提言を幾つかいただいたと思います。

どうぞ、長谷川先生。

○長谷川教授 廃炉というのはいろいろな分野にまたがっていますね。ロボットとか、除染とか、一番問題なのはデブリの問題とか、それから容器の健全性とかいうのが出てきています。大学でもそういうプロジェクトを立ち上げたり講座を設けて、JAEAさんとか電力の方たちを呼んで、学生にいろいろ情報を流してもらっているのですけれども、それぞれの分野によって取り組み方が違うと思うのです。ロボットというのは、例えば原子炉の中のロボットであれば、どこでもいいからその形状を模擬すれば、シミュレーションなり動作の確認ができるわけです。それでもなかなかうまくいっていないようですけれども。ところが、デブリの問題になってきますと、核燃料を扱える施設がどこにあるかと。名目的には核燃料を扱える施設は全国の七帝大とか幾つかの大学にありますけれども、現在、廃棄物の問題で現実に核燃料を扱える施設はそんなにないのです。JAEAに行けばできる、あるいはサイトに行けばできるという話では裾野が広がっていかないと思うのです。各大学でなら、ちょっと考えたアイデアをさっとやってみて、うまくいくかいかないかというところで芽を探して、それで次に大型資金を取る申請をするとかできるのですけれども、そこまで出ていかないとできないという状況がすごくまどろっこしい。特に核燃料関係のデブリや何かの研究を見ていると、私はそんな気がいたします。分野によっては非常に進むところもあれば、本当に施設の問題で、もう少し施設を研究のための融通がきくようにする制度とか、そういうのがあればもっと盛んに、いろいろな大学・研究所でできるのではないかと思っています。

○山口教授 今、施設の問題を御指摘いただいて、これももう少し後のほうで議論したいと思いますけれども、施設と非常に関係するところで、3つ目に書いてある核燃料サイクルあるいは次世代システムの実現に向けてということでは、JAEAでいろいろな施設を持っていらっしゃいますし、役割は非常に重要だと思うのですが、私が以前にお話を伺ったところでは、サイクル関係で東北大学は日本原燃と非常にうまく連携されていて、原燃の方が東北大学で研究をやって、逆に原燃のいろいろな施設をうまく活用されてというような状況で、地の利といいますか、近いこともあると思うのですが、私はそのあたりはグッドプラクティスではないかなという気もしていまして、3番目の将来に向けた次世代システムとか核燃料サイクルの話をどうやっていけばいいのか、それは、大学の先生でもいらっしゃいますし、長谷川先生に東北大学の取り組みとか将来へのこういう分野の展望も含めて、まず問題を洗い出していただけないでしょうか。

○長谷川教授 御紹介ありがとうございます。私どもの量子エネルギー工学専攻では、六ヶ所村における原子力にかかわる社会人を中心とした教育・研究活動を平成17年ぐらいから始めております。これは福島の事故よりはるか前から、もう10年ぐらいになるのですけれども、それは、私どもの専攻で、ビジョンといいますか、原子力を中心に研究とか教育を進めていくと、その当時、今もそうですが、核燃料サイクルシステムは非常に重要な技術であり、それをしっかりと確立していくことが重要であると認識いたしまして、我々ができるところはどこかということで、ちょうど六ヶ所村で日本原燃の工場が立ち上がりつつあったときで、そこに我々の大学が何かできることがあるかと、社会あるいは企業が求める人材を我々も掘り起こしに行ったという言い方は変ですけれども、そういう形でアプライしていきました。日本原燃さんのいろいろな担当の方とか役員の方にお会いして、高度専門技術を受けさせたい、あるいは受けたいという人、需要のほうですけれども、それを何とか掘り起こしまして、それに対応して大学は何ができるかと。制度をもっと柔軟に考えて、社会人向けの教育システムあるいは単位取得システムを整備いたしました。ただ、グレードを落とすわけにはいきませんので、審査は非常に厳しいのですけれども、できるだけ社会人の方が働きながらそういう勉強ができて、さらに一段ステップアップできるような仕組みを私どもで提供しようと。まずは地元というのは変ですが、東北地方からということで、そういう仕組みを始めました。

今のところ、年に1人ないし2人ぐらいの博士の学生が卒業しております。これを多いと見るか少ないと見るかですけれども、私どもの博士の定員が年に10人ぐらいですので、私どもとしてはほどほどの規模かなと思っているのですけれども、学生を育てて博士にするためには資金等が必要です。ただ、このプログラムは私どもは独自の資金で始めました。内部資金で始めています。文科省がこういうプログラムで研究をやりなさいという話ではなくて、私どもがみずからこれが必要であるということから動き始めて、結果的には文科省さんにいろいろとサポートする予算をいただいたのですけれども、何でも人材育成プログラムというのは長くて5年ぐらいで予算を切られてしまいますので、予算を切られたらそれでおしまい、あるいはそれで先生を雇えなくなってしまったというのが現実に起こり得る話ですけれども、私どもは内部努力でそこの予算をひねり出すという形でやってきましたので、いろいろありましたけれども、何とか今まで続いているのではないかと思います。

もう一つは、各教員の研究のレベル。大学というのは、ただ教えているだけでは予算はつきませんし、研究予算もつきません。先生がそれなりのレベルの研究をして大型資金を取ってこない限りは、修士であれ、博士であれ、研究することはできないわけです。ですから、ある意味で先生方にも一生懸命やっていただきまして、何とか今まで続いているわけです。

もう一つの仕組みの工夫としては、核燃料サイクル技術というのはかなりセキュリティの厳しい領域です。ですから、日本原燃さんで働いていてそういう分野にいたら論文を公開論文にできないとか、そういうものがいっぱいあるわけです。そういうときに私どものところの教員が、自分たちの研究テーマで修士論文とか、あるいは博士論文も面倒を見るよと。ただし、学生は3年で博士を取れますけれども、社会人で働きながら3年でドクターを取るのはなかなか難しいので、私どものところは、社会人特別選抜とか長期履修制度といいまして、最初に入学するときに、私は5年かかります、6年かかりますという宣言をすると、3年分の学費で最長6年間いられるのです。私どものところは六ヶ所に分室があって、そこで研究ができるのですけれども、皆さん、月曜日から金曜日までは働いていらっしゃるのです。その後講義をしたり、あるいは博士論文、修士論文の研究は土日にやるのです。それは自己研鑽だから労働時間に入らないで、今の世間的な話で言いますと、研究している時間も全部就労時間に含めれば残業時間何十時間、100時間とかになってしまいますけれども、そこは自己研鑽なので多分大丈夫なのでしょうね。私は余りそこは詰めて考えたことがないのですけれども。でも、皆さんすごく一生懸命やっておられて、土曜、日曜でも私どもの分室に来て修士論文や博士論文の研究をされています。皆さんが全員それでドクターとか修士が取れたわけではなくて、家庭の事情とか勤務状況に応じて断念された方もいらっしゃいます。でも、そういうのを自主的な活動として原燃さんもいろいろな意味でサポートしてくださっているのだと思いますけれども、私どものところに呼び込んで研究して、大学であるがゆえに知ることができる広い視野とか見識を得ていただいて、また企業での活躍にそれを生かしていただいて、よりレベルの高いリーダーになっていただくような人たちを私どもが育てていければ、将来的には私どものところの学生もちゃんととっていただけるし、企業の方からも社会人の学生として来ていただくという意味ではウィン・ウィンというか、持ちつ持たれつというような関係になるのではないかと思っています。

具体的に共同研究が成り立っているかというと、そういうものはありません。まだ日本原燃さんも実際に操業しておりませんので、外に対してそういう具体的な活動はできないので、社員の中でそういう意欲のある方に勉強の機会を与えてくださっているという意味で非常に頭の下がる思いもありますし、学生さんも社会人コースでドクターを取るのは本当に大変だなと、私は学生を指導していてつくづく思います。ただ、そういう努力をして頑張っている方がいるということは将来の人材につながるのではないかと思って、今いろいろ活動しているところです。

○山口教授 どうもありがとうございます。

今、最初は国の支援で始められたというお話もあったのですけれども。

○長谷川教授 いえ、最初は独自予算です。始めてから後で追いかけて国にサポートしていただいたということです。

○山口教授 次世代システムについては三浦理事にお伺いしたいのですが、高速炉サイクルも含めて、これが日本の最終的なエネルギー確保の絵姿だと思うのです。そういう意味では、ここに2050年と書いてあるように、実用化まで長いタイムスパンで見ていく。そういう技術・人材について、JAEAは本当にそういう長期を見据えて開発できる体制にどれぐらい取り組まれているのかというあたり、現状をもう少し御紹介いただければと思いますが、いかがでしょう。

○三浦理事 次世代に向かって、今、高速炉関係ではナトリウムの施設からコールドの施設を含めて多くの施設を持って研究開発をやっているという体制で進んでいます。

私は、次世代に向かっていくシステムとして考えたときに、やはり原子力の基礎的なところが重要だと思っています。そのことに関して、先ほど施設の話がございましたが、研究開発をどうやっていくかということに関して、原子力の研究なので原子力の施設を用いた研究が必要であると思います。我々の施設中長期計画案の中では新たに10個廃止する施設を検討していますけれども、その中でホットラボとかそういう施設を用いた研究に関しては、よいテーマを立てた共同研究なりを実施し、その中に大学院生とかが来て、実際に原子力の施設を使って研究開発をしていただくというのが重要なことではないかと思っています。そういう意味で、今は試験研究炉が動いていないとかいう問題もあり、申しわけなく思っているところです。常陽も今年度中に新規制基準に対応するという状況になっていて、そういう意味で施設はちゃんと整えて、基礎的なところから人材育成をする。ただし、大きなプロジェクトになりますので、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネジャーという存在を育てていくということももう一つ重要なことであると。だから、そのときにプロジェクトリーダーが基礎的な基盤の上にプロジェクトを引っ張っていくということが重要ではないかと思っています。

○山口教授 ありがとうございます。

そういう意味では、施設の維持もそうですけれども、国がどういう役割を果たすか、まさに今、高速炉開発というのがそういう意味で議論されているところだと思います。中川さんにもぜひお伺いしたいのですが、そういったビジョンをつくって、それを実際に実践していくという中で国がどうやって、そのほかのJAEAとかのプレイヤーがどうかかわっていくのか、そのあたりの御意見をいただけないでしょうか。

○中川審議官 あるべき姿とか未来がこうなるというのは国がある程度示して、一丸となってやっていくというところがあるかと思うのですが、先ほど長谷川先生がおっしゃったように、国が示してこういうことでこういう人材育成をしようねというのは余りうまくいったためしがなくて、長谷川先生がこういう人材を東北大学として自腹を切ってでもやってみようというものから湧き出てきたものが本物を生み出して、そこに国の資金もついてくるというような時代にだんだんなってくるのだと思います。

その意味で、繰り返しになってしまうのですが、これから世の中はどんどん変化し、チャレンジし、新しい課題がどんどん出てくるときに、国ももちろん音頭をとっていくのですが、国はどちらかというとつなぎ役であったり、プラットフォームを設定するとか、そういう役割の中で、例えば先ほど松本さんがおっしゃっていた、電力さんと研究者の話が通じないときに原研機構さんがまさに間に入って、廃炉センターがそういう役割をしていく、そういった設計とかプラットフォームをつくるのは国の役割かもしれないのですが、答えは一個ではなく、どんどん変わっていくので、一緒に汗を流したり知恵を練ったりするということになっていくのだろうと思いました。

○山口教授 どうもありがとうございます。

もう大分時間が押してまいりまして、きょう私のほうで提示しました3つの課題に一通り御意見をいただいたと思います。

残りの時間で私なりに整理してみたいと思いますが、スライドの下のほうに目標設定と戦略の構築、連携のあり方と書いてございます。これは私なりにこういうものが重要かなということを考えて書いたのですが、きょうのパネルの中では、それに加えて、いかに魅力を発信していくか、特に外の社会、分野に向けて、それが1つ重要な御指摘であったと思います。

それから、連携のあり方と書いてあるのですが、連携もただネットワークができましたというだけではだめで、例えばJAEAがリエゾン役としてうまく機能するとか、今、中川さんがおっしゃったように、それぞれが主体的にリーダーがちゃんと引っ張っていって、それを国が横から支援するような形、東北大学では自立してプログラムを動かしているという御説明がありました。そういう実効的な分野連携のあり方が1つ重要なポイントかと思います。

それから、施設の話があって、これは皆さん危機感のあるところだと思いますが、それについて、技術・人材を支えるには施設は不可欠ですので、重要な問題だと思います。

最後に、何人かの方から幾つかのところで出てきたのが、サイエンスにつながる話、それからリーダーシップをとれる人材を育てていくとうまく動いていく話、そういった点が非常に印象に残ったポイントとしてまとめられると思います。

いかがでしょうか。パネリストの方から、最後に何か御発言はございますか。

○木藤課長 特別あれではないのですが、1つ、今回は国内を見た話にとどまっていたと思いまして、国際的視野を持つということと、IAEAと連携するとか、そういう視野を当然のことながら忘れないということだと思います。

○山口教授 今、国際的な視点と。まさに原子力は世界に向けて仕事をする世界ですので、よい指摘をいただいたと思います。

○中川審議官 済みません、ぜひメッセージとして。先ほど松本さんがおっしゃったように未踏の分野だと。あるいは、こういうものはどこにもない。例えば、ちょっと飛んでしまうかもしれないですけれども、非核兵器国としてこれだけのプルトニウム燃料を持ち、保障措置技術を持っている。持地さんが説明されたと思いますが、そういうものは恐らくオンリーワンなのです。オンリーワンというのは、これからの時代、とてもチャレンジがしやすいし、誰もやったことがないものなので、物すごくハードルは高いし、物すごく大変だと思うのですが、チャレンジしがいのあるところだなと思いました。特に、きょうは前2列に若い方々がおられるので、この機構、児玉理事長があれだけのビジョンを持たれて、明確なメッセージを立てられて、やるべきことが前にあって、チャレンジしがいのある、本当にいい会社に入ったねということを申し上げたい。なぜかというと、3番目以降におられるきょうお集まりの皆様は、もしかすると私自身が原子力行政官として育てていただいた、お世話になった方が後ろにもたくさんおられるので、恐らく原子力総合技術というのは、この超イノベーティブ研究開発機構という集団は、これから未来を背負う、それからつぶしがきく集団だと思いますので、頑張ってくださいということです。

○山口教授 大変よくまとめていただいて、エールを送っていただいたと思います。会場には若い方も随分いらっしゃると思いますけれども、かように原子力の技術というのは今は目標も明確ですし、非常に魅力的なところは多々あると思いますので、ぜひきょうのテーマ、原子力の技術と人材というのを、皆様の協力と、特に若い人が支えていただいて、引っ張っていただいて進めていければと思います。

では、以上でパネル討論を終了したいと思います。

パネリストの方々には大変活発に御議論いただいて、よい意見をいただいたと思います。どうもありがとうございました。