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第11回 原子力機構報告会
「我が国の将来を担う原子力技術と人材」

高速炉サイクル実用化に向けた機構の取組 -研究開発インフラの再稼働に向けた準備- (テキスト版)

高速炉サイクル実用化に向けた機構の取組
-研究開発インフラの再稼働に向けた準備-
高速炉研究開発部門長・理事 吉田信之

御紹介いただきました、高速炉部門長の吉田でございます。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 私からは、高速炉サイクルの実用化に向けました機構の取り組み、中でも研究開発のインフラの再稼働に向けました準備について報告させていただきます。

P) 本日の報告内容は、こちらのスライドに示すとおりでございます。

現在、皆様御承知のように、もんじゅに対する規制委員会からの勧告に端を発しまして、原子力関係閣僚会議並びに高速炉開発会議におきまして、高速炉サイクルの実用化を目指したさまざまな議論が進められております。こうした議論の中に原子力機構も参画しているわけでございますけれども、本日はその高速炉開発会議における議論に深く立ち入ることはせず、しかしながら、こうした現状も踏まえ、この分野における機構の取り組みを御紹介したいと思います。中でも再稼働を目指しております幾つかの施設については詳しく御説明したいと思っております。また、高速炉分野の人材育成につきましても御説明したいと考えてございます。

P) まずエネルギー基本計画でございますが、こちらに示しますように、平成26年4月に閣議決定された計画によりまして、我が国では核燃料サイクルを推進していくという基本方針のもと高速炉の研究開発を行う、中でもその研究開発のよりどころはもんじゅ研究計画に沿うということになってございます。

そのもんじゅ研究計画でございますが、下に示してございます3本の柱が立ってございます。すなわち、高速増殖炉の成果の取りまとめを目指した研究開発、廃棄物の減容化あるいは有害度の低減を目指した研究開発、そして3.11以降強化されました高速炉の安全性強化を目指した研究開発でございます。

P) このもんじゅ研究計画を実現するため、原子力機構におきましては、第3期中長期計画におきまして高速炉研究開発の計画をつくっております。それがこちらのスライドでございます。すなわち、まずもんじゅにおける研究開発ということでございまして、もんじゅは新規制基準等への対応をして運転を再開し、その後データをとっていくということになってございますし、もんじゅに続く次の高速炉ということで、2番目の高速炉サイクルの研究開発、ここにはフランスとのASTRID協力といったものも含まれてございます。さらに3番目でございますが、有害度の低減に向けた研究開発を進めていくということでございます。

その進め方につきましては、児玉理事長の指導のもと、部門としてもMVSを定めまして、ストラテジーを立てて進めているところでございます。

P) 高速炉研究開発を担っております研究開発拠点をこちらに示しました。東海村あるいは大洗の茨城の施設を初め、敦賀のもんじゅ等々の施設におきまして研究開発を進めております。これに携わっております機構の職員の数は700人強でございます。

P) まずもんじゅの話をさせていただきたいと思います。

もんじゅは、規制委員会から受けました保安措置命令に対して改善活動を全力で行い、平成26年12月に一旦保安措置命令への対応結果報告を出しました。しかし、その後、保安規定違反の指摘等を受けまして、もんじゅ改革、さらには保安措置命令への対応を抜本的に見直すということで、オールジャパン体制による改善活動を実施してまいりました。

オールジャパンによる改善活動におきましては、主にQMSの改善、保全計画の見直し、保守管理業務にかかわるIT化等を進め、保安措置命令の原因となった法令違反状態は是正されたと私どもは考えまして、28年8月、ことしの8月に保安措置命令に対する対応結果報告書を規制委員会に提出したところでございます。現在は、新たにつくりました保全計画に基づき点検を実施しながら、さらなる業務改善を進めているところでございます。

一方、こちらの右側に書きましたように、平成27年11月に規制委員会から発出されました文科大臣宛てのもんじゅの運転主体に関する勧告、それからもんじゅのあり方に関する文科省での議論を経まして、ただいまのところ、高速炉開発会議で今後の高速炉研究開発の方針等が議論されているところでございます。

P) さて、もんじゅにおける新規制基準あるいは敷地内破砕帯への対応について御報告いたします。もんじゅを進めるに当たりましては、やはり新規制基準あるいは破砕帯への対応が大事だと考えております。

まず新規制基準についてでございますけれども、こちらにございますもんじゅの安全確保の報告書でございますが、これは、機構におきまして、高速炉の専門家の議論のもと、もんじゅの安全確保の考え方を取りまとめております。そして、昨年度まで国内外のレビューを受けまして、客観的な視点で安全対策方針の妥当性を確認してきております。今後、高速炉に関する新規制基準が議論されるときのベースになるものであると考えております。

その主な内容につきましては、こちらにございますように、炉心溶融が発生しても原子炉容器の中で安定して冷却保持ができること、それから炉心燃料が溶ける前に事故が収束できていくこと等が示されてございます。

一方、敷地内の破砕帯につきましては、平成24年以降継続的な調査を続けてまいりましたが、原子力規制委員会の有識者会合での議論の末、もんじゅの敷地内の破砕帯は活動性はないとする評価結果がまとめられてございます。今後、原子力規制委員会におきまして正式に報告される予定と伺ってございます。

P) こちらのスライドは、これまでのもんじゅの成果あるいは今後期待されるもんじゅの成果について取りまとめて高速炉研究開発会議に示した資料の一部でございます。

もんじゅは世界で唯一のループ型の大規模な高速増殖炉の発電所であり、これまでにみずから設計・製作・建設した経験を生かして得られたデータとか、あるいは平成7年までに行いました40%の出力試験の貴重なデータがございます。これらのデータを、ここに示しますように幾つかにカテゴライズして示してございます。図の中で緑の部分につきましては、既に成果が得られたものを示しております。また、白い部分につきましては、今後の運転により得られると期待される成果でございます。これから先、100%の運転をすればこれらのデータが全て得られることが期待されるわけではございますが、原子力機構といたしましては、もんじゅを最大限に活用し、高速炉の開発に役立てていく所存でございます。

P) 次に、高速炉サイクルの技術開発について御説明いたします。

こちらのスライドは、全体を1枚にまとめて示したものでございます。後ほど詳しく御説明いたします常陽とかプルトニウム第三開発室の再稼働に向けた取り組みのほか、フランスとのASTRID協力とか、右下にございますけれども、安全設計要件の国際標準化に向けた取り組みといったものがございます。

ASTRIDにつきましては、フランスとの間で、フランス原子力庁と原子力機構がその実施機関となり、その取り決めを結び、ただいまのところは基本設計の段階に移行してございまして、さらに設計協力の分野を拡大して研究開発を進めているところでございます。

また、右下にございます安全設計基準でございますけれども、これは我が国が主導して国際的な高速炉の安全設計の要件を整理し、まずはSDCという設計クライテリアとして取りまとめて、GIFの場で承認されたというものでございます。この我が国が主導してつくられましたSDCがロシアや中国、インドなどでも安全設計に実際に反映されるという意向が示されておりまして、我々は、今後これらのクライテリアをガイドライン、SDGに発展させるべく、今努力しているところでございます。

P) 次に、常陽について御説明いたします。

常陽は、日本初のナトリウム冷却高速実験炉として、ここに示す使命のもと、燃料や材料の照射試験等を行ってきておりまして、これまでに累積の運転時間は7万1,000時間、試験用集合体の照射実績は約100体の実績がございます。そして、常陽は、これまでの主な成果を右のほうに書いてございますように、増殖性能の確認とか、FBR核燃料サイクルの輪を完成するといった成果を上げてきておりますが、今後とも右側の下に書いてございますような4つの分野での研究開発が期待されているものでございます。

P) 常陽の再稼働に向けた取り組みということで、少し時間はかかりましたけれども、左下にございます燃料交換装置の復旧というナトリウム中での大きな工事を終えまして、これ自身も保全の大きな知見になりましたけれども、それらを完成させまして、ただいまは、新規制基準に適合させるべく、原子炉設置変更許可の申請を今年度中にやるべく準備を進めているところでございます。

再稼働後は、高速炉システムによる廃棄物減容、有害度低減の有効性を確認するための各種照射試験を初め、ASTRID協力等へも常陽を活用していくことを考えてございます。

P) 次に、もう一つ再稼働を考えております施設でございますけれども、東海にありますプルトニウム燃料第三開発室の再稼働に向けた取り組みでございます。

こちらの施設につきましては、常陽、もんじゅ用の燃料製造ということで、これまでに、ここに示しましたように、常陽で301体、もんじゅで366体という燃料を使用施設という許可のもとにつくってまいりました。真ん中の欄にございますように、昨年、原子力規制委員会から、この燃料製造に係る事業については加工事業化で行うようにという御指導を受けまして、ただいま加工事業化の補正申請を行うべく準備をしてございます。いずれにいたしましても、研究用の燃料につきましてはこの施設をフルに活用して取り組んでいく所存でございます。

P) 次に、大型のナトリウム試験施設、AtheNaと呼んでおりますけれども、大洗にございますAtheNa施設等を活用した安全性向上に向けた試験について御報告いたします。

ナトリウム冷却高速炉では、シビアアクシデント時の崩壊熱除去システムの冷却能力が非常に重要でございまして、炉心が著しく損傷するような事故が生じても炉心を安定に冷却できることを試験で実証することが重要と考えまして、これができる環境を整えてきているということでございます。AtheNaの大型の試験装置を用いる前に、ここにございますPHEASANTあるいはPLANDTLと言われているような小型の装置を用いて熱流動試験等を一部開始しておりますし、計画しているものもございます。今後、AtheNaで大型の試験をするべく準備を進めてまいりますが、こちらもフランスとのASTRID協力の中で、安全性向上の目的にこちらの施設を使うことができないかといったことについて提案し、今話し合いをしているところでございます。

P) さて、放射性廃棄物の減容化・有害度低減の高速炉を用いた研究開発についてでございますが、エネルギー基本計画では、高速炉は従来のウラン資源の有効利用のみならず、放射性廃棄物の減容化あるいは有害度低減の新しい役割が求められているところでございます。

その研究開発の1つとして、既存施設を利用してマイナーアクチノイド、MAをリサイクルする。小規模な試験ながら、SmARTサイクル試験といったものを計画し、一部実行に移してきてございます。

具体的には、常陽から出てきました燃料を、東海にありますCPFという施設でアメリシウム等を分離いたしまして、それを大洗のAGFという施設でMAの燃料にして、また常陽で照射試験を行うというものでございます。こういったことを通じて高速炉の核燃料サイクルが一貫してできるということを評価する目的で計画してございますが、現在、常陽の照射済燃料からMAを分離する作業を行っている段階でございまして、こちらのスライドに示してございますように、一部その成果が出てきているところでございます。

また、以前に購入したアメリシウム等を使いましたMA含有のMOXペレットの試作も終えておりまして、実際のMAを分離回収した後は、MA含有の燃料ピンを製造して、常陽で照射試験をするということも計画しております。

このSmARTサイクルを進めるためにも、常陽は早期の再稼働がぜひとも必要であると考えてございます。

P) 最後に、高速炉研究開発部門における人材育成について御説明いたします。

高齢化とか職員減少が進む中でプロジェクトが停滞し、技術継承が現実的な課題となってきております。この高速炉サイクル技術を支える人材とその基盤技術の整備・蓄積を進めていかなければならないのは、機構のほかの部門と同様でございます。

私どもとしましては、技術力の維持向上を図る観点では、実戦経験を積むということが非常に重要であると思っております。プラント施設であれば、今回の新規制基準への適合性の審査を受験するという中で資料をつくったり検討するということが人材育成にとって非常にプラスになると考えられますし、試験施設であれば、みずから設計、試験計画をつくって試験を進めるということでナトリウムの取り扱い技術をつないでいけるものであると考えてございます。

また、下に書いてございますように、これまでに国内外の多くの研究者を受け入れておりまして、国際的にもこの分野で貢献してきているところでございます。

いずれにいたしましても、今後、高速炉研究開発を担う次世代の育成のために施設を再稼働して活用していくということに努めてまいりたいと考えてございます。

P) 最後に、今後の取り組みを御説明して、まとめとさせていただきたいと思います。

核燃料サイクルの推進と高速炉の研究開発に取り組む方針を堅持することが日本の方針として示されてございます。したがいまして、原子力機構といたしましては、もんじゅ研究計画に定められましたミッションを確実に実施して、将来の高速炉開発に必要なデータ、これを確実に成果を出していくことが求められていると考えてございます。

さらには、廃棄物の減容化・有害度低減の効果と実現性を明らかにし、これらの成果を通じ、高速炉開発の具体化、国家プロジェクトに貢献してまいりたいと考えてございます。

御清聴どうもありがとうございました。