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第10回 原子力機構報告会
「原子力機構の新たな出発 ~研究開発成果の最大化と課題解決に向けて~」

高速炉サイクル確立に向けた研究開発の現状と今後について (テキスト版)

高速炉サイクル確立に向けた研究開発の現状と今後について
高速炉研究開発部門 企画調整室長 中村博文

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 御紹介いただきました、高速炉研究開発部門の中村でございます。本日は、ここにあります高速炉サイクル確立に向けた研究開発の現状と今後について御報告させていただきます。

P) まず今日の報告の内容でございますが、最初に、この高速炉サイクルというのを我々は長年やってきておりまして、震災を契機としてその開発が変遷しております。そのお話を差し上げ、また、それまでにどういう成果が上がっていたか、我々はどのレベルまで来ているかという御説明をするのが、FaCTフェーズIの成果の概要というものでございます。それから、現在の高速炉サイクル技術開発の意義、それからもんじゅの役割について御説明させていただきます。こういう前段でありまして、その後、今後の研究開発の展開を成果を交えながら御報告させていただきます。

P) 最初に、震災を契機とした高速炉サイクル研究開発の変遷でございます。

P) 我々はもともと、高速炉サイクルの実用化研究開発、これはFaCTと申しておりましたが、これを震災前までずっとやっておりました。2010年度、2011年3月末にフェーズIの成果をまとめようとしていたちょうどその矢先、3月11日に震災が起こりました。その翌週にまとめをやる予定でございました。この震災を受けまして、FaCTのフェーズIIへの移行は一旦とめようということが2011年に決まりました。

そこから我々は、下にありますように基盤技術の維持や安全性向上に取り組んでおりましたが、2013年に文科省でやられました委員会でもんじゅの研究計画が定められました。さらには2014年にエネルギー基本計画が定められまして、ここでももんじゅの研究計画を中心に高速炉は推進しましょうということが定められております。我々はそれに基づいて研究を今やっているという状況でございます。

P) ではどこまで我々の技術ができていたのかというのを御紹介します。

P) FaCTフェーズIの成果はほとんどまとまっておりましたが、大きくは炉システムと燃料システムの2つに分けられます。

炉システムについては、新しい技術、10課題と申していましたが、これのほとんどが採用可能だという判断を当時しております。実際にどのレベルかというと、実証炉の概念設計に移行可能な段階でございました。だから、あと5年これをやれば次の基本設計に移れる、そんな段階まで我々の研究レベルは来ていた。

燃料サイクルシステムにつきましては、再処理、燃料、それぞれ課題がございまして、これもおおむね採用できるだろうと。ただ、幾つかはもう少し時間がかかる。炉よりも少しおくれた感じの結果になっておりました。ここについては、ここにはLFと書いておりますが、Lというのは軽水炉です。軽水炉からF、高速炉への移行を考慮したプロセスや、あるいは工学規模の装置に関するさらなる基盤研究を進めていこうというのが現状でございます。

これらをまとめたときに我々は性能目標を定めまして、それについても評価をしております。開発目標として、安全性・信頼性や経済性、持続可能性、核不拡散性、こういうものを挙げまして、それに対して設計要求とその達成度を定量的に定めまして、これを評価いたしました。そのときの指標が、ここにありますような、シビアアクシデントの発生確率が非常に低いとか、経済性が今のほかのエネルギーとも競合できるとか、マイナーアクチノイドをちゃんと扱える、こんなことを評価しまして、それも達成できるという見通しを得ておりました。

P) そういう技術を持っておりますが、今、我々が高速炉サイクルの技術を保有するというのはどういう意味かというのをもう一度ここで確認したいと思います。

P) 今、日本では、1万7,000t余りの軽水炉から出てくる使用済燃料がございますし、原子力は我が国のエネルギー安全保障からも非常に重要なものと定められております。これを進めるためには、使用済燃料の問題や、あるいは核燃料サイクルをどんどん推進していくということが非常に大事です。

これを進めていくに当たって、日本が高速炉サイクル技術を保有するということが、ここにありますウラン資源の有効利用や環境負荷の観点から非常に有望であると考えております。

P) その資源有効性という意味では、高速炉を使うことで、皆さん御存じのようにウランをプルトニウムに変換して1,000年以上エネルギーとして使えるということと、今、地球にはウランが100年程度は埋蔵されているだろう、100年ぐらいは使えるだろうということがあります。ただ、100年であぐらをかいているわけにはいかない。というのは、高速炉サイクル開発にしても、数十年の単位での開発時間がどうしても必要だと。また、世界各国でも原子力発電は今ふえている状態ですし、その中でウランを本当に日本が今獲得しているだけの量ちゃんと将来も獲得できるか、この辺のセキュリティの問題があると思います。

また、環境に優しいという観点からは、高放射性廃棄物の量を減らすことが高速炉では実現可能だと。特にマイナーアクチノイドを減らすことには大きな意義があると考えております。これは使用済燃料のボリュームですが、それに対してガラス固化体、今やっています軽水炉で再処理するだけでも2割ぐらいには減りますし、さらに高速炉にすればそれからまた減らすことができるというものでございます。

P) こういう中で我々は、今、田口副理事長などからももんじゅの話がありましたが、そのもんじゅについて、研究の観点からどういう意義があるかを御紹介します。

まず3つの大きな意義があると考えておりまして、1つは、高速増殖炉技術の成果を取りまとめる。これは日本が自分たちの力で1つの発電プラントをつくりました。ここで出てきた設計や製造、建設のノウハウ、こういうものからさらに、プラントを動かしてそれを改良していくということが非常に大事だと考えています。

また、新しく出てきました廃棄物減容・有害度低減。これも、集合体規模での試験ができるということと、もんじゅの炉心の中には、アメリシウムというマイナーアクチノイドの1つでございますけれども、これが2%ぐらい既に入っております。長年置いていたということで、増えたということですが、結果的には、アメリシウム入りの燃料を今後動かすことによって、それがどういう特性になっているかというのをデータとして得られるということがございます。

それから、実プラントを使った安全性強化のためのいろいろな研究の場としても使えると考えております。

P) こういう意義を持って、我々機構としては、第3期中長期計画の中で、高速炉の開発を大きくはこの2項目に分けて整理しております。

1つは高速炉の研究開発で、これはもんじゅを中心とした研究開発、それから、それ以外のところでの安全性強化を目指した研究開発や、あるいはフランスとの共同でのASTRIDの開発、こういうものをやる。

また、燃料サイクル関係では、再処理や燃料製造技術のほかに有害度低減の研究開発を進めるとなっております。

それから、こういう研究を進めるに当たりましては、試験フィールド、これは日本では機構しか持っていないフィールドがほとんどでございますが、もんじゅ、これは早期の保安措置命令解除を頑張っているところでございます。

それから、高速実験炉常陽、これはトラブルを起こしましたが、それは既に今年解消しました。今、来年の変更申請に向けて準備中でございます。

それからプルトニウムの第3開発室、これがもんじゅや常陽のMOX燃料をつくるところでございますが、これにつきましても加工事業化を進めております。

また、ホットラボや照射後試験施設など、これについては試用施設でございまして、新たにできました新規性基準に対応する形での変更申請の準備を着々と進めております。

また、コールド施設でありますけれども、ナトリウムを扱う施設、これについては古い施設もございましたので、そういうのを集約しながら、新しいAtheNaという施設もございますが、こういうところに集約しながら試験をできる環境を整えているという状況でございます。

P) 我々は、今御紹介しましたような研究をやっていくことで、次の段階、実証技術を確立する段階にいろいろなデータを出していこうと。上が炉でございますが、設計へ取り込んでいったり、あるいは運転に反映させる、また、廃棄物低減については、その成立性を確認していこうと。そして将来的には実用のプラントあるいは実用の炉を目指していきたいと考えております。

P) 個別の研究成果でございますが、まずもんじゅでございます。

もんじゅについては、先ほども申しましたように、みずから設計・製造・建設したもんじゅを活用しまして、そこから出てくるデータを次の炉の設計に反映したいと考えています。

具体的にはこういう試験項目がありまして、それに対して、例えば炉心ですと、炉心設計手法、炉心管理技術の検証あるいはそれを改良していくというものに使えますし、機器・システム設計したものを、実際にループ型炉の動特性評価手法あるいは遮蔽評価手法、こういうものを用いてつくったわけですが、その妥当性をもう一度プラントで確認できるなど、実際のものを動かさないと出てこないデータをもんじゅで得たいと思っております。

P) また一方では、設計するに当たって安全の基準もつくっていかなくてはいけなくて、我々は今、世界の高速炉の安全性向上に向け、世界的な協力をしながら我が国主導で安全設計の要件を構築してきました。

具体的には、GIFという国際的な会議の中で、2013年にSDC、安全設計クライテリアというものを承認していただいて、その後、ロシアや中国、インドでもこれを安全設計に実際に反映するという意向が示されております。さらに、これはクライテリアですので、次の段階として、現在、それを設計に持っていくためのガイドラインを組み上げていこうとしております。

P) それから、基準という意味では、構造材料規格基準についても既に今つくってきておりまして、国内整備をして、それを国際規格へ反映していこうという取り組みをしております。これは、プラントのライフサイクル評価に基づく合理的な設計、できるだけ無駄のない、裕度を取り過ぎない、そんな設計を目指しますが、そういうことをするためにしっかりとした規格をつくることを考えております。これももんじゅを実際に動かしたデータ、あるいはとったデータに基づいて、さらに裕度を適正に設定できる、それで維持基準や信頼性評価ガイドラインができると考えております。

実際、我々がJSME等に既につくっているものもございますし、アメリカのASMEにもこれを反映していく、あるいは既に一部反映している。こういう活動をしております。

P) 一方で、過酷事故、シビアアクシデントの評価研究ということで、これはカザフにありますIGRという炉で、ここで2000年から始めておりますが、EAGLEという実際のウランを入れた燃料を溶かす試験をやっております。今年からは、EAGLE-3といいまして、溶融した燃料がどのように下に落ちていくか、この挙動を実際にウランを使ってやってみるという試験をカザフと共同で進めているところでございます。

P) また、国際協力という意味では、フランスとASTRID協力をやっています。これは首脳同士が合意しまして、既に2014年に締結しておりますので、我々は始めております。

まず手始めに、シビアアクシデント対策として安全設計の考え方を日仏で共有化して、我が国の設計技術をASTRIDに生かすということ、またそれをフィードバックして我々の設計に反映する。こういう活動をしております。

具体的には、ここにありますような、設計では崩壊熱除去系の設計や炉心停止、あるいは免震技術、こういうものをそれぞれ研究しているところでございます。

P) また、高速炉サイクル全体で見ますと、廃棄物低減の研究をサイクル全体を通してやろうと考えておりまして、炉としては常陽あるいはもんじゅを使ってやりますし、再処理としてはCPFという施設や、燃料製造としてプル燃あるいは大洗の燃材施設、こういうものを使って、それぞれ個別の研究をやるとともにサイクル全体の評価をする計画を持っております。

P) 具体的には、SmARTサイクルというものを考えておりまして、これは、常陽から出てきた炉心燃料からCPFでMAを分離して、これは1g程度をとろうと思っていますが、実際に溶解試験までやっております。分離してとれたものを今度は大洗のAGFに持ってきて、アメリシウムだけではなくて、炉からとれたアメリシウム、キュリウム、ネプツニウムを燃料にして、それをまた常陽に戻して照射試験をしようと、こんな計画を進めております。

これをするに当たって、既に我々はMAの分離技術については、これは試験管レベルですけれども、MAは99.9%とれるとか、既にMAの燃料ペレットをつくって、その物性をとったり、あるいは、常陽がトラブル前に既にMA入りの燃料を照射しております。それによって、アメリシウムはこのように中心に分布が高くなる、再分布している状況がデータとしては出ておりますが、こういうデータを用いながらこのサイクルをやっていきたいと思っております。

P) 今申しました常陽でございますけれども、常陽につきましては、平成19年5月に、MARICOというもの、照射リグが十分に切断できずにトラブルを起こしました。それから時間はかかりましたが、今年の6月に壊れた炉心内部の上部構造とかを全て取りかえまして、現在はもとの形に復帰しております。新規制基準対応をやらなくてはいけませんので、今その準備を進めているという状況でございます。

P) 最後に高速炉サイクルの研究開発の向かうべき方向ということでまとめさせていただきますが、実用化に向けまして、まだ政策が具体化されておりませんので、具体化されるであろう時点でここにあるような成果がすぐに提示できるような研究開発をやっていきたいと我々としては考えております。

まず研究インフラ整備としては、もんじゅや常陽、今止まっている施設を早期に整備して、再稼働して、とにかく動かさなければだめだと思っています。また、もんじゅ、常陽、核燃料サイクルを使った高速炉サイクル技術を支える人材とその基盤技術の整備・蓄積もやっていかなければいけないと考えています。

また、研究開発としましては、福島の事故を踏まえまして、安全性強化策を反映した、先ほどのFaCTフェーズIの成果にさらにこういうものを反映した技術の確立をやっていきたい。それから、国際的な安全設計要件を取り込んで、高速炉のリファレンスプラント概念を用意していきたい。それから、廃棄物の減容あるいは有害度低減の技術については、その成立性を見通しておきたい。そして、こういうことを踏まえて実用化までの道筋を我々の案として提示したいと考えております。

こういうことをやるに当たりましては、ステークホルダーとの対話、情報共有を現時点でもやっていって、そういうものを研究開発の方向性に反映していきたいと思っております。

そのためにも、人材育成、技術継承を具体的に実行するということをやりながら、先ほど申しました新規性基準対応を素早くやり、安全を優先した上で試験施設をちゃんと操業していきたいと考えております。

以上、私の報告であります。御静聴ありがとうございました。