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第10回 原子力機構報告会
「原子力機構の新たな出発 ~研究開発成果の最大化と課題解決に向けて~」

研究開発成果の最大化に向けて-第3期中長期計画- (テキスト版)

研究開発成果の最大化に向けて
-第3期中長期計画-
理事 大山真未

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 皆様、こんにちは。ただいま御紹介がございました、原子力機構理事の大山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、原子力機構の第3期中長期計画の概要について御紹介したいと思います。

本題に入ります前に、まず原子力機構は今年度大きく3つの変化があったと考えております。

P) まず1つ目でございますが、田口副理事長の話にもございましたが、国立研究開発法人になったという点がございます。旧制度におきましては、全法人一律の制度だったわけでございますが、例えばより中長期の目標管理とするなど、研究開発の特性を踏まえた制度設計となっております。目的は研究開発成果の最大化を目指すということで、人材育成とか大学・民間等との連携協力を図りながら、科学技術イノベーションの創出を目指してまいります。

P) 2つ目でございますが、これから御紹介いたします新しい中長期目標・計画の期間が今年度スタートしたということでございます。この目標につきましては、国主務大臣からいただきまして、これに基づいて機構としての中長期計画を策定したところでございます。機構としては、新しい児玉理事長のリーダーシップのもとで、安全確保を大前提としつつ、7年間の目標期間で研究開発成果最大化を目指してさまざまな研究開発に取り組んでいくことにしているところでございます。

P) 3つ目の大きな変化でございますが、児玉新理事長が就任し、田口副理事長、そして5名の理事が新任という新しい体制で業務に当たっているところでございます。

P) こちらは、機構の全国に広がっている研究開発拠点でございます。東海、大洗、敦賀を初めといたしまして、北から南に拠点が広がっているところでございます。

P) それでは、ここから本題の機構の第3期中長期計画の御紹介に入っていきたいと思います。

大きく6つの柱に沿って研究開発に取り組むことにしてございます。1つ目が東京電力福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発、2つ目が原子力安全規制行政への技術的支援と安全研究、3つ目が原子力の基礎基盤研究と人材育成、4つ目が高速炉の研究開発、5つ目が核燃料サイクルに係る再処理、燃料製造、放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発など、6つ目が核融合の研究開発ということでございます。以下、この6つの柱に沿って順次御紹介していきたいと考えております。

P) まず1つ目でございます福島第一原子力発電所事故への対処でございます。

大きく2つ。1つは廃止措置等に向けた研究、もう一つは環境回復に係る研究に取り組んでいくということでございます。

本年4月に設置されました廃炉国際共同研究センターを中心として国内外の英知を結集し、福島第一原子力発電所の安全確実な廃止措置等に貢献していくということを目指しております。例えば、ロボット技術を集約した遠隔操作技術の開発、シミュレーション手法の開発といったこと、あるいは廃棄物や汚染水対策の検討などに取り組んでいくことにしております。また、今年度、今後にかけまして新しいセンターも運用開始していくということでございまして、今年は楢葉の遠隔技術開発センターがスタートし、今後も大熊の分析研究センターが平成29年度に運用開始を予定しているということでございます。

P) また、環境回復につきましては、放射性セシウムによる線量や今後有効な対策について科学的な見地から提言しまして、合理的な安全対策の策定とか農林業等の再生、自治体の帰還計画立案等に貢献していくことを目指しております。例えば、人が容易に立ち入れないような広範囲な山林、湖沼等の線量を高精度にモニタリングする技術開発とか、将来にわたっての広域の放射線影響を評価するといったことに取り組むことにしてございます。実施に当たりましては、福島県や国立環境研究所とも連携しながら進めることにしております。

福島に関しての取り組みにつきましては、本日この後パネルディスカッションを予定してございますので、そちらで詳しくお聞きいただければと思います。

P) 私のプレゼンの中では幾つか研究者の活動風景なども御紹介したいと思っておりますが、こちらは、福島に関しまして放射線モニタリングを行う無人ヘリコプターの動作確認をしている風景でございます。

P) 続きまして、原子力安全規制への技術的支援と安全研究、2つ目の柱に入ってまいりたいと思います。

原子力施設の安全確保のための研究開発によって安全規制行政を技術的に支援することを目指しております。機構の有しております研究炉とか試験施設をしっかりと活用いたしまして、さまざまなテーマに取り組むことにしているところでございます。

まず燃料安全に関しましては、事故時の燃料の破損挙動の把握と影響の評価といったこと、また、材料・構造安全の分野につきましては、重要機器等の経年劣化とか放射線影響の評価をするといったことを進めてまいりたいと考えております。

それから、原子力機構につきましては、災害対策基本法などに基づく指定公共機関としての役割もございます。原子力災害時等における人的支援、技術的支援を行うこととしております。訓練等を通じて原子力の防災対応の実効性を高めて基礎基盤を強化するといったことを支援したり、あるいは人材の育成をするということ、さらには国際貢献をするというようなことを予定しているところでございます。

P) 続きまして、3つ目の柱に入っていきたいと思います。原子力の基礎基盤研究と人材育成でございます。

こちらは、原子力利用を支える科学的な知見や技術を創出して、挑戦的・独創的な研究を進めていくことを目指しております。原子力のこういった基礎基盤の知見があってこそ、福島の支援とか人材育成、オールジャパンにとっての原子力分野の人材育成も支えていくことが可能になると考えているところでございます。

例えば、研究テーマといたしましては、原子炉内の現象を理解するための中性子、原子核等の反応に関する知見についてのデータベースの拡充とか、環境中での放射性物質の移行・蓄積過程の解明等の研究を通じて福島の支援、貢献といったことを目指しております。このほかにも、例えば物質中の電子が持つスピン、磁気を利用したエネルギー変換あるいは情報伝達のメカニズムを解明することにより耐放射線性電子デバイスの開発に貢献するといったことも目指しているところでございます。

こういった先端基礎研究の一例が、「Nature」、有名な雑誌の表紙を飾ったということで、この成果については、この後また詳しく御紹介があるところでございます。

P) こちらも研究者の活動風景でございます。森林中の放射性セシウムの動きを調べるために、川に水に含まれる放射性セシウムを捕集するカラムの取付作業をしている研究者の姿でございます。

P) 続きまして、原子力の基礎基盤の続きでございますが、原子力機構の研究炉の中で最近特に注目されておりますのが、高温ガス炉でございます。このガス炉とこれによる熱利用技術の研究開発を通じまして、発電、水素製造など、原子力利用のさらなる多様化・高度化に貢献していくことを目指しているところでございます。

この高温ガス炉でございますが、固有の安全性を有しているということが注目されております。1つには、セラミックスの被覆燃料を使うということで、高温でも放射性物質を閉じ込められる。そして、黒鉛の構造材を使っている。こちらも耐熱温度が非常に高いということでございます。また、ヘリウムの冷却剤を使っておりますので、高温でも安定的で水蒸気爆発といったことがないということでございます。特徴として、冷却剤が喪失しても自然にとまるといったことも挙げられているわけでございます。

また、この高温ガス炉は経済効率性も高いということで、80%近い熱利用率であるところでございます。

また、エネルギーの安定供給という観点からも、高温の熱利用によりまして水素の安定供給を目指しているわけでございます。

このガス炉につきましては産学官の協議会の場も設けられておりまして、将来の実用化像とか課題についての議論も今年度から始まっているところでございます。機構といたしましては、この高温ガス炉を再稼働いたしまして、固有の安全性の確証、そして水素製造に関しての運転制御技術、信頼性の確証を目指しているわけでございます。このようにいたしまして、産学官が連携してリードプラントの概念構築等を目指していくことを考えているところでございます。

P) 続きまして、原子力の基礎基盤研究のもう一つでございます量子ビームの応用研究を御紹介したいと思います。

量子ビームの高品位化、利用技術の高度化などを通じて、科学技術の発展、新分野の開拓、産業振興に貢献していくことを目指しているところでございます。

この量子ビーム研究は、こちらの絵にもございますが、生物、物質・材料、環境・エネルギーと、非常に幅広い応用につながる研究分野でございます。私ども原子力機構は、量子ビームプラットフォームとございますように、研究炉のJRR-3とか大強度陽子加速器施設J-PARCなど多様な施設・設備を有して、広く社会にも提供しているところでございます。

こちらの研究の取り組みの例といたしましては、例えばマイナーアクチノイド、毒性が高くて長寿命の核種であり、使用済燃料に含まれるわけでございますが、この分離等のための新しい抽出剤の開発、あるいは放射線技術を用いてのセシウム捕集剤の開発などを通じて福島支援に貢献するといったこと、また、中性子や放射光を用いて大型の構造物内部のゆがみ等を評価する技術を開発しまして、発電プラントの安全性確保などにも貢献していきたいということを狙っているわけでございます。

また、この量子ビーム研究の1つの応用例ということで、植物分野での成果について、この後詳しくプレゼンテーションがございますので、お聞きいただければと思います。

それから、J-PARCにつきましては、1MW相当の世界最強の中性子パルスビームの安定供給を目指すということにも取り組んでいるところでございまして―

P) こちらはJ-PARCでの研究風景でございます。地球内部と同様の高温高圧を実験室で再現して鉱物、水の振る舞いを解明しようということで、高圧実験の準備をしている風景でございます。

P) 続きまして、高速炉の研究開発でございます。

冒頭、副理事長の田口からも紹介がございましたが、もんじゅにつきましては、原子力規制委員会からの保安措置命令への対応に機構を挙げてしっかりと取り組んでいくということで考えております。

また、高速炉全体につきましても、性能、信頼性、安全性の実証、技術基盤の確立を通じて我が国のエネルギーセキュリティ確保に貢献していくということを目指しているところでございます。

後ほど担当の部門より詳しく現状を御紹介いたしますが、もんじゅにつきましては、運転・保守管理の体制をしっかり強化していくということを目指しております。

また、高速炉につきましては、実証技術の確立、そして日仏、日米あるいは多国間の国際協力を通じての開発推進に取り組んでいくことを目指しているところでございます。

P) 続きまして、6つの柱のうちの5つ目の柱でございます、核燃料サイクルに係る再処理、燃料製造、放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発でございます。

放射性廃棄物を減らすいわゆる減容化、有害度低減の研究開発でございます。高速炉あるいは加速器を用いた核変換などによって放射性廃棄物の処理処分の幅広い選択肢を確保していくということを狙いとしております。

ここでは、マイナーアクチノイドの分離回収、そしてマイナーアクチノイドを含む燃料製造に関する技術的成立性を評価しまして、既存の施設を用いて小規模なMAサイクル、分離して燃料をつくり、また燃焼させてといったサイクルを実証する試験に着手することを目指しております。

また、常陽を活用して燃料照射試験をするということで、アメリカ、フランスとも共同で照射試験を実施しまして、マイナーアクチノイドの量の増減を評価するといったことを進めたいと考えているところでございます。

また、核変換実験施設の建設に向けましては、必要な要素技術開発、施設の検討といったことに取り組むことを予定しているところでございます。

P) それから、核燃料サイクルの続きでございます。使用済燃料の再処理等に関する技術開発でございます。

再処理技術の高度化、あるいは東海再処理施設の廃止措置に向けた取り組み等によりまして、核燃料サイクル事業、民間事業者への技術的な支援を含め、再処理施設等の廃止措置技術体系の確立に貢献するということを狙いとしております。

高レベル放射性廃棄物のガラス固化に関しましては、新型のガラス溶融炉につきまして長寿命化などを目指した設計開発。さらには、MOX燃料につきまして、燃料製造等、基盤技術を機構として開発することを目指しております。また、プルトニウム溶液の固化、安定化等につきましても着実に進めていくこととしております。

原子力施設の廃止措置、放射性廃棄物の処理処分に関しましては、機構が原子力施設の設置者でございますので、設置者の責任といたしまして、安全確保を大前提として、原子力施設の廃止措置、廃棄物の処理処分を計画的に進めていくこととしております。

低レベルの放射性廃棄物につきましては、廃棄物に関するデータの管理とか、あるいは廃棄体化の処理手法の検討といったことを計画的に実施することにしております。また、埋設処分事業につきましても、国の基本方針に基づき工程を策定していくということで考えているところでございます。

P) 核燃料サイクルに関しまして、もう一つ、高レベル放射性廃棄物の処分技術に関する研究開発でございます。

こちらは、地層処分の実現に必要となります技術基盤を整備することで、処分事業者、そして国による安全規制に対して技術基盤を提供するということで貢献していきたいと考えているところでございます。

機構といたしましては、岩質の異なる2つの地域に研究のセンターを有して取り組んでいます。1つは、岐阜県の東濃地科学センターでございます。こちらは結晶岩質でございます。もう一つは、北海道幌延にございます幌延深地層研究センター。こちらは堆積岩でございまして、それぞれ地下の坑道で研究開発を進めているところでございます。

研究テーマといたしましては、例えば岩盤中の物質移動モデル化技術の開発、いわば天然のバリアの研究といったことを東濃で、また実際の地質環境での人工バリアの適用性確認といったことを幌延で行っております。また、地層処分のシステムの構築・評価解析技術の先端化・体系化といったこと。さらには、代替処分のオプションとしての使用済燃料の直接処分の研究などにも取り組むこととしております。また、実施に当たっては、人材育成、理解促進といったことにも留意しているところでございます。

P) こちらはまた研究者の活動風景でございます。地下300mの坑道で岩石中の有機物、微生物などの成分分析をするために試料を採取している姿でございます。

P) それでは、6つ目、最後の柱でございます核融合の研究開発でございます。

核融合につきましては、恒久的な人類のエネルギー源として大変有力な候補であるということで注目されているわけでございますが、この核融合エネルギーの実用化に向けまして、国際協力のもとで研究開発をしっかりと進めていくこととしております。

まずITER、国際熱核融合実験炉計画につきましては、世界7極の協力により進めているところでございまして、真ん中上のほうにございますフランスのITERサイトの近況、こういった状況で進んでいるところでございますが、我が国としては、日本が調達責任を有するITER機器、例えば超伝導トロイダル磁場コイル等につきましてしっかりと設計・製作・試験を継続いたしまして、機構としての責任を果たしていくということで取り組んでいくこととしております。

また、幅広いアプローチ、ITER計画を補完・支援します日欧のプロジェクト、BA活動でございますが、左の写真にございますように、茨城の那珂にございますJT-60SA、こちらでITERでの研究に先立ってプラズマ運転手法等の確立を目指すということで、こちらは2019年の運転開始を目指しているところでございます。

また、青森六ヶ所のサイトでは、スーパーコンピュータによるシミュレーション計算によって将来の原型炉開発の技術基盤の構築を目指すといったことにも取り組んでいるわけでございます。

P) こちらはまた研究者の研究風景でございます。JT-60SAのトロイダル磁場コイルを構成するパンケーキコイルの確認をしている姿でございます。

P) 以上、私からは第3期中長期計画の6つの柱に沿って御紹介させていただいたところでございます。

原子力機構は、この後、来年4月にまた1つ大きな変化がございます。最後にそれについて触れたいと思います。一部の業務の移管・統合ということでございます。

こちらは昨年度までの原子力機構の機構改革で方針が示されてきたものでございますが、基本的な考え方といたしまして、機構の社会的使命、役割を念頭に置きまして、原子力機構の業務を重点化するということが狙いでございます。

分離・移管される業務を具体的に申しますと、量子ビーム応用研究の一部ということで、場所で申しますと、関西光科学研究所、そして高崎量子応用研究所、そしてもう一つは核融合の研究開発でございます。那珂、六ヶ所の研究所について移管することになっております。これらを国立研究開発法人の放射線医学総合研究所に移管・統合することになっております。そして、この旧放医研と量子ビームの一部、核融合が、新しく平成28年4月からは国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構として業務を開始することになっております。移管される業務も、新法人で機構のときと同様引き続きしっかりと推進していただくということでございますし、必要に応じて新法人と私ども原子力機構とで連携を図っていくこととしております。

P) 最後にまとめでございます。

原子力機構は、今年度から国立研究開発法人として新たな出発ということでございますが、安全最優先で社会の皆様からの信頼確保に努めながら研究開発成果の最大化を目指して、こちらにございますような東電福島事故への対処、原子力の安全性向上、基礎基盤・人材育成、核燃料サイクル技術の確立、放射性廃棄物の処理処分といった諸般のテーマにしっかり取り組んでいくこととしております。そして、エネルギー資源の確保、科学技術イノベーションの創出を目指していきたいと考えているところでございます。

P) 最後に、原子力機構はダイバーシティにも取り組んでいるということでございますが、原子力機構には、ごらんのように、女性の職員、そして外国人の職員、さまざまな能力や特徴を有した職員がたくさんおります。こうした多様性を生かして、それぞれの能力を発揮しながら、よい研究成果、開発の成果を上げていけるようにと考えております。皆様の御期待に沿えるような取り組みを展開できるように役職員一丸となって業務を推進していきたいと考えております。今後とも御指導、御支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

御静聴ありがとうございました。