原子力機構のご紹介
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、原子力の総合的な研究開発機関です。ここではその活動やポリシーについて詳しくご紹介しています。
理事長メッセージ
日本原子力研究開発機構 理事長の小口です。
いま私たちは原子力の平和利用を巡る大きな変革のただなかにいます。それは人類共通の課題である脱炭素社会の実現に向け、安全性の確保を大前提に、原子力を最大活用しようとする動きであり、国内外ともに具体的日程感をもって様々な角度から議論が進んでいます。
このような大きな流れを受け、原子力機構は2023年4月に新しいビジョンを打ち出しました。
それは今後原子力機構が挑戦すべき研究開発の方向性を明確化したもので、次の3分野から構成されています。
- 原子力と再生可能エネルギーの相乗効果を追求する研究開発(Synergy)
- 原子力自体を継続可能なエネルギーとする研究開発(Sustainable)
- 原子力をエネルギー分野のみならず幅広い分野で活用する研究開発(Ubiquitous)
Synergy分野では、再生可能エネルギーとともに工業地帯の脱炭素化の有力な選択肢として期待される高温ガス炉の開発を進めており、2024年3月には100%出力運転中の原子炉での過酷事故を模擬した安全性実証試験を世界に先駆けて大洗研究所(現:大洗原子力工学研究所)のHTTRを使って実施し、その自律的安定性の確認に成功しました。
また、再生可能エネルギーにより得られた電気をより効率的に蓄電するために、ほぼ無期限の耐久性を有するウラン・レドックス・フロー電池の開発にも着手しています。
Sustainable分野では、高レベル放射性廃棄物の減容、資源化を目指すという新しいテーマにチャレンジするとともに、既存の原子力関連施設の安全な廃止措置を実施するための技術開発にも取り組んでいます。特に福島第一原子力発電所の廃止措置に関しては、海洋に放出されるALPS処理水の安全基準適合性を第三者の立場から担保する役割を着実に果たすのと同時に、今後予定されている燃料デブリの取出し、処理・処分に向けて、その前提となる性状分析のための事前準備作業も始めました。
Ubiquitous分野では、「がん」の治療薬として期待が高まっているアクチニウム225の創薬化に向けて、環境整備、関係機関との協力体制の構築、更には基幹設備となる高速実験炉「常陽」の再稼働にも全力を挙げて取り組んでいます。
私たちは未だ原子力の持つ可能性のすべてを把握しているわけではありません。その意味で、私たちは新しい価値の創出のため日々イノベーションの最前線に立っています。
原子力機構はこれからも社会の要求を的確に捉え、また変化に柔軟に対応し、持てる力を存分に発揮して、原子力科学技術を通じて社会に貢献するという原子力機構に与えられた使命の達成に向けて弛まずに歩み続けてまいります。
皆さま、引き続きご理解、そして一層のご支援よろしくお願いいたします。
理事長 小口 正範