一般寄附金

若手研究・技術者による斬新で
挑戦的な活動へのご支援

研究者紹介

令和4年度萌芽研究開発制度 ラジウムの電子状態評価による粘土鉱物への微視的吸着構造の精密決定

システム計算科学センターシミュレーション技術開発室 山口 瑛子

私の研究では、マクロな環境挙動をミクロな化学反応に基づいて理解することを目指しています。放射性元素を含むあらゆる元素はこの世界を循環していますが、その動き方は元素によって異なります。地球上で各元素がどう動くのか?というマクロな挙動を正確に理解するため、ナノメートルの世界で各元素がどのように存在し動くのか?というミクロな挙動を解明することを目指しています。

本研究では、ウランなどから生成する放射性元素のラジウムと、様々な元素の動きに影響を与える粘土鉱物に着目しました。広域X線吸収微細構造(EXAFS)法による測定やスーパーコンピューターを用いた第一原理シミュレーションにより、溶液中や粘土鉱物に吸着した時のラジウムイオンがどのような構造で存在しているのかをミクロに調べることができました。今回の手法は様々なシステムに応用できるため、ラジウムの分子レベル研究の先駆けとなる重要な研究になったと考えています。今後はより複雑な環境中での反応や生体内での反応に着目し、環境汚染防止や医薬品開発など、重要な課題解決に応用していきます。寄附者の皆様のご支援に心から感謝申し上げます。

令和3年度萌芽研究開発制度 半導体スイッチ電源の確立を目的とした特性インピーダンスのマッチング手法の開発

原子力科学研究部門 J-PARCセンター 加速器ディビジョン 加速器第二セクション 研究主幹 高柳 智弘

私の研究では、従来品より高耐圧・低損失の特性に優れる次世代パワー半導体を用いたスイッチ電源の開発に取り組んでいます。大電力を扱う変換器には放電管のスイッチが多く使われていますが、環境問題などから放電管の製造中止が見込まれています。そのため、パワー半導体による代替機の開発が不可欠です。しかしながら、次世代パワー半導体の性能を活かす基盤技術の開発があまり進んでいません。そこで私は、半導体スイッチ電源の回路構築に必要な、電力伝送導体部と高耐圧構造の最適設計に取り組みました。

本研究では、電位差由来のインピーダンスミスマッチを解消できる円錐型の導体と、高電圧出力時のコロナ放電を低減するセラミックス長尺絶縁筒碍子の製作に、寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、萌芽研究開発制度の枠組みのもと、このような研究機会を与えてくださったことに心から感謝申し上げます。今後は、本研究成果を発展させ、低炭素・省エネ社会の実現に向けた、革新的な半導体スイッチ電源の開発に努めて参ります。

令和3年度萌芽研究開発制度 配位高分子の微量イオントリガー型構造変化を利用した元素センサー

原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター 界面反応場化学研究グループ 南川 卓也

私の研究では、放射性元素を効率よく除去し、環境浄化する手法として、主に有害元素を吸着する材料の開発を行っています。例えばセシウムなどの有害な放射性元素は、主にゼオライトやプルシアンブルーといった吸着剤で比較的簡易に除去することができます。このような技術は原子力の分野では、主に放射性元素の施設外への漏洩を防ぐ目的で高度に発展してきました。また同分野では分離した元素を回収する技術の開発も盛んです。私もこの技術を学ぶとともに、有害な元素の処理処分法を学んできました。

近年、有害金属による広範囲な汚染や環境汚染問題が持ち上がる中で、私は原子力の元素分離回収技術をもっと広範囲な環境修復に応用し、より良いものにしたいと考えました。現在では、鉛やカドミウム等の有害元素による汚染が知られ、有用金属の回収も、資源確保に非常に重要な研究分野です。これらの技術は元素を効率よく除去し再生する、原子力で高度に発展した技術を応用すれば、改善できる可能性が高いです。

本研究では、様々な元素を様々な環境から除去回収や検出する技術の開発を目指して、イオン選択的な有害元素吸着剤の開発を行っています。この研究においては、配位高分子というこれまで殆ど吸着剤に用いられてこなかった材料を使って、元素のイオンサイズをこれまで以上に精密に認識することで、イオンを認識します。今回は有害金属である鉛の除去や検出を行い、汚染が見えにくく問題となっている鉛中毒に関連する問題に取り組みました。寄附者の皆様にはこの研究を支えてくださったことに、大変感謝しています。

令和2年度萌芽研究開発制度 気泡崩壊現象を利用した飛散微粒子の革新的除去技術の開発

原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター 熱流動技術開発グループ 上澤 伸一郎

私は軽水炉の設計、事故時対応策の策定、安全性の向上のための機器の追加などを行う上で重要な熱や流体の動きの把握あるいは評価に関する研究を行っています。 現在、福島第一原子力発電所の廃炉が進められていますが、燃料デブリの取り出しの際に放射性飛散微粒子が発生する可能性が指摘されており、その閉じ込め管理が課題となっています。 そこで私は、従来にない飛散微粒子除去技術として、気泡と流体の物理現象を利用した除去技術を考案し、有意な除去性能があることを明らかにしました。

本研究では、この除去技術を開発する上で必要な基礎試験装置の製作や、試験消耗品の購入に寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、萌芽研究開発制度の枠組みのもと、このような研究の機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。ありがとうございました。

令和2年度萌芽研究開発制度 機械学習を用いた放射線測定値換算手法の開発

福島研究開発部門 廃炉環境国際共同研究センター 広域モニタリング調査研究グループ 佐々木 美雪

私は福島第一原子力発電所事故によって放射性物質の汚染影響を受けた、環境中の放射線測定及びそれに関わる研究開発を行っています。環境中の放射線測定の方法の一つとして、無人機を用いた上空からの測定方法があります。上空からの放射線測定は地上における測定とは異なり、周辺からの影響を平均化した値として、測定値が得られます。よって地上測定と比較して、詳細な線量率の分布等が得られない課題がありました。私達の研究では、近年多くの分野で利用されている機械学習(人工ニューラルネットワーク)を用いた新たな放射線測定値の解析手法を提案しました。

本研究では、放射線測定試験及び解析手法構築のために皆様からの寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、萌芽研究開発制度の枠組みのもと、このような研究の機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。この研究成果をもとに、原子力災害時等における緊急時の放射線モニタリング技術開発を進め、より安全でかつ高精度な放射線測定が実現できるよう、研究に努めていきたいと思っております。

令和2年度萌芽研究開発制度 アインスタイニウムを用いた超重元素の構造研究

原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素核科学研究グループ オルランディ リカルド

私の研究では、実験室で研究できる最も重い原子核の構造に焦点を当てています。原子核には「安定の島」と呼ばれる興味深い領域があり、長い寿命をもつ非常に重い元素(超重元素)の存在が予測されています。安定の島に到達することは、原子核物理学の大きな目標の1つです。254Es( 「アインスタイニウム-254」、原子炉で使用するウラン235よりも陽子が7個、中性子が12個多いもの)のような重い原子核は、安定の島の元素と同じような構造を持ち、超重元素の性質を理解するために必要な情報をもたらします。

本研究では、254Esの薄膜標的に重イオンビームを照射して、254Esの構造を垣間見ることができました。これにより超重元素の存在を予測する理論模型を改善することができます。実験に必要な機器の整備に寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、このような研究を実施する機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。

令和2年度萌芽研究開発制度 In-situ固液界面構造評価によるグラフェンの電気化学反応機構の解明

原子力科学研究所 先端基礎研究センター ナノスケール構造機能材料科学研究グループ 保田 諭

私はグラフェンと呼ばれる炭素原子1層からなるナノ材料の電池反応に関する研究を行っています。グラフェンは2010年のノーベル物理学賞の対象材料で、溶液中での電気化学反応を利用してグラフェン内に電子を注入するとその電気的性質が変化し、バイオセンシング能や電極触媒能を発現することが期待されています。しかしながら、これら機能を決定する、電気化学反応が起きているグラフェンとその近傍のイオンの界面挙動について理解が進んでいないのが現状です。

私の研究では、その場観察が可能な電気化学ラマン分光法と電気化学表面X線散乱法を用いて、電子注入時におけるグラフェンとイオンの界面挙動を同時に評価することを行いました。この研究を行うため、機器の整備や試料作製のために寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、萌芽研究開発制度の枠組みのもと、このような研究の機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。

平成29年度萌芽研究開発制度 次世代大強度陽子加速器に必須な革新的なレーザー荷電変換入射実現に向けたレーザー駆動システムの開発

J-PARCセンター 加速器ディビジョン 加速器第三セクション 原田 寛之

はじめまして。J-PARCセンター加速器ディジョン加速器第三セクションの原田寛之です。私は日本が誇る大強度陽子加速器施設J-PARCにて大強度ビーム出力に関する様々な研究を行っています。

大強度陽子加速器は、世界中で稼働しており、稀な物理事象の探索や実験の高効率化に向け、更なる出力増強が求められております。大強度陽子加速器では、大強度ビームを蓄積するために荷電変換入射方式が採用されておりますが、従来の炭素膜による衝突型方式では、膜の長寿命化などが世界的な課題です。

そこで私は、世界初のレーザーによる非衝突型方式(レーザー荷電変換入射)を新たに考案し、この方式を新たな世界標準とすべく、研究開発を進めております。本研究では、実現に向けた基盤技術であるレーザーの照射角を制御するシステムを開発すべく、寄附金を活用させていただきました。寄附者の皆様には、このような研究発展の機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。日本が世界をリードできるように、頑張っていきますので応援よろしくお願いいたします!

平成29年度萌芽研究開発制度 軽水炉事故時の燃料・構造材内におけるセシウム物理化学状態の直接観察

原子力基礎工学研究センター 性能高度化技術開発グループ 鈴木 恵理子

はじめまして。原子力基礎工学研究センター性能高度化技術開発グループの鈴木恵理子です。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉を進める上では、事故が起きた際の原子炉内におけるセシウム分布を推定することが必要となります。

私は、その事故処理にいち早く役立たせるための推定に基盤的に貢献するため、事故時の核燃料や原子炉内構造材等の物質中でのセシウムの状態・ふるまいに関する研究を行っています。セシウムは、揮発性や化学的活性が高いため、物質中での存在状態や他元素との化学的相互作用の観察・測定は困難でした。

そこで、私の研究では、それらを可能とする基盤技術として、放電プラズマ焼結法という新たな手法を用いたセシウム含有模擬燃料の調製技術と、今まで実施されていなかった分光学的手法、微細組織観察手法を用いたミクロレベルでの物理的・化学的状態評価手法を開発しました。

本研究では、これらの様々な手法を用いた実験を実施するために寄附金を活用させて頂きました。寄附者の皆様には、このような研究の機会を与えてくださったことに、大変感謝しております。

あなたの寄附が研究を前進させます。
ぜひご協力ください。

寄附をする