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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013.8.30／No.287 ━━━

〔現場から〕元素周期表研究のフロンティア－加速器で合成される人工重元素の化学－（先端基礎研究センター　超重元素研究グループ）

〔東日本大震災発生に伴う対応状況〕

〔お知らせ、採用情報、調達情報〕

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元素周期表研究のフロンティア　－加速器で合成される人工重元素の化学－

周期表は、元素の化学的性質を大まかに示すことができ、中学校の理科の授業で習う、化学の基礎と言える表です。元素を原子番号順に水素から並べていくと、似た化学的性質を持つ元素がある規則で現れ（周期律）、その規則性が電子配置と一致することから、化学的性質が元素の電子配置と密接に関係していることを示しています。
　周期表は、19世紀後半にロシアのメンデレーエフによって初めて提案されました。その後、数々の新元素の発見とその性質の研究から、周期表も改良され、現在は皆さんが目にする18列の周期表が一般的となっています。現在までに周期表の第7周期までを全て埋める118種類の元素の発見が報告されており^*1、次に発見されるであろう新しい元素は、人類が未だ見たことがない第8周期に到達します。
　これまで、第7周期にある元素、特に原子力に直接繋がるウランやプルトニウムなどの化学的特質については、多くの研究がなされてきました。しかし、それ以降の元素については、放射性廃棄物の処理問題などに係わる研究として実施されてはいますが、全ての元素で化学的性質が解明されたわけではありません。また、これら重元素の領域では、軌道電子への相対論効果の影響で^*2、電子配置が周期律から予想される配置と異なることも理論的に予測されており、それに伴い化学的性質にどの様な影響があるかが興味ある課題となっています。さらに第8周期では、新しい電子軌道（g軌道）が現れると期待されるため、この領域の元素は「どの様な化学的性質を示すのか？」「周期表は今後どのように拡張されるのか？」という新たな展開を秘めています。
　 93番元素ネプツニウム以降の元素は、地球上の自然界には存在しません。特に、101番元素メンデレビウム（メンデレーエフから命名）以降は、放射性の特殊なアクチノイドターゲットと大型のイオンビーム加速器を用いないと合成できません。さらに、その寿命が極端に短く、また合成量は僅かなため、通常の手法を利用した化学的研究が不可能です。
　原子力機構は、このような人工重元素の研究が行える特殊な施設と技術を持った、世界でも数少ない研究機関の一つです。先端基礎研究センターでは、ウランやプルトニウムなどの重元素研究に繋がる基礎的研究として、このような人工重元素の化学的性質を、周期表から予測される振る舞いと比較しつつ、周期表の拡張・再構築を目指した研究を行っています。

※詳細は先端基礎研究センター　超重元素研究グループのHPをご覧ください。
　　　http://asrc.jaea.go.jp/soshiki/gr/schaedel-gr/index.htm

*1：国内でも理化学研究所が113番元素を発見し、命名権を競っているという報道をお聞きになっているかと思います。
　 *2：原子核が重く電荷が大きくなるため、電子をより引きつけ、内殻軌道の電子の速度が光速に近づくことにより、相対論効果の影響で電子の質量が増し、ますます原子核に引き寄せられ、電子軌道に影響が現れます。

（先端基礎研究センター　超重元素研究グループ　塚田　和明）