独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.278

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福島県下の空間線量率の変化傾向を情報発信する

システム計算科学センターでは、福島支援事業の一環として、福島県下の空間線量率が時間とともにどのように変化しているのか、その経時変化の状況を直観的に把握しやすい形で情報発信する事業に取り組んでいます。
　東京電力福島第一原子力発電所事故以降、国や自治体により多くの環境モニタリング事業が実施されてきました。その結果、事故後の放射性物質の分布状況に関し、多くの知見が得られました。これからは、その分布がどのように変化するのか、どのように減衰するのかを的確に把握し、除染や避難区域の見直しなど、福島復興支援事業を着実に立案、実施していくことが課題となります。このような事業の推進には、今後も福島県を中心とした広域の環境モニタリングを長期にわたって継続実施し、分布の変化状況に関するデータを提供していくことが重要です。
　広域な環境モニタリングを長期的に継続して実施していく際には、実施コスト（労力、費用）が問題となります。対象となる地域に測定員を派遣し、測定を行なったり、得られたデータを解析し、発信していくには多くのコストを要します。このコストを低減するために、我々は、福島県や京都大学、原子力機構内関連部署と連携し、測定や解析、情報発信作業を可能な限り自動化するための手法を考案するとともに、その手法に基づいた測定を支援するIT基盤を整備しています。具体的には、福島県内の主要都市を定常的に走行するバスに車載型空間線量率測定器を搭載し、バス路線に沿った地域の空間線量率を継続的に測定するとともに、携帯回線を用いて自動的にデータを収集する機能を開発しました。さらに、得られたデータを自動的に解析し、可視化、公開する機能を開発しました。平成25年度初めより半年にわたり、福島県内4市（福島市、郡山市、いわき市、会津若松市）を走行するバスに車載型空間線量率測定器を搭載し、測定結果を収集するとともに、結果を解析、可視化、公開する実証試験を行い、開発基盤が有効に動作することを確認いたしました。
　本事業は、今年度上期中に本格運用を実施し、地域住民の方々や行政担当者をはじめ、広く一般の皆様に情報を公開していく予定です。また、福島駅前のビルの一階に大型ディスプレイを設置し、測定状況をリアルタイムに発信していく事業も企画し、準備を進めています。

（システム計算科学センター）