原子力機構メールマガジンを御愛読頂きありがとうございます。
まだまだ寒い日が続きますが、暦上は春を迎えております。
この時期、花粉症に悩まされている方がいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人です。先日、ある新聞に朗報とも言うべき記事が出ていましたので、ご紹介させていただきます。それは、富山県が、全く花粉が出ない「優良無花粉スギ」を大量生産する技術を確立したというものです。無花粉スギは1992年に県内で初めて発見されました。その後の研究により無花粉になる仕組みを解明、無花粉スギを大量に生産する技術を確立したそうです。富山県は2012年からの3年間で新しい無花粉スギ約2万本を出荷する予定とのことです。無花粉スギが増えれば、花粉症に苦しむ人の数が減ることにつながるかもしれません。
原子力機構でも、私たちの普段の生活に役立つ応用研究から基礎的な研究まで様々な研究成果を発信しています。詳しくは、機構ホームページの「研究成果の発表・お知らせ」、「プレス発表(研究開発成果関連)」をご参照ください。http://www.jaea.go.jp/02/press1.shtml
なお、花粉症の身近な予防対策には、高脂肪の食物を避ける、過剰なアルコールの摂取を防ぐ等の規則正しい食生活、ストレスをためない生活が大事だそうです。皆さんも思い当たる節はありませんか。
広報部報道課 積田章司
さて、今回の「研究開発現場から」は、大洗研究開発センターです。
21世紀には化石燃料に代わるエネルギー源として水素の大量需要が予測されます。この水素製造の熱供給源として期待される「高温ガス炉」について紹介します。
現在、原子力発電で使われている軽水炉の出口温度は三百数十度程度と低く、これに対して高温ガス炉は、1000度近い温度の熱を取り出すことができます。
高温ガス炉は高温の熱を取り出すために、燃料はセラミックスで四重に被覆した直径約1mmの被覆燃料粒子を用いています。この被覆燃料粒子は耐熱性に優れており、1600度程度の高温状態で使うことができます。この被覆燃料粒子を黒鉛で棒状にして黒鉛製のブロックに挿入し、これを積み重ねて炉心を構成します。この黒鉛も耐熱性に優れた材料で、2000度程度の温度に耐えることができます。また、冷却材には不活性ガスで安定し、燃料や構造材と化学反応を起こすことがないヘリウムを用いています。
このように高温で使える燃料や黒鉛を用いていること、安定したヘリウムガスを使っていることから、高温ガス炉は1000度近い温度の熱を取り出すことができるのです。
高温ガス炉は、950度の熱を利用した水素製造、850度ではガスタービン発電の他、200度の低温熱は地域暖房や海水淡水化と、発電以外にも利用できます。システム全体の熱利用率は約80%に達し、熱を捨てる割合を少なくできます。さらに石炭の液化・ガス化、直接還元製鉄などにも利用することができ、需要に見合ったエネルギーの供給が可能です。
それだけではなく、高温ガス炉を用いた場合、二酸化炭素を出さずに水素を製造することができます。このため、高温ガス炉による水素製造は、将来の重要な技術の一つとして注目されています。
原子力機構では、大洗研究開発センターに高温工学試験研究炉(HTTR)という高温ガス炉を有しています。HTTRは、平成16年4月に950度の高温の熱の炉外への取り出しを世界で初めて実証しました。現在は長時間運転や安全性に関する試験を行い、高温ガス炉の特性や安全性を明らかにしています。これらの成果をもとに今後、水素製造施設を原子炉に接続した場合の特性について研究を進め、原子力による水素製造システムの実用化を目指します。
高温工学試験研究炉(HTTR)ホームページ http://httr.jaea.go.jp/index_top.html
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