日本原子力研究開発機構

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第10回 「緊急事態区分及びEALについて」(平成26年1月)

IAEAや我が国は、事故の発生後速やかに避難等の対策を実施することが重要であるとして、測定や監視データに基づく原子力災害対策の基本的考え方を定めています。その考え方に則り、迅速に対策を実施するためには、予め対策を準備しておく範囲や対策実施の判断基準を定め(第5回をご参照下さい)、事故が発生した際には事故の発生やその程度を速やかに判断しなければなりません。そのため、事故の発生やその程度を判断する基準として、標題の「緊急事態区分」と「緊急時活動レベル(EAL)」を定めることになります。
 我が国においても、平成24年10月の原子力災害指針策定の際にこれらを導入することが定められ、平成25年2月の改定で「緊急事態区分」と「当面のEAL」が定められました。その後、平成25年9月の改定により、「EALの具体的な基準」が定められています。法令にも通報すべき事象(原災法第10条通報)や原子力事業者防災業務計画に記載すべき内容として盛り込まれ、昨年末の平成25年12月1日より施行されています。
 これらの「緊急事態区分」と「EAL」ですがお互いに密接に関係していることもあり、両者の違いはわかりにくいものになっています。この違いは事故への対応を考えると分かりやすいものとなります。
 事故と一口にいっても実際に起こっている事態は様々です。事故が発生してから事態を把握し、状況を予測して対策を実施していては、迅速な対応は非常に難しいものとなります。そこで、「緊急事態区分」を導入し、我が国では原子力発電所外の一般の方々(公衆)への影響の程度や必要となる対策に応じて、警戒事態、施設敷地緊急事態及び全面緊急事態の3つに区分することにしています(表1)。

表1 我が国の緊急事態区分の概要



  一方、「緊急事態区分」を導入しても、事故の今の状態がどの事態に該当するのか、すぐに判断できなければ対策を迅速に実施することはできません。そこで、事故の起こった原子力発電所の状態が表1のどの区分に該当するか、原子力発電所を運転している事業者が判断する基準として「EAL」が導入されています。従って、EALの内容は原子力発電所の施設、設備の状態を技術的に記述したものですが、原子力災害対策指針に定められた主なものを紹介すると表2のようになります。

表2 原子力災害対策指針に定められた主なEAL(BWRの例)

 
  従前の原子力災害対策をご存じの方はお気づきになったかもしれませんが、この表は事故の通報や緊急事態の基準であった原子力災害対策特別措置法第10条や15条に似たところがあります。我が国の「EAL」は原災法と整合がとられており、表1に示すように施設敷地緊急事態に該当する事象が原災法第10条にさだめる通報事象に相当し、全面緊急事態が原災法第15条の原子力緊急事態に該当するものとなっています。
 なお、原子力災害対策指針に定められた「EALの具体的な基準」は原子力発電所一般に適用可能な形で定められており、原子力発電所で実際に用いられるEALは、各施設の特徴に応じてより詳細化したEALを原子力事業者自ら作成し、その防災業務計画に記載することとされています。これにより事業者の迅速な判断が可能となっています。
  このような緊急事態区分やEALは我が国以外にも米国において既に導入されています。米国において緊急事態区分は4段階に、EALは米国原子力規制委員会が定めた基準(NUREG-0654/ FEMA- REP-1 Rev.1)や認めた基準(NEI99-01等)に基づいて、各原子力発電所において詳細なEALを定めることになっています。

  ここまでお話しした、「緊急事態区分」と「EAL」の違いをまとめると表3のようになります。


表3 緊急事態区分とEALの違い


 事故が発生した際には、原子力事業者防災業務計画に記載した「EAL」により原子力発電所の運転者が状況を判断し、法令に基づいて通報等を行い、「EAL」により判断される「緊急事態区分」に従って対策を実施することとなります(図)。


図 事故対応の流れ


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