新型転換炉ふげん発電所は、平成15年3月29日に運転を終了し、4月7日より原子炉内にある燃料集合体の取出し作業を開始し、8月13日に使用済燃料貯蔵プールへの移送を完了しました。現在は、定期検査を行っているところです。
7月4日に発生した標記トラブルにつきましては、これまでに発生状況等を発表してきておりますが、今般、原因の究明が終了し、その対策について取りまとめ、関係箇所への報告を行いました。
また、トラブルに係る原因とその対策にあわせてトラブル発生時の通報連絡に関して改善すべき点もあったことから、その改善についても関係箇所に対して報告しました(別紙:「通報連絡の改善について」参照)ので、あわせて発表いたします。
新型転換炉ふげん発電所は3月29日に運転を終了し、現在、原子炉内から燃料集合体の取出し作業を行っております。
平成15年7月4日午前11時52分頃、廃棄物処理建屋1階 焼却灰取出室(管理区域内)の火災警報が発報したため、現場の状況をテレビカメラで確認したところ、室内がけむっていました。
同日12時30分、現場状況の確認を行ったところ、焼却炉の覗き窓(約50cm×約30cm)が破損していましたが、現場に火の気は認められず、13時24分に消防隊が焼却灰取出室に立入り、13時25分、敦賀美方消防組合により、火災ではなく「焼却炉の異常燃焼」であることが確認されました。
本件によるけが人の発生や建屋内、環境への影響はありません。
〔平成15年7月4日16時00分記者発表・同日20時00分資料配布にて一部差し替え〕
焼却灰取出室内の表面汚染密度を測定した結果、床面が最大で10Bq/cm2でした。表面汚染密度の測定結果から、焼却炉内から室内へ漏えいした焼却灰の放射能量は約4.6×106Bqと推定されますが、環境への影響はありませんでした。
火災警報発報前後の焼却設備の運転操作について、記録により調査を行いましたが、現在までに通常と異なる操作は確認されていません。
また、焼却していた廃棄物に関しても、選別段階では焼却可能なもののみとしておりますが、さらに調査を行うこととします。 〔平成15年7月7日16時00分記者発表済〕
1.調査結果 |
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(1) |
運転状況調査 |
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今回のトラブルは、焼却炉の運転中に「熱分解室圧力高高」警報が発報して焼却炉が自動停止し、その後シャットダウン運転*1へ移行する過程で発生しました。運転状況の調査では、焼却炉の自動停止前から火災報知器発報までの経過について、焼却炉設備運転監視装置の記録調査、運転データのチャート記録の確認、運転員または作業員への聞き取りを行いました。その結果、運転員の操作は手順書に照らして問題はなく、焼却炉の制御動作等についても異常はありませんでした。
*1シャットダウン運転: |
負圧を維持しながら、焼却炉内の未燃物を焼却処理する運転。手順書ではシャットダウン転終了後、負圧を維持したまま、焼却炉を冷却することとしている。 |
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焼却物に関する調査結果 |
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焼却炉へ投入された廃棄物の記録を確認した結果、総重量は約60kgで、内訳はポリエチレン製の養生シートが約7割、その他に紙、布、木材類であり、発熱量、種類とも設計で考慮されている廃棄物の投入でした。
また、廃棄物はマニュアルに従い適切に仕分けされていたことを確認しています。 |
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焼却炉外観点検結果 |
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外観点検の結果では、トラブル発生時において確認された排出ダクトに設けられている覗き窓8箇所のうち1箇所のガラスの破損以外には、焼却炉本体に破損変形はありませんでしたが、排出ダクトの圧力計が振り切れて固着していたことや、残り7箇所の覗き窓の内面には灰が吹きつけられたように付着していたことが確認され、排出ダクト内で圧力上昇があったことが推定されました。 |
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(4) |
焼却炉内部点検結果 |
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焼却炉の内部を開放して点検を行った結果、異常燃焼の痕跡や破損、異物の混入等は認められませんでしたが、冷却ダクトの排出ダンパに針金等が挟まっていたことや、通常は冷却ダクト内にあるはずの灰や未燃物が排出ダクトの灰ふるい機、灰取出しダンパ、不燃残渣取出しダンパ上に溜まっていたことなどが確認され、冷却ダクト内での圧力上昇により、排出ダンパが一時的に開口し、灰が排出ダクト側へ噴出したことが推定されました。
なお、燃焼室で異常な圧力上昇があった場合、その圧力を逃すためにシールポットが作動するようになっておりますが、今回このシールポットが作動しておらず、燃焼室内の異常な圧力上昇は無かったことが確認されました。 |
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過去事例との比較調査結果 |
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過去の焼却炉の自動停止した事例と比較を行ったところ、運転操作に違いはありませんでしたが、煙道内温度は過去の事例に比べ約150℃近く高い約1150℃まで急激に上昇したこと、煙道内の酸素濃度が0Vol%であった状態(無酸素状態)が過去事例に比べて長く続いたことが運転データから確認され、熱分解ガス*2が一時的に多量に発生したこと、自動停止後も熱分解ガスの発生が継続し、完全燃焼されていなかった事が推定されました。
*2熱分解ガス: |
可燃性物質を高温に加熱した場合に発生する可燃性ガスのこと。ガスの組成は物質によって異なり、ポリエチレンシートの場合はヘプタン、ブタン等の炭化水素ガス、木材の場合はセルロース、リグニン等が熱分解したガスである。 |
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(6) |
換気系へ移行した灰に含まれる放射能量の評価 |
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床面に飛散した焼却灰の放射能以外に、取出室内から換気系へ移行した灰の放射能量を評価するために、換気系フィルターに付着した灰の放射能量を測定した結果、約2.7×105Bqと評価されました。その結果、床面に飛散した焼却灰の放射能量約4.6×106Bqと合わせ、焼却炉内から焼却灰取出室内へ漏えいした灰の放射能量は約4.9×106Bqと推定されました。
なお、廃棄物処理建屋排気筒に設置されたダストサンプラろ紙の放射能測定を行った結果は検出限界以下であり、環境への放出はなかったことを再確認しています。
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2.推定原因 (添付−7参照) |
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上記の調査結果から、焼却炉が自動停止し、シャットダウン運転へ移行する過程で排出ダクト覗き窓ガラスが破損し、灰が室内に漏えいした原因は、以下のとおりと推定しました。 |
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(1) |
自動停止に至った推定原因 |
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自動停止前に、発熱量の高いポリエチレン製の養生シートの溶融物がこれまでより多く熱分解室揺動パドルから燃焼室に落下し、燃焼室で一時的に大量の熱分解ガスが発生して燃焼が進行し、煙道内温度が上昇したと考えられます。また、その温度を下げるため燃焼室に二次空気を大量に送り込んだことと燃焼による圧力上昇が相乗して、炉内圧力を急上昇させ、「熱分解室圧力高高」警報が発報して、焼却炉が自動停止したものと推定されます。 |
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(2) |
覗き窓が破損し、灰が室内に漏えいした推定原因 |
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通常運転中は焼却炉全体が負圧(約-100mmH2O)に維持されていました。
焼却炉の自動停止直前から燃焼室内の圧力(冷却ダクト内の圧力は燃焼室内とほぼ同じと推定されます。)が上昇しましたが、冷却ダクト内下部には灰が溜まって空気が流れにくくなっていたため、排出ダクト内の圧力は低いままであったと推定されます。
この状況下で焼却炉が自動停止したことによって、燃焼室内の熱分解ガスが冷却ダクト側へ流入することを防止していた冷却ダクトへの空気の送風が停止し、自動停止後、排出ダクトへ向けて冷却ダクト内の空気が流れることにより、燃焼室から冷却ダクトへの流れが生じ、燃焼室の熱分解ガスは冷却ダクト内に蓄積していったものと推定されました。
その後、排風機等を起動したことによって、冷却ダクト内の熱分解ガスと空気との混合ガスは、燃焼室側に引かれ、燃焼室の熱により引火し、冷却ダクト内に蓄積した熱分解ガスを異常燃焼させ、冷却ダクト内圧が急上昇したと推定されます。 更にその燃焼による冷却ダクト内の圧力上昇によって排出ダンパを一時的に押し下げ、溜まっていた焼却灰を排出ダクト側へ噴出させるとともに、その圧力が伝播して排出ダクト覗き窓ガラスを破損させ、灰を焼却炉外へ噴出させたと推定されます。
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3.対策 (添付−8参照) |
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再発防止策として、以下の設備の改善と運転方法及び自動停止後の復旧作業手順の見直しを行います。
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(1) |
熱分解ガスの冷却ダクトへの流入防止対策
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自動停止後も燃焼室の空気が冷却ダクトへ流入することを防止するため、新たに送風機を設けて冷却ダクトへの送風系統を独立させ、自動停止後も常時送風できるようにします。また、電源も非常用の電源から供給します。
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これまでの運用では、「熱分解室圧力高高」にかかるインターロックの設定は停電信号及び「排ガスモニタ放射能高高」と共用していたため、主排風機から排気能力の低い補助排風機へ切替を行っていました。今後は、「熱分解室圧力高高」による自動停止時には、自動停止前と同様に燃焼室内の負圧を低く保持するため、同警報による排風機の切替を行わないようインターロックの設定を変更します。
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(2) |
焼却炉の運転(燃焼)を安定化させる方策
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運転中の温度と圧力裕度を確保するため、煙道内の運転温度設定を900℃から880℃に、熱分解室の運転圧力設定を−100mmH2Oから−120mmH2Oに変更します。
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熱分解ガスの過剰な発生を抑制するため、揺動パドルの自動作動に係る設定温度を下げるとともに作動間隔の見直しを行います。
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(3) |
その他の改善
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燃焼室と排出ダクトの差圧が監視できるようにするため、煙道(燃焼室)排出ダクトの差圧記録計を設置します。
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これまで自動停止後の運用は、警報のリセット及び設備に異常がないことを確認し、シャットダウン運転へ移行していました。今後は、負圧を維持したまま、速やかに焼却炉を冷温停止させ、その後内部点検を実施するよう復旧時の手順書を改めます。
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自動停止後は排出ダクト内の空気を置換することとし、新設した空気送風機から置換用の空気を供給するラインを設置するとともに、手順書に置換操作を追記します。
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排出ダクト内の圧力が所定以上の圧力にならないように圧力逃がしラインを新設します。
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焼却炉の圧力上昇の際、負圧維持のため、熱分解室圧力調節弁の開度を自動で増加させるとともに、排風機の回転数を手動で増加させていましたが、運転員の負担軽減のため、排風機回転数の制御についても自動に変更します。
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作業安全確保の観点から、排出ダクトに設けていた8箇所の覗き窓のうち、不要な7箇所のガラスを撤去して金属板で閉鎖します。残った1箇所には点検用の金属製カバーを設置します。
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添付−1:ふげん発電所構内図、廃棄物処理建屋1階平面図、廃棄物処理建屋鳥瞰図(拡大)
添付−2:焼却炉構造図
添付−3:雑固体廃棄物焼却設備系統図
添付−4:燃焼方式説明図