第10章 ATR実証炉プロジェクト

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10.2 基本設計
 動燃は、電源開発と昭和58年2月に「新型転換炉実証炉開発に関する相互協力協定」を締結して、合理化設計等の技術情報を電源開発に提供した。電源開発は、これに基づき昭和59(1984)年1月から約2年間にわたって基本設計を実施した。基本設計は、
 発電所予定地点(青森県大間町)の立地環境条件を反映させたプラント全体の設計評価を行い、安全審査に必要な資料の整備を行うとともに、機器製作に必要な設計条件を確立することを目的に、これまでと同様に原子力関係メーカー5社に発注して実施された。
基本設計は、昭和60(1985)年10月に終了したが、立地の進捗状況に合わせ、その後、一層の経済性向上を計るため、設計の合理化、最適化等の設計作業が進められた。このうち、昭和62(1987)年度から63(1988)年度に実施された設計合理化作業においては、それまで動燃が進めてきた研究開発の成果が反映され、炉心設計の合理化、原子炉本体の小型化、原子炉冷却系等の合理化・最適化、格納容器の小型化等のプ
  ラント全般にわたる大幅な合理化が行われた。
 平成7 年度までに取りまとめられた実証炉の設備設計の概要を以下に示す。また、実証炉の概念を図10.2.1、プラント主要諸元を表10.2.1に示す。
(a)設計の基本的考え方
・プラント出力:先行重水炉及び軽水炉のスケールアップ率から電気出力を約60万kWとする。出力の増大に対応するため、燃料集合体を収納する圧
力管集合体数を増大させる必要があるが、一方で原子炉本体の大型化はできるだけ抑える必要があった。このため燃料集合体の燃料棒本数を増やし
てチャンネルの平均出力を上げることで出力を担保した。
・燃料及び燃焼度:燃料はMOX燃料とし、平均燃焼度は高燃焼度化を図り約30,000MWd/tとする。
・燃料交換方式:燃料を高燃焼度化し、運転中燃料交換を廃し、停止時の燃料交換方式(商業炉と同様の運転サイクル)を採用する。
(b)主要設備の概要
・原子炉本体及び燃料:原子炉本体は、基本的には

図10.2.1 実証炉の概念


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