第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

帯

9


12)植田、他:“格子パラメータとk∞,日本原子力学会秋の分科会”、(1971)
13)Kadotani, H., Hachiya, Y.:"Analysis of Heavy Water Moderated Cluster−Type Fuel Lattices by Cluster Physics Code 'MESSIAH", Jour. of Nucl. Sci. & Tech., 19[9], (1982)
14)動力炉・核燃料開発事業団:“ATR核設計手法”、PNC TN1410 97−033,(1997)


9.4 伝熱流動試験と解析コード開発
(1)はじめに
大洗工学センターにおけるATR伝熱流動の開発研究は、ATR型炉特有の独立した圧力管内のクラスター型燃料集合体の伝熱流動に関して、基礎的な実験手法の開発から、二相流計測器の開発、サブチャンネル解析手法の開発等多岐にわたった。ここでは、「ふげん」の建設・運転に直接関係する部分を中心にその研究開発活動を述べる1),2),3)
(2) 試験装置の概要
 大型熱ループ(HTL)は、加熱電力が14MWであり、当時、世界最大の伝熱試験装置であった。「ふげん」のような水冷却型の原子炉の設計上の重要なポイントは、燃料の核分裂による発熱と冷却材による熱除去とのバランスが崩れて燃料被覆管の温度の異常な上昇を避けることであった。そこで、実物大の模擬燃料を最大8万アンペアの電流で加熱して、炉内の発熱を模擬し、あらかじめ、このアンバランスな点(温度が上昇して燃料の被覆管が焼き切れることから「バーンアウト」と呼ぶ)をよく調べ、設計においては、充分なマージンを確保した。HTLは,蒸気ドラム、予冷器、テスト部、循環ポンプ、高圧凝縮器、加圧器、加熱電源等の主要な機器で構成されており、装置の最高運転圧力として100kg/cm2、最高温度として310℃、最大電流として80kA、最大加熱電力として14MWを有し、実機と同じような流動条件下で、実物大の模擬燃料集合体を燃料の定格出力の3〜4倍まで加熱することができる。大型熱ループの系統構成を図9.4.1、建設中の大型熱ループを写真9.4.1に示す。
(3)実験技術の開発
 大型熱ループを円滑に遂行するため、主に次の実験技術を確立しなければならなかった。
バーンアウト検出器
電気絶縁技術
炉外実験の模擬性
)バーンアウト検出器等の開発
バーンアウト検出器の開発課題は、次の3つである。
(イ)バーンアウト現象の正確な検出
(ロ)加熱電源等からのノイズカット
(ハ)バーンアウト発生位置の検出
 この種の実験で最も重要なことは、模擬燃料被覆管の異常な温度上昇、いわゆるバーンアウト現象をどのように正確に検出するかである。試験の初期のバーンアウト検出は、ブリッジ方式を採用した。バーンアウトによる局部的な温度上昇に伴って、模擬燃料被覆管の電気抵抗が、わずかに増大するため、これを標準抵抗とのブリッジ回路により変化分を増幅して取り出す方式である。しかし、最大8万アンペアというシリコン整流器により直流化した加熱電



図9.4.1 大型熱ループ系統図



写真9.4.1 建設中の大型熱ループ(1970年2月)



帯
457

前頁

目次

次頁