第9章 大洗工学センターにおけるATR研究開発

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コードの導入を決めた。これらの核設計コードの精度をできるだけ早く試験結果と対比検討し、必要がある場合は、新しい設計コードを作成することになった。このためには、まず次の方策がとられた。
英国の核設計コードの導入にあたり、英国での臨界実験データも導入して検証する。
我が国の既存の臨界実験装置(住友原子力工 業の軽水臨界実験装置を重水−軽水の2領域炉心に改造)を、米国サバンナリバーの臨界実験装置を利用した試験結果により検証する。
 この結果、設計コードの精度の確認と改良(補正値の算出)が行われて概念設計に適用された。また、「ふげん」用の単領域の臨界実験装置やこれによる実験データとの比較検討に基づく新しい、または改良された解析コードの作成の必要性も確認された。
 DCAで実施する重水臨界実験及び解析コードの開発における重要な課題は、ATRの安全性と運転制御性を決定的にするATR特有のボイド反応度とボイド係数、特に、これらに関するプルトニウム燃料使用による影響、についての現象解明とこれらを定量的に記述できる手段の確保であった。
 以下に、DCAで実施した研究開発の概要を述べる。
(2)臨界実験装置の概要
 大洗工学センターに、「ふげん」の核特性や炉心性能を正確に把握し、核設計、運転制御、炉心管理に必要なデータを得る目的で、大型単領域の重水臨界実験装置(Deuterium Critical Assembly:DCA)




写真9.3.1 DCA炉心上部(燃料装荷)

の建設を開始したのは、昭和43(1968)年末であり、昭和44(1969)年12月に初臨界に達した。装置本体及び附属設備の製作は、富士電機(株)が、建家の建設は、清水建設(株)が担当した。
 重水臨界実験装置としてのDCAは、直径が約3m、高さ約3.5mの重水タンクの内に、交換可能な圧力管及び格子板を持ち、種々の炉心構成を可能とする実験装置である。この原子炉の最大出力は1kWで、ウラン燃料及びプルトニウム燃料(有効長約2m)を装荷することができる(写真9.3.1)。DCAの炉心タンクの構造を図9.3.1に示す。また、DCAの主要目を表9.3.1、プルトニウム燃料炉心構成例を図9.3.2に示す。附属設備としてプルトニウム燃料棒の解体切断、照射箔の取扱いをするためのグローブボックス施設を設けている。
(3)重水臨界実験
 「ふげん」の核特性は、減速材である重水と、冷却材である軽水の二重減速効果、圧力管型であることによる非均質性、中性子エネルギー依存度の強いプルトニウムの断面積等に特徴付けられている。このため、格子内の中性子の挙動は複雑であり、これを計算コードで忠実に記述することは困難である。故に、得られた実験データは、直接的には設計コー



図9.3.1 DCA炉心本体構造



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