第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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に対する感度、γ線による飽和電流特性を測定し、設計値と比較して、非常によい一致を示すことを確認した。また、試作検出器の中性子感度を測定するため、写真8.7.1に示す東芝の教育訓練用原子炉1)を利用して、特性試験を実施した。その結果、中性子感度、電圧特性等の全般に良好な結果を得た。

8.7.2 JMTRにおける照射試験
 
設計製作した「ふげん」用中性子検出器の照射試験は、昭和47(1972)年から、写真8.7.2及び8.7.3に示すJMTR(Japan Materials Testing Reactor)において開始された。JMTRにおける照射条件は、原子炉と独立した通水冷却系があるため、検出器周囲温度は60℃に保たれ、最高中性子束は1.5×1014(nv)、圧力は約1気圧とすることができ、ほぼ、「ふげん」の炉心を模擬することが可能なものであった。
 「ふげん」の中性子検出器は、高く実効的な中性子束のため、核分裂電離箱の中性子変換物質(235U)



写真8.7.2 JMTRの炉心構成



写真8.7.3 JMTRの測定装置


図8.7.2 局部出力検出器概要図

が早く消耗し、検出器の感度が劣化しやすい。そこで、図8.7.2に示すように核分裂電離箱内面に塗布するウランに234Uを混合して、234Uが中性子を吸収して235Uへ核転換する性質を利用して、核分裂する235Uの消耗分を補充し、中性子検出器の長寿命化を図る設計とした。設計段階においては、235Uと234Uの混合比を1対0から1対12まで検討した。混合比の増加に伴い、検出器内陰極面に塗布するウランの量が増加するとウランの付着強度が低下し、安定性に影響を与えるため、実際の試作においては、1対3と1対6とした。
 この試験は、JMTRの炉心に16体の検出器をキャプセルの中に収納して設置し、JMTRの4サイクル分の中性子積算照射量約1×1021(nvt)まで照射した。しかし、混合比1対6の場合に、中性子積算照射量約7×1020(nvt)でノイズが発生し、電圧−電流特性における放電電圧の低下という異常現象が発生した。このため、照射上の問題が少なく、実用上、十分な寿命を有する混合比が1対3のものを、初期の「ふげん」で採用することとした。235Uと234Uが1対3のJMTRにおける、混合比の場合の照射試験結果は、極めて良好であり、照射期間中の検出器の原子炉出力と出力電流の直線性変化は、2%以内、寿命決定の要因である相対感度劣化は、1×1021(nvt)の照射量に対して約30%とほぼ理論通りの特性を示した。この結果は、同様の照射を受けた時の通常型中性子検出器(235Uのみ塗布)の相対感度劣化約50%と比較すると明らかに長寿命化の効果を示した2)



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