第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.5.5 FP挙動解析結果

 ここでは、過渡事象として外部電源喪失を起因事象とし、運転員が、圧力調整弁を手動操作し、減圧に成功するが、補機冷却系の故障により低圧注水系等の注水に失敗し、炉心が損傷するシーケンスの解析を実施した。この場合、重水冷却系、遮蔽冷却系及び蒸気放出プール冷却系による除熱は、困難となるが、格納容器スプレイ系により、復水貯蔵タンク内の冷却材は、格納容器内に注水される。
 解析の結果、炉心より流出した冷却水と格納容器スプレイによる冷却水が地下2階床上に約1mの水深となるため、落下した燃料デブリは、冠水し、まわりの冷却水を蒸発させる。この冷却水の蒸発により格納容器内圧力は、徐々に上昇し、事故から約25日後に、格納容器は、過圧破損に至ると考えられる。
ソースターム評価結果
 燃料溶融に伴い燃料から放出されたCsI(よう化セシウム)は、エアロゾルとなって上昇管及び蒸気ドラムに流入し、上昇管内及び蒸気ドラム内構造物に付着するため、図8.5.5に示すようにCsIの約3/4は再循環系内に留まる。
 また、CsIの約1/4は、格納容器内に流出するが、格納容器内のCsIの大部分は、蒸気放出プール内の冷却材にスクラビングされているため、図8.5.5に示すように格納容器が破損したのちも、環境中へのCsIの放出はほとんどない。
分岐確率の設定
)格納容器システムイベントツリーの分岐確率の設定
 フォールトツリー解析により、格納容器破損防護緩和系として、格納容器スプレイ系及び蒸気放出プール冷却系の、分岐確率を算出した。
 なお、各シーケンスにおける作動頻度の設定時には、補機冷却系の復旧を考慮した。この場合の修復余裕時間は、格納容器応答解析結果を踏まえ過渡事象では48時間とした。
)格納容器挙動イベントツリーの分岐確率の設定
 主な分岐確率の設定根拠を以下に示す。
(イ)隔離失敗
 NUREG/CR-4220等の米国の実績を踏まえて設定した。
(ロ)直接過熱
 炉心は、カランドリアタンク及び遮蔽冷却系で囲まれているため、燃料デブリが、直接、格納容器内に噴出する可能性は極めて小さいと考えられることを踏まえて設定した。
(ハ)水素燃焼
 挙動評価結果より水素燃焼時において、格納容器が、破損する可能性は極めて小さいことを踏まえ設定した。
(ニ)水蒸気爆発
 国内外における水蒸気爆発の知見及び地下2階床上の冷却材の状態から工学的に判断して設


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