第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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 カランドリアタンク内における燃料デブリの保持性については、燃料デブリ、カランドリアタンクと遮蔽冷却系間における伝熱計算の結果を踏まえ、不確かさは大きいが、遮蔽冷却系の外壁より燃料デブリの崩壊熱を放熱できる可能性があることをイベントツリーに反映した。
(ハ)プラント損傷状態の設定
 プラント損傷状態を設定した結果を表8.5.4に示す。本結果は、圧力管・カランドリア管挙動イベントツリー及びカランドリアタンク挙動イベントツリーで得られた結果に基づいたものであり、格納容器破損頻度を算出する上で影響しないとされる発生頻度のシーケンスまで考慮している。
 表8.5.4に示すように、プラント損傷状態は、圧力管・カランドリア管挙動イベントツリー及びカランドリアタンク挙動イベントツリーにおける検討結果から、損傷燃料が、圧力管内で保持されるシーケンス(PDC1、PDC12)、カランドリアタンク内で保持されるシーケンス(PDC4、PDC7)等に分類されている。また、発生頻度の高いシーケンス(TQUV、TW)では、燃料デブリの移行経路によっても分類がなされている(PDC5、PDC6及びPDC8、PDC9)。
格納容器イベントツリーの作成
 格納容器イベントツリーは、格納容器緩和系であるスプレイ系の格納容器システムイベントツリー及び水蒸気爆発等を取り扱う格納容器挙動イベントツリーで構成される。
格納容器システムイベントツリー
 格納容器システムイベントツリーとして、格納容器スプレイ系及び蒸気放出プール冷却系を考慮する。格納容器スプレイ系と蒸気放出プール冷却系の両系統が健全な場合、両系統の連合運転により長期的にも格納容器内の冷却が可能である。
 一方、格納容器スプレイ系のみが作動した場合、格納容器内に流出した燃料デブリの長期的な冷却は困難であるが、燃料デブリは、冠水するため、格納容器内は、蒸気雰囲気になると考えられる。
格納容器挙動イベントツリー
 格納容器挙動イベントツリーの最初のヘディングでは、後期過圧破損が生じない、大きな開口部が発生する確率を、隔離失敗として考慮した。次に、溶融燃料が、格納容器内に流出した時点で、水素燃焼、水蒸気爆発及び直接過熱の発生を考慮した。
 さらに、燃料デブリが、地下2階床上に堆積し、地下2階床上に冷却水がない場合、燃料デブリからの放熱による過温破損及びデブリーコンクリート反応で発生する非凝縮性ガスによる過圧破損を考慮した。
 また、地下2階床上に冷却水がある場合は、冷却水の蒸発による過圧破損を考慮した。
事故進展解析手法
 格納容器内の熱水力(挙動)及び放射性物質の移行挙動は、EPRI軽水炉用シビアアクシデント評価コード(MAAP)を「ふげん」用に改良したMAAP-FUGENコードを主に使用して解析した。本解析コードにおける主な解析モデル及び解析条件を次に示す。
 炉心は、燃料、被覆管、圧力管、カランドリア管及び制御棒で構成されており、それぞれの構造物間の輻射及び構造物と冷却材または重水との間の熱伝達を考慮した。
 カランドリアタンク内の燃料デブリは、燃料溜まり、クラスト及び金属層からなり、燃料デブリ内及び構造物または重水との熱伝達が考慮できるものとした。
 また、燃料デブリ表面からの輻射を考慮するとともに、遮蔽冷却水とカランドリアタンク壁間の熱移動を考慮した。
分岐確率の設定手法
 挙動イベントツリーにおいて、工学的判断に基づく分岐確率の設定にあたっては、次の4つに分類して設定を行った。
〔分類:Unknown〕
 発生の可能性が五分五分であるかまたは発生の有無が特定できないものは、0.5とする。
〔分類:Unlikely〕
 工学的に事象発生確率分布の上限値が、クライテリア近傍になると判断されるものは、10−2に設定する。ただし、事象発生確率分布の上限値に不確実さがある場合は、0.1とする。
〔分類:Extremely Unlikely〕
 工学的に事象発生確率分布の上限値が、クライテリアに対して十分に余裕があると判断されるものは、10−4とする。
〔分類:Impossible〕
 発生の可能性が無視できるものと判断されるものは、ε(極小値)とする。
 また、格納容器スプレイ系のシステムイベントツリーは、フォールトツリー解析手法を用い、レベル



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